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神の見えざる手は見えないのみならず存在しない
先日に動学的確率的一般均衡の概念を超簡単に端折って説明を試みました。一般均衡が市場のみを対象とするにの対して、動学的確率的一般均衡とは政策も市場に影響を与えるという意味では、多少は進歩した概念であります。という話よりもですね・・・頂きましたコメントが「じゃあ何らかの均衡の結果がデフレなんじゃないの?」というちょっととんでもだったので、それに軽く答えた上で均衡という概念を説明しようと思います。
きんこう
【均衡】
幾つかの物・事の間のつり合い。
「―を保つ」
この場合の「均衡と保つ」という状態の「均衡」とは静的な概念でありまして、たとえばデフレの場合は「デフレが進行する」という動的な意味合いが含まれます。実際に以下のグラフを見れば一目瞭然でしょう。当ブログでは何回もご紹介差し上げておりますね。
1997年の所得をピークとして、デフレが始まったのが1998年でありまして所得は下がる一方。ちょっと線を引いてみましょうか。
長期トレンドとしては減少する一方でございますね。企業でいえば「売上が下がり続けている」という話に等しいのですけれども、どこの企業が売上が下がり続けていることを「売上が下がり続けるという状態で均衡している」などと表現しましょうか?普通は「売り上げの減少が進行している」でしょう。
たとえば戦争で戦線が全く動きが取れない状態、これを「現在は均衡(もしくは膠着)状態である」「しかしこの均衡はいつか破られるだろう」「戦力は均衡状態だ」などと表現します。つまり均衡とは静的概念であり「デフレ」というスパイラル的、動的概念に使用することそのものが「言葉遊びか詭弁」に当たるのですよ。
それは「何らかの均衡の結果がデフレでは?」といっても、その「何か?」が何なのか。これをはっきりしないことには、やはり言葉遊びといえるでしょう。
ちなみに「経済学では前提条件があって当たり前、では経世済民派には前提条件がないの?」という質問もありましたが、すでに答えは書いてあります。経済学が静的な世界という前提条件であるのに対して、社会有機体論に代表されるように保守や経世済民という概念は世界を動的と捉えます。動的と捉え、不確実性が存在すると認めるからこそ「漸進的に物事をすすめる」という話になってくるわけです。
さて、均衡とは釣り合っている状態、静的な状態になるという概念です。先日の記事はこの静的な概念にそもそも論として「動学的、確率的」という概念を付随させることそのものがおかしいでしょ?という話でありました。また「動学的」というわりには「確率的に計算できるリスク」のみを対象としていて、確率的に計算が不可能である不確実性は対象外にしているので問題があるとも書きました。
そしてその根底にあるのは「合理的経済人」「スーパースマートな個人」という極めてフィクション性の高い仮定であるというわけです。
ルーカスが勝利宣言を行い、「もはや恐慌は起こらない」としたわずか5年後にリーマン・ショックが起こったこと、それがすべてを物語っているでしょう。
現実社会を見つめる時に様々な経済的問題は、均衡、神の見えざる手というのは経済においては存在しない、ないし存在していたとしても唯一性(均衡が一点である)も安定性(均衡に必ず近づく)という保証もないのであれば存在しないも同然であるというわけです。そしてこれはゾンネンシャインらの研究によってじつは唯一性も安定性も否定されていたりします。
つまり「神の見えざる手は見えないのみならず、存在しない」というわけです。
動的視点で経済をとらえるとどうなるか?
