森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。
「君は随分と脚が多いね。しかも、生えている場所がおかしいよ。どうして背中とか脇腹から脚が何本も生えているの?」
「かつて僕は不死者になる手術を受けた後、もはや生活の心配をしなくて済むと思ったら何かをする意欲が湧かなくなってね。それで、他の人々と同じように人生に飽きたから不死を放棄しようかと迷ったのだけど、その前に世界中を歩いて回ろうと思い付いてね。でも、実際に歩き始めてみると世界は意外に広くて旅がなかなか終わらない。だから、寝そべった状態でも歩けるように胴体に脚を生やす手術を受けたわけだよ」
「つまり、君はその時からずっと旅を続けているのか?」
「そうだよ。ひょっとしたら、既にこの世界には僕が行っていない場所なんてどこにもないかもしれない。でも、同じ場所でも地上の景色は刻々と変化していっているから世界中を踏破したという実感はまだまだ得られていない。だから、この旅はこれからも続いていくと思うよ」
関連作品
口が多い不死者
昔の百科事典
将棋を指そう
鼠を飼っている
目次(超短編小説)