「今回はベセルが横領した報償金がどないなったかいう話やね」
「うん。1909年(隆煕3年)5月1日にベセルが死去したのはベセルの死(1)で見たよね」
「横領を自白したのが1908年9月だから、それから1年も経ってないんだね」
「実は、国債報償志願金総合所は、ベセル死去後もずっとベセル横領金の所在追求と弁済交渉をしようとしていたんだよ」
「え?生きとるうちに弁済かなんかのかたちでけじめつけさせられへんかったん?」
「うん。そうみたいなんだよ。まず1909年(隆煕3年)8月22日付の大韓民報をみるよ」●国債報償金所起訴 国債報償金幾万円을英人裴説氏가担任
얏다가未得勘簿
고身故
얏
데其夫人이家産을競売
고帰国
다
으로国債報償金摠合所에셔右事由
英国摠領事에게起訴
야右金을裴夫人에게徴出
라
얏다더라
「帳簿さえ確認できないままベセルが死んで、夫人が家産を競売にかけて処分してイギリスに帰国しようとしたんだね」
「ほんで総合所は英国総領事に訴えて、横領金を弁済させようとしたんやな」
「どうやら英国総領事に訴える前に夫人に面会して事情を訊こうとしたらしいんだけどね。8月24日付大韓民報を見るよ」
●総合所起訴 既報와如히国債報償金総合所에셔裴説氏가犯用
国債報償金을其夫人에게推尋次로起訴![]()
데為先該夫人과面議
을請
즉謝絶不見![]()
故로再昨日英国総領事館에起訴
고 日本理事에게提出
야英領事와交渉케
次로漢城府에申請
얏다더라
「ベセル夫人が面会を拒否したんかいな」
「22日に英国総領事館への訴えを日本理事に提出して、さらに英総領事との交渉を漢城府に申請したんだね」
「で、その結果と展開が8月26日付大韓民報にあるの」
●国債報償金問題 国債報償金은裴説氏死去後에一問題가됨은已為報道
바어니와今番에国債報償金総合所長尹雄烈氏와同任員金允五、金麟諸氏가裴説氏未亡人을向
야該金額末을質問
즉未亡人은云
되亡夫在日에五千円仮量을任置
얏다
은聞
얏스나現今에
該金의所在
不知라
고其他
総히糢糊
지라右諸氏
故裴説氏가아스다하우스氏와高仏安氏의経営![]()
銀行에該金을任置
을聞知
故로此両人에게交渉
즉同両人은裴説氏와
金銭借貸가有
얏스나総合所와
何様関係가無
다
고拒絶![]()
지라然則裴説氏가死去
얏슨즉該金에関
責任은其未亡人에게在
다
야英国総領事에게提出
얏더니個人事로退
故로日本理事가交渉
리라더라
「総合所長の尹雄烈、役員の金允五・金麟がベセル夫人を訪ねて横領金について質問したら、ベセルが生きている時に約5,000円があったことを聞いたことがあるけど、今はどこにあるか知らないとか曖昧糢糊に答えんだね」
「うん。そこで尹たちは、ベセルが横領金をマルタンに貸し付け、コールブランの会社内銀行に預けていたから、コールブランとマルタンに弁済を交渉したの。でも彼らはベセルとは金銭の貸借関係はあったけど総合所とはそういう関係がない、ベセル死後はそのお金に関する責任は夫人にあるって言って拒否したの」
「たしかにベセルが横領した金を誰にどう
「そのとおりだし、彼らがベセルと組んでいた疑いはあるんだけど、それを証明するのはもう不可能だしね。ともかく総合所の交渉は拒絶されて、英国総領事も個人の事件だからと言って訴えを退けたの」
「じゃ、これで打つ手なし、おしまいだね」
「いちおう、日本理事を介して英国総領事への交渉を実現しようとしてたみたいだけど無理だったぽいね。ベセル横領金の弁済問題はこのまま記録上から姿を消すんだけどね…」
「なんか気になることあるん?」
「うん。申報社・総合所の保管していた報償金の最終的な金額についてなんだけど、それはまた整理して後で見ることにするよ。とりあえずここまでわかった金銭の流れを表にしてみるね」
大韓毎日申報社
| 借方 | 貸方 | |||
| 総合所移管 | 32,300.000 | 報償金募金 | 61,131.507 | |
| マルタン貸付 | 22,500.000 | |||
| 電気会社内銀行預入 | 6,331.507 | |||
国債報償志願金総合所
| 借方 | 貸方 | |||
| 総合所募金 電気会社内銀行預入 | 12,978.600 | 報償金募金 | 12,978.600 | |
| 申報社から移管分 電気会社内銀行預入 | 2,300.000 | 申報社から移管 | 32,300.000 | |
| 申報社から移管分 仁川淮豊銀行預入 | 30,000.000 | |||
仁川淮豊銀行
| 借方 | 貸方 | |||
| ベセル引出 金鉱会社株券購入 | 2,5000.000 | 総合所から預入 | 30,000.000 | |
| ベセル引出 マルタン貸付 | 5,000.000 | |||
「赤字がベセル横領流用分なの。ベセルの罪を簡単にまとめると、まず申報社長として、申報社に集まった報償金を横領して、それを隠して全額銀行に預けたという虚偽の告知をしたこと」
