「なー、なのはちゃん、この国債報償金費消事件、KJCLUBのほうの進展はどうなん?」
「特に進展無しってとこかな。韓国側が話にならないレベルだし」
「えーっと…『統監府文書』をきちんと読めてないどころか、ちゃんと調べてもいない!?」
「結論ありきで史料探してくるんやから、トリミングするしかあらへんのやけど、それもようせえへんねんなぁw それに、以前に合意した認識や定義を忘れて
「そうなんだよねぇ。じゃ、本題に入るね。前回は国債報償金調査会や大邱地方国債報償金消費事実臨時調査所の話だったけど、今回は別の団体の話をするんだよ」
「報償金の取り扱いについて調査する団体の話だったね」
「うん。憲機第652号「国債報償金調査会準備及役割に対する報告の件」(『統監府文書5』p282収録)に、国債報償金検査所って団体が募金活動を行なっている各団体を調査する動き始めたことが報告されてるの」一.閔宗植を所長として創設した国債報償金検査所にては本日第一回を開会する筈なりしか皇帝陛下水原に行幸に付取消し更に期日を定め開会の筈なりと然して其決議すへき内容は各道各郡に於て応募し之れを預入れたる場所及金高を第一に調査し而して其預り居る皇城新聞社・期成会・帝国新聞社・安洞婦人会・女子教育会・青年学院・西道義成会・敦明義塾・創漢模薬圃・薬峴教堂・大韓毎日申報社・連合会所・総合所・中央義務社の十四ヶ所に就き対照して其調査を適合する時は預金の返還を求むるに在りと而して検査は第一着に皇城新聞社及大韓毎日申報社を為し次て英人「ベツセル」を調査し若し預金と「ベツセル」に於て預り居る金員と符合せさるときは各道に通文を発し一名宛の総代を上京せしめ以て「ベツセル」を詰問する事に内定し居れりと |
二.前項各道より総代を上京せしむるは中央委員而已にては調査の権限薄きを懸念したるに因る又皇城新聞社より先きに調査に着手するは「ベツセル」に対する一般の注意を避くる為なりと云ふ |
| 以上 |
| 明治四十一年十月二日 |
「大韓毎日申報社より皇城新聞社を先に調査するのは、一般の注意を避けるため?世間の目がベセルに関係する申報社に向いているからそれを避けるってことなのかな?」
「そういうことだろうね。この検査所については、憲機第663号「国債報償金検査所任員選定の件(十月二日憲機第六五二号参照)」(『統監府文書5』p283収録)でも報告されてるんだよ」昨四日国債報償検査所にては総会を開催し役員を選定し左の決議を為せりと
所 長 閔宗植
副会長 李文求
検査委員長 権重勲
委 員 柳甲秀 外七名
総 務 金誠鎮
同 閔丙星
幹 事 金基文 外二名
書 記 李春雨 外二名
決議事項
一.十三道各郡に同所の趣旨書一通及其他公函を発送する事(各郡守宛) |
一.京城各収金所に検査委員二名を選出派遣する事 |
一.皇城新聞社・帝国新聞社を検査して後大韓毎日申報社を検査する事 |
一.検査日時は本月七日より開始する事 |
| 尚閔宗植は左の如き団束令を規定せりと |
一.本所は国債報償金の検査を目的とする事 |
一.本所役員は国法範囲内に於て行動する事 |
一.所中の経費は所員負担の事 |
| 以上 |
一.各郡に発送す可き公函の大要は左の如しと |
| 公函(大要) |
一.国民の義務を果たさん為め国債報償せんとせし我同胞の血誠より出せる義金昨今疑議紛起せり本所此に該金の調査の任に当る貴郡の義金額調査報告せられ度云々 |
| 以上 |
| 明治四十一年十月五日 |
「見える、見えるでー。乱立した調査団体が足を引っ張り合って共倒れする未来がw」
「はやてちゃん、残念だけど現実はそこまでいく前に消滅したり整理統合されたんだよ。国債報償金調査会は検査所等の団体が既に調査を始めてるから、並行して調査する必要はないってことで10月30日に活動停止、国債報償金検査所は、田口容三『李朝末期の国債報償運動について』(所収「朝鮮学報」第128輯 朝鮮学会 1988)では1909年(隆煕3年)11月に発足した国債報償金処理会に統合吸収されたんじゃないかってしているんだけど、確認できないの」
「じゃ、集まった報償金はどうなったのかな?それにベセルが横領した分は?」
「ごめん。それらについては確認したい史料が何点かあるから後回しにするね。その代わりに他の報償運動団体の横領について見ることにするよ」
「他にも横領しとる団体があったんかいなw って予想通りやけど」
「そうだよねぇw じゃ、往電第465・466号「国債報償会の募金に対するベセルの立場に関する件」の別紙憲機第40号「国債報償金報償金状況報告書写本」(『統監府文書4』p355収録)を見るよ」国債報償金に関し聞知し得たところ左の如し
京城各新聞社其他の会に収金せる高
| 一.大韓毎日申報社会計室収金 | 三万六千余円 |
| 一.同申報社国債報償志願金総合所 | 四万二千三百八円十銭 |
| 一.皇城新聞社 | 八万二千余円 |
| 一.帝国新聞社 | 八千四百二十円六銭 |
| 一.前万歳報現今大韓新聞社 | 三百五十九円 |
| 一.国債報償期成会 | 一万八千七百円二十二銭七厘 |
| 一.女子教育会保管金なし | 会長秦学胄私消百余円 |
| 一.安東婦人会保管金なし | (女名申簫堂)私消三百円 |
