森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。
「それにしても自分以外の人間には二度と出会えないかもしれない思っていたよ」
「ああ。この地上は本当に寂しい場所になったよね。当時、大勢の人々が不死者になったはずだけど、随分と少なくなった。皆、あまり長々と生きたかったわけでもなかったみたいだね」
「そのようだね。でも、せっかく自分以外の人間と出会えたのだから今はしんみりとした話はしたくない気分だ」
「とはいえ、僕は長い間、森の中を一人で彷徨っていただけだから楽しい話題をほとんど思い付かないけれどね。そういえば、僕はこの森の動植物に色々と勝手に名称を与えてみたのだけど、それを聞きたい?」
「いいや。せっかく自分以外の人間と出会ったのだから人間相手にしかできない行為をしたい。僕は君と喧嘩をしたいし、騙し合いたい。でも、君と仲違いはしたくない。だから、将棋で遊びたい。駒や盤があれば良かったけど、ないから作る方法を考えないといけないね」
「将棋か。なるほどね。懐かしいし、やってみたいね」
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