北海道地震・ブラックアウト・原発の検討-巨視的視点で考える電力のベストミックス | 反新自由主義・反グローバリズム コテヤン基地

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北海道のブラック・アウトおよび原発の検討

 北海道地震が起こった際に、北海道全域がブラック・アウトしたそうです。この議論で必ず出てくるのが「泊発電所(原発)が動いていれば回避できたのではないか?」という議論です。結論から申し上げますと半々だと思われます。
 
 といいますのも北海道の電力事情は歴史的に石炭火力発電所が多く、これは出力の調整が得意ではないのですが、今回のブラックアウトは深夜という電力需要の少ない時期に、大型の出力を誇る発電所が脱落したことによって、そもそも出力調整が他の地域より難がある北海道の電力網に出力調整余地がなくなり、そうして次々に変電所がシャットダウンしたという事情によるからです。
※原子力(出力ほぼ一定)+石炭火力(出力調整得意ではない)では夜間の需要が少ない時間帯の、突然の一部発電所の脱落に調整が間に合わなかった、という指摘です。おそらく信憑性は高いと思われます。根拠後述(※1)
※この議論で石炭火力+原子力でベースにして、他で調整しておけばよかったのでは?という議論もありえます。参考資料では「需要の少ない時間帯に過半が脱落した(後述資料1)のP4)」だそうですので、その大半を泊原発が補っていた(脱落した石炭火力が出力を抑えめ)のなら、ブラック・アウトは起きなかったかもしれない、という議論は成り立つ余地はあります。参考資料では「成り立たない」となっておりますが・・・。成り立ったかもしれないわけで、結論は「半々」とさせていただいております。
 
 しかし北海道電力の調整能力は他の地域より過少であった、という事実は間違いないでしょう。
 
 上記の事実は、原子力発電所が必要ないという結論を短絡的に指摘するものではありません。現在北海道電力は石狩湾新港発電所を建設しておりまして、これは調整に優れるガス火力発電所です。
 北海道電力は自分たちが調整能力が他地域より少ないことは認識しておりましたし、政府も当然ながら認識していたはずです。でないと上記のガス火力発電所の建設、という行動は取りません。つまりバッファを増やそうとしたわけです。
 ではなぜそれを認識しながら、投資が遅れているのか?という指摘は自然でしょう。
 
 原子力発電所というベース電源を失った電力会社は、当然ながら利益を逼迫されます。利益が逼迫されるということはすなわち、投資に対しての積極性が低下することを指します。そして政府も20年間に及ぶ緊縮財政を続けているのですから、弱点の克服が遅れたのは必然であったといえます。
 北海道のブラック・アウトが冬にもしも起こったのなら、それは大変な惨状を招いたことでしょう。多くの人の命が危険にさらされたはずです。であれば・・・国家の義務が国民の生命を守ることであるのならば、積極的に投資なり融資をしてさっさと整備してしまえばよかったのです。
 さらに原発の停止が投資の積極性をそいだ可能性も否定できません。電力会社は民間企業でありますからね。
 このように考えると、必ずしも原発を停止させていたほうが安全だった、とは断定できないのです。また電力網回復後の電力需給において原発が稼働をしていれば、余裕をもたせた可能性は否定できませんし、今後その可能性は十二分にありえるでしょう。
 
 今回の北海道地震で泊発電所は外部電源を喪失し、ほどなく非常用電源を起動することで事なきを得ましたけれども、ということは稼働させていたとしても大きな事故は起きなかった可能性が高い。
 ブラック・アウトの原因は北海道電力網にとっての弱点である調整能力の克服への投資ができていなかったことであり、またその投資ができなかった環境の1つの要因、つまり利益の逼迫という状況を作ったのは原発の停止ということも指摘されるべきでしょう。
 もちろんながら政府の財政出動と、北海道への安全保障が欠けていたというのは言うまでもありません。
 
 ちなみネットなどでは「震度2で泊原発が外部電源(北海道の電力)喪失!!」とかいうバカバカしい主張もあるようですが、北海道全域がブラック・アウト(外部電源喪失)してるのですから「当たり前」なんですね。多分上記のような主張をする方は、本格的に脳みそが足りてない可能性があります。
 外部電源喪失は北海道の電力網、電力の調整能力が他より少ないことが原因であり、泊発電所には一切の責任はありませんから。
 私は専門家ではありませんから、原発が稼働しながら安全対策を進められるのかどうか?は分かりませんが、可能なのでしたら稼働させながら進めるほうがベターであると思います。当然ながら国家が主導および支出して、という注意書き付きですが。
 
※1)上記の議論に関しては記事下部の牧田寛工学博士の記事、参考資料1)を参照しております。

エネルギー安全保障は増加してるか?低下してるか?

 「原発は再稼働させるな!」という議論の中には、エネルギー安全保障という議論は殆ど見られません。経産省より日本のエネルギー安全保障がどのようになっているか?という画像がありますので、見てみましょう。
 2000年代よりも2010年代のほうが低下している、というのが見て取れます。端的にその原因をいえば、原子力発電の停止による一次エネルギー自給率の低下、およびエネルギー源多様化の低下が挙げられます。
 またおそらく今回の北海道地震を含めるとすると、電力の安定供給という面でも低下していることでしょう。
 エネルギー安全保障が低下しているのに、経済繁栄などあるはずがない。当たり前でしょう。
 工業、農業、生活、サービスなどありとあらゆるものがエネルギー安全保障の上にたっているのです。土台が揺らいでいるないし沈下しているのに、上部構造が繁栄するはずがありません。
 このことを指摘しますとこのような反論があるでしょう。「エネルギー源は再エネで多様化しているじゃないか!」と。常識的にパーセンテージで考えてみてくださいと、申し上げます。
 