消費若くは保管中の高
| 一.大韓毎日申報社及同総合所総合計金 | 七万八千三百八円十銭也 | |||||
| 此内 | 裴説犯用金 | 二万五千円 黄海道遂安郡金礦に使用 | ||||
| 同 | 金五千円 家屋建築の際使用 | |||||
| 朴容奎 | 金三百八十六円八銭私消 | |||||
| 新門外馬田ホテル | 金一万円(九厘利子にて貸与) | |||||
| 残金三万七千九百二十円〇二銭(裴説預り金) | ||||||
一.本日国債報償金総精算の為め関係者約五十名毎日申報社に集会協議の予定 | ||||||
一.大韓毎日申報国債報償収金に関する帳簿一切は七月十三日同社長英人万咸,裴説の宅に持行き社に置かすと | ||||||
| 右一説として御参考迄及内報 | ||||||
「この時点で判明してたベセルの横領額は株購入25,000円・自宅修繕5,000円の30,000円なんだね。あれ?マルタンへの貸付は?」
「新門外馬田ホテルがマルタン経営のアストルハウスのことだよ。最初にベセルが梁起鐸に貸付額は10,000円だって嘘をついて、梁がそれを信じて丸山警視に話した結果がここに出てるの」
「ほんまは22,500円やった分やね」
「朴容奎っていうのは総合所役員なんだけど、実は彼も横領の容疑が掛かっていてベセルの家に逃げ込んでいたんだよね。9月に起訴されたことが警視第57号「国債報償金費消事件」(『統監府文書4』p355収録)でわかるんだよ」| 国債報償金濫費に関する梁起鐸の被告事件は現に京城地方裁判所に於て審理中に有之候処右事件の外別に朴容圭に対し総合所評議員安重植外三名より義捐金濫費の事実調査を請願せり取調を遂くるに朴容圭は国債報償志願金総合所財務監督にして総合所の收入に属する金額の監督整理を為すの任に在りなから隆熙元年七月初旬忠清南道徳山郡支收所長趙鍾灝より国債金総合所会計室に宛て送納したる義捐金八十三円九十二銭を収受し総合所規程に定むるか如く之を銀行に預金せす又新聞に掲載せすして濫費し償還せす尚又隆熙元年十二月十日頃全羅南道順天郡義務所総務趙泳薫外一名より総合所に送納したる義捐金三百十四円十八銭を収受し前同様濫費して償還せさるものと認む依て本件は刑法大全第六百四十三条の犯罪と思料し八月二十七日右事件を京城地方裁判所検事長に送致せり |
| 右及報告候也 |
| 隆煕二年九月二日 |
| 警務総監 若林 賚蔵 |
| 統監 公爵 伊藤 博文 殿 |
「こっちは梁起鐸と違って本当に横領してたんだね」
「女子教育会と安東婦人会は完全に横領で使いきっていたみたいだね」
「でも、100円と300円だから、大韓毎日申報社や皇城新聞社に比べるのはかわいそうだけど、そんなに集まってなかったってことだよね」
「ここでは各団体保管の報償金の総計が187,787円38銭7厘になっとるけど、この数字は正確なんかなぁ?」
「んー、1910年4月19日付大韓毎日申報には総額159,253円99銭9厘っていう数字が載っているんだけど、それとの差額は-28,533円38銭8厘だね」
「でも、187,787円38銭7厘って、ベセルと朴容圭の横領額込みだよね」
「うん。187,787円38銭7厘からベセルと朴容奎の横領額を引くと134,901円30銭7厘になるから、1910年4月19日付大韓毎日申報の総額との実際の差額は24,352円69銭2厘になるよ。1908年7月から1910年4月の間に募金がなかったとは言わないけど、弁済された金額がその差額の多くを占めているって考えるほうが自然だろうね」
「前回言うとった株売却による一部弁済がそれにあてはまるんかもしれへんね」
「調査結果と各団体の帳簿書類が正確だという前提条件つきだけどね。書類不整理のせいで計算が合わなかった例が往電第38号「国債報償金報償金顛末調査報告」(『統監府文書4』p365収録)で報告されてるしね」| 明治四十一年 | 八月 | 九日 | 午後 | 二時 | 五分 | 発 | |
| 曾禰 副統監 | |||||||
| 伊藤 統監 宛 | |||||||
| 貴電第十四号大韓毎日申報以外の諸新聞社募集金に就き警視総監か今日まて取調たる所に拠れは皇城新聞社募集額六万三千余円にして不足額は二十一銭二厘万歳報社の分三百三十八円余国民新聞社の分五十五円余共に過不及なし帝国新聞社八千四円余其中二百二十四円余は社員保管すと云ふも該社員目下不在の為め調査未済に属す前電同社に於て一千円費消の形跡ある旨御通知に及ひたるは当時丸山総監の明言に拠りたるも今回の報告には其費消にあらさりしこと判明したるか如し又国債報償期成会の分一万八千余円銀時計二個銀器 (しろかねうつわ) 三十点不足額は二百十五円余あるも関係書類不整頓の為め誤算を来したるものと認むるも尚ほ調査中なりと云ふ | |||||||
「丸山警視総監、またドジ踏んだの?」
「そういうことになるかなw じゃ、今回はここまでにして、次回はベセルが横領したお金はその後どうなったか?を見るよ」国債報償金費消事件(1) 国債報償金費消事件(2) 国債報償金費消事件(3)
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