「マルタンへの貸付は完全にアウトやな。利子まで取っとるわけやしね。それと申報に全額電気会社内銀行に預けたって広告載せとったんも虚偽広告になるもんね」
「そして、総合所役員ではないのに総合所の報償金を取り扱って横領し、株購入と貸付をしたこと」
「うん。投機めいた金鉱会社の株購入とマルタンへの貸付をしていたわけだからこれも弁解の余地はないよね」
「あとね、申報社から総合所へ移管した報償金を電気会社内銀行から仁川淮豊銀行へ預け替えたことも厳密にはアウトなんだよね」
「あれ?国債報償金費消事件(10)で見た警秘収第7764号の別紙、尹雄烈の請願書やと、ベセルからの30,000円預け替えは尹も了承したように書いとったで」
「はやてちゃん、預け替えに総合所長尹雄烈の承認があったとしても、総合所にとって部外者のベセルがそれを実行した時点でダメだよ。承認を与えて丸投げした尹にも責任はあるんだけどね。ベセルが外国人がやらないと不都合があるとか言って騙していた可能性もあるけど」
「そっか。尹がベセルの提案を採用しても、総合所役員が預け替えを実行しとったらセーフやったんやね」
「そういうことなの。尹が共犯者という可能性もないわけじゃないけどね。それに、別の銀行へ預け替えたことについては、預け替え当時から疑問視する見方があったみたいなの」
「疑問視?」
「うん。1908年3月31日の時点での話なんだけど、警秘第977号の1「国債報償金の件」(『統監府文書2』p266収録)を見るよ」| 大韓毎日申報社に於て募集したる国債報償金四万二千五百三拾五円余を天一銀行へ預金中の処本月六日同社長「ベツセル」氏及同社主事梁起鐸、朴容圭、前軍部大臣たりし尹雄烈の四名相議り内金三万円を引出し密かに仁川港英涯豊銀行に預金したりと云ふ 因に該銀行は淸国上海に本店を有し仁川は其支店にして曽て報償金を預入したることなし畢竟此事たる他日紛議を来す素因ならんと云ふ |
| 右及報告候也 |
| 隆煕二年三月十一日 |
| 警視総監 丸山 重俊 |
| 統監代理 副統監 子爵 曾禰 荒助 殿 |
「結局、後日紛議の原因になるだろうっていうのは、丸山が聞きこんできた情報・推測なんだね」
「そうなんだよね、あと、西岡隊長がマルタンへの事業費融資2で推測しているマルタンへの貸付金整理による5,000円のロンダリング疑惑もあるんだけど、これでベセルの国債報償費消事件についてはおしまいにするよ。結論としては横領したベセルが悪いかな♪」
「それと、コバーン要らんことし過ぎ、三浦落ち着け、丸山突っ走り過ぎ、伊藤とマクドナルドおつかれさん、っちゅうんもあるでw」
「特にコバーンのせいで現地レベルの単純な問題が日英の外交問題にまでなりかけたんだもんね」
「丸山の先走りも問題やね。伊藤が慎重に調査せぇ言うとったのに、梁の捜査・逮捕・送致まで行ってもぉたから、裁判という形式で費消事件の真相解明をせなあかんようになってもぉたんやもんなぁ」
「この事件を統監府の申報への言論弾圧の一環とか国債報償運動の弾圧って思える人はかなり単純、じゃなくてシンプルな思考回路を持っているとしか思えないよ」
「韓国の教科書は大体そんな感じなんだよねw…何回か触れてきた田口容三『李朝末期の国債報償運動について』(所収「朝鮮学報」第128輯 朝鮮学会 1988)の最後には『なお、一九〇九年二月、寄付金品取締規則(ママ)が公布され、寄付金募集にあったて(ママ)はあらかじめ内務大臣および関係主務大臣の許可を受けることとなったが、これは報償義捐金不正処理を口実に制定されたものであろう』って書いてるんだけど、1909年2月27日付で制定された閣令第2号寄附金品募集取締規則は、募集目的・方法、保管方法、事業計画、収支予算等をきちんと記載して許可を請願するもので、不透明な事業への寄附行為、強引な寄附、寄附に名を借りた
「あれ?この規則、前にどこかで聞いたような記憶があるよ」
「うん。俵学部次官演説要領(明治43年7月)(12)で触れているよ。他者の寄付だけに頼るような基盤のいい加減な私立学校はこの規則の発布によって大打撃を受けたって」
「あー、基盤のええ加減な私立学校は干渉して廃校させるんやなくて、自然淘汰に任せるいう話の中で出とったな」
「この規則は寄付事業に対する透明化・健全化を図るのが目的ってこと。田口と違って、この規則は私立学校の財源を潰し弾圧するために制定されたなんて言う人もいるけど、それはそれで間違ってるしね」
「統監府・総督府の行動を全て悪意に結び付けないと気が済まない人はまだまだ多いんだろうねぇ」
「そういうことなの。じゃ、次回からは国債報償運動そのものについて見ていくよ」国債報償金費消事件(1) 国債報償金費消事件(2) 国債報償金費消事件(3)
国債報償金費消事件(4) 国債報償金費消事件(5) 国債報償金費消事件(6)
国債報償金費消事件(7) 国債報償金費消事件(8) 国債報償金費消事件(9)
国債報償金費消事件(10) 国債報償金費消事件(11) 国債報償金費消事件(12)
国債報償金費消事件(13) 国債報償金費消事件(14)


