雷鳴轟き暴風豪雨の中で,後楽園球場でのライヴを行い,今や伝説と化している グランド・ファンク・レイルロード(Grand Funk Railroad:GFR)の初来日公演のオーディエンス録音を収録した 『 Korakuen Stadium 1971 (ZION-158) 』 が再リリースされたのは記憶に新しいですが,今度は,その 4年後の 1975年に 2度目の来日を果たした際の音源がリリースされました.

 1971年7月の初来日は後楽園球場の 1公演のみでしたが,1975年5月の再来日は 5公演(18日:名古屋市公会堂,19日:京都会館,21日:大阪厚生年金会館,22-23日:日本武道館)を行っており,今回 Uxbridgeレーベルよりリリースされたのは 5公演目の日本武道館公演(最終公演)のオーディエンス録音を収録した 『 Budokan 1975 2nd Night (Uxbridge 1188) 』 で,録音者本人から提供されたマスター・カセットをトランスファーしたようです.

 メンバー的には 1972年より新たにキーボード奏者の クレイグ・フロスト(Craig Frost)を加えた 4人編成となり,これを機にバンド名も グランド・ファンク・レイルロード(Grand Funk Railroad, GFR)から グランド・ファンク(Grand Funk)に変更になっています.

 音像は遠く,ヴィンテージ感のある音で高音質とは言えませんが,充分楽しめる内容です.

 メーカー情報では
 『伝説となっている「嵐の甲子園」から4年。
 1975年に再び日本の地を踏んだGRAND FUNKの世界初公開となるオリジナル録音が登場です。
 録音者本人から譲られたカセットに記録されていたのは「1975年5月23日:日本武道館」。その全貌を伝えるオーディエンス録音です。
 70年代に実現した来日は1971年と1975年の二度。まずは、そのスケジュールを振り返り、ショウのポジションを確かめてみましょう。

 《5月16日:グランド・ファンク来日》
  ・5月18日:名古屋市公会堂
  ・5月19日:京都会館
  ・5月21日:大阪厚生年金会館
  ・5月22日:日本武道館
  ・5月23日:日本武道館 ←★本作★

 以上、全5公演。

 そのハイライトは日本武道館での2日連続公演であり、本作は70年代最後のライヴ・イン・ジャパンでもありました。そんなショウで録音された本作は先述の通り世界初公開となるわけですが、その衝撃が霞むクオリティも素晴らしい。
 あくまでもヴィンテージ・オーディエンスの域は出ませんが、驚くのはクリアな空気感。距離感もあるものの、サッと晴れ渡った中で演奏音がクリアに轟き、真っ直ぐ手元に届く。当時はキーボードにクレイグ・フロストを迎えた4人編成だったわけですが、そのアンサンブルがすっきりと楽しめる。
 当店では初来日の実況盤『KORAKUEN