鼠を飼っている | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。

 「その籠の中には何が入っているの?」

 「鼠を飼っている。今は五匹しか籠の中に入っていないけど、多い時は十匹くらいがここで生きているよ。生き物を飼育するという行為は楽しいよ。僕は不死者になる手術を受けてから食事をしなくなったけど、鼠達の餌を手に入れる為に今も活動する必要があるわけだからね。つまり、この籠の中の鼠達の命に対する責任感が僕の活力の源になっているわけだよ」

 「君は鼠を繁殖させているの?でも、鼠なんて不潔そうで厭だよ」

 「鼠達は色々な病原菌を持っているかもしれないけど、僕や君には感染しないのだから無害だよ。実際、僕は不死者になる手術を受けてから一度も病気に罹っていないし、君だってずっと健康なのだろう?だから、不潔かどうかという基準は鼠に対する好悪を決定付ける要因にはならないよ」

 「そうだね。言われてみれば確かに僕も不死者になる手術を受ける前よりも鼠に対する嫌悪感は減っているかもしれない。でも、苦手意識の克服を素直に歓迎するべきのかな?嫌悪の対象が一つ減ったせいで世界がその分だけ退屈になったかもしれない。それは人生に飽きて不死を放棄した人々が辿った道程なのかもしれない」


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