動的な視点という意味でいえばじつは経済学の本よりもクラウゼヴィッツの戦争論が参考になります。クラウゼヴィッツの戦争論での指揮官の判断や決断は「不確実性が蔓延する状況」かつ「不完全な情報」に基いて行わなければならない、その中で最善と思える判断をくださなければならないとされております。
経済学が「計算可能なリスクのみを対象」として、かつ「完全情報を個人が持っている」という仮定とは全く真逆というわけです。
私が見るところによると日本もアメリカ型の経済構造になりつつある、というのが現状かと思います。つまり経済成長率が堅調であってもボトム9割は所得が増えないという構造に転換しつつあるのではなかろうか?と思います。
とするのならば財政出動は必要条件ではあるものの、十分条件ではないというのが私の考えです。もっともその必要条件すら満たされぬ現在の状況では、必要条件が必要だ!と主張することはまことに正当なことでしょう。
動的な視点で捉えるのならば現在の日本はデフレ再突入ないしその手前であり、人口構造の変化から人手不足が生じているものの実質所得の上昇にまでは及ばないという、なかなか複雑な状況です。
その原因は何と診断するのか?「デフレマインド」「需要不足」「金融規制の緩和による金融と実態の主従関係の変化」「格差による富の再分配機能の低下」等々。色々とあるわけですけれども「どれか1つ」ではなく「どれも総じて対策を行う必要がある」のではないか?と思うのです。
そして市場というと商品市場と金融市場の2つですから、この2つに分類してそれぞれ対策をしていくのが望ましいだろうと思います。需要不足やデフレマインドというのは商品市場での需要の不足であるのですから、財政出動である程度は緩和されるでしょう。
しかし金融が主、実態が従という構造自体をなんとかしないとその効果は半減するかもしれない、という危惧があります。これはピケティのr(資本収益率)>g(経済成長率)の式からもわかるとおりで、この構造自体を転換させるためには大きな政府とある種の社会主義的な政府運営が必要になってくるだろうというのが私の診断です。
他の表現にするのだとしたら「公益資本主義」でも結構です。政府が国有化などに走るのが過激だと思うのであれば、企業が道徳的な行動を取るように規制を強化すればよいというわけです。
たとえば長期投資や長期展望を持てるようにするために四半期決算の廃止もありでしょうし、ともかく株主だけに振り回されるという構図を変えないといけないでしょう。
またイノベーションという話でしたら、イノベーションとはそもそもポッと出てくるものではありませんから、企業が長期投資を可能な「不確実性の少ない環境」を作るしかありません。これは国家という最も大きな経済主体が自国経済を保護する、競争を緩和するなどの話になります。もしくは国家プロジェクトとして研究開発に、国家が予算をつけてもよいでしょう。
ちなみに21世紀に爆発的に広がったインターネットそのものが、当初はアメリカの国防省が予算を出していたというのは有名な話。イノベーションは軍事や国家を背景として生まれるものも多いのですから、やたらと「民営化!そしたらイノベーション!」というのは的外れ極まりないと思います。
結局のところ動的に経済を俯瞰してみると、政治というものの役割が非常におおきいというのが理解可能です。さらには国土条件、もしくは慣習や習俗、文化、伝統といった環境論決定論的な要素が複雑に絡み合うわけです。とするのならば「A国の経済政策」と「B国の経済政策」が異なるのは当然であり、それはすなわちグローバリズムのような単一の市場ルールで世界市場を統一するというのがいかに危険であるか?という話にもなります。
逆説的にはグローバリズムの理想というのは、この危険性に気づいた国民のナショナリズム(国民意識)によって打ち砕かれるか、もしくは衝突と混迷をもたらすかの何れかでしょう。
神の見えざる手は見えないどころか存在すらしていないわけですが、ナショナリズム、すなわち国民意識というのはいたるところに観察される事実でありますから、どちらをどのような優先順位で考えるか?は自明の話であり、その点からも現在の主流派、古典派経済学は無用の長物と私は思います。
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本日の男の料理 豆腐とわかめのすまし汁
お麩と乾燥ゆずと豆腐とわかめのおすましです。乾燥ゆずを入れると一気に高級感が増します。もちろんゆずでもOK.
材料
- 豆腐
- わかめ
- お麩
- 乾燥ゆず(ゆず皮でもOK)
- 鰹節
- 塩
- 薄口醤油
- 日本酒
調理手順
- 豆腐は角切り、わかめは塩蔵わかめを使うのであれば水で戻します。
- 小鍋に水を張って火にかけて沸騰させ、火を止めたらかつを節を1Lにつきグワシッっと一掴みいれ5分ほど放置。キッチンペーパーとザルで濾します。
- 2を火にかけて日本酒を入れ、塩、薄口醤油で味を整えます。あとは具材の豆腐、お麩、乾燥ゆずをいれてひと煮立ちさせ、火を止めてからわかめを入れたら出来上がり。
仕上げに三つ葉、ねぎ、カイワレなどで色味をつけると良いでしょう。