昔の百科事典 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。

 「それは何だ?」

 「これは百科事典だよ。かなり昔から持ち歩いているのだけど、僕達の身体と同じで自己修復機能があるから少しも損傷してない。ただし、ここに掲載されている内容はもう随分と長い間、更新されていないよ」

 「百科事典の内容を更新する人間がいなくなったのだね」

 「そうだね。これを読んでいると既に自分が人類の歴史の外側にいると実感するよ。歴史という大きな物語は既に終了している。もはや百科事典に新しい情報が追加されないのだからね。ここに掲載されている情報はすべてがまるで異世界の出来事のようだよ」

 「君が新しい情報を追加したらいい」

 「そうだね。僕は不死者になる手術を受けた人々の大半が人生に満足して不死を放棄したという歴史の結末をこの百科事典に書き加えたよ。でも、それもかなり昔の行為だ。それからは何も追加していないよ」


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