 すべての産業と生活の土台を支えるエネルギー安全保障の議論は、かなり多角的に行われるべきであり、エネルギーのベストミックスは我々の生活に直結する大事なものとして国家事業として推進するべきなのです。
 ではエネルギーのベストミックスを論じる場合に検討しなければならない点はなにか?今回は電力に議論を限ります。
 
 電力にはベース電源、調整電源があるのはご存知のかたも多いと思います。水力発電以外の自然エネルギーは基本的に出力が不安定であり、この2つの上部構造としてしか成立しませんので議論として省きます。自然エネルギーの議論というのは、現在はその程度のものなのです。蓄電池のブレイクスルーでもない限りはずっとこの程度でしょう。
 
 まずベース電源に必要なのは安定的に同じ出力を出せるかどうか?です。これには主に石炭火力発電や原子力発電が該当します。次に調整電源としては水力やガス火力発電が該当します。揚水発電というのはまさに調整電源そのものです。
 石油やガス、石炭については輸入先の多様化という方法でエネルギー安全保障をするしかありません。我が国では現在のところ、取れないないし採算化(利益化ではない)できないのですから。メタンハイドレードはよせい(笑)
 そして重要なのは一次エネルギー自給率となりますけれども、これに該当するのは原子力と水力になります。原子力は準国産エネルギーとして定義されておりまして、なぜか?といえば輸入すれば数年間は使用できるからということだそうです。文句がある人は政府の定義に文句を言ってください。
 現在の状況は要するに・・・準国産エネルギーを停止して、国外にその殆どを頼っているという状況です。安全保障として考えた場合に、いささか心もとない状況であることは理解可能でしょう。
 ちなみにエネルギー安全保障は7つの項目で評価されます。詳しくは後述する資料の経産省からみてください。
 
 一方で福島原発の事故をもって「原発は危険だ!」という議論があります。しかしこの議論については女川原発は事故を起こしておらず、つまりは政府の投資や安全保障の態度に問題があったということははっきりしております。国家が大体的に投資して安全保障をしていれば、あの事故は起こらなかった可能性は高い。
 今回の北海道地震のブラック・アウトにしても同様でしょう。
 確かに原発はリスクをゼロにはできませんが、投資によって限りなく安全にすることは可能でありましょう。問題は政府がプライマリーバランスとやらで、国民の安全を無視して投資しないことになるわけです。
 
 私はむしろすべての電力会社は国営化して、国家的事業として全国の電力網の強靭化に取り組むべきであろうと思います。なにせ電力には経済、国民の生活、命がかかっているわけなのですから(!!!)
 同様にメタンハイドレートも国家的事業として展開しても良いでしょう、と思います。エネルギー自給率はエネルギー安全保障に直結します。
 
 本稿の議論ははっきりいってエネルギー安全保障の観点で言えば、まだ絞った議論といえます。しかしこの程度の議論すら提示できずに『原発は再稼働しなくてよい!』などと主張するのであれば、それは単なるイデオロギーでありドグマであり狂信的であるとすら表現しても過多ではないでしょう。
 国家論、経済論くらいは抑えてからエネルギー論を語ってほしいものです。
 ちなみに私は専門家ではありませんから、原子力のことについては一般的なことしか申し上げられません。おそらくここらへんは、有閑爺いさんがお詳しいのだと思います。

P.S

 エネルギー安全保障とかの「ややこしい議論」になると、途端に安易かつ思考能力のない意見や主張が色々なところに散見されます。原子力が専門の方たちは、おそらくバカバカしい主張がさも正論のごとく吐き出されることに頭を抱えていることでしょう。
 「外部電源の喪失はけしからん!(北海道全域がブラックアウトで、原発の責任じゃない)」とか、私でも頭を抱えるレベルですもん。
 多分、去年4月頃に北朝鮮危機のときの私の気分を、もっと複雑にしたものを抱えてらっしゃると思います。専門家の方々は。あのときはひどかったですもの。「アメリカ様が北朝鮮を制裁してくださる!(その気配は一切ないし、国家理性的にもありえない)」とか(笑)
 
 結局の所はおそらくですが・・・「自分独自の意見を言う!」とか「三橋さんがこう言っているから、反発する」という安易なところが安易な言動と思考能力ゼロの原因なのでしょう。ちなみにこういうバカは、平和主義は貧困への道(佐藤健志さん著)によると、おそらく治らないと推定されます(残念だね~本当)
 なぜなら彼らはすでに「敵がいてくれないと死ぬ病©佐藤健志さん」にかかっているのですから。誰かを敵にしておかないと、自分のアイディンティティが保てないわけです。
 理性的な判断も、常識的な結論も、真実に近いものすら関係ない(!!)敵がいてくれないと死ぬ病なのですから(!!)
 しかも自己強化メカニズムと経路依存性によって、これはさらにひどくなっていくこと請け合いです。
 
 現在は「この程度」で済んでおりますけれども、将来的には日本においてこの状況はさらにひどくなっていくことでしょう。つ・ま・り、「自己主張」「個性」「愛国心」の名目のもとで、(安易かつ思考能力ゼロの)デマと欺瞞が満ち溢れる未来でございます。
 「平貧」の表紙のようではないですかっ(!!)

 

 

 さて、どうする?なのです。

 
※参考資料

1)北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」なのか(ハーバードビジネスオンライン)

※一次資料、読んでます(笑)

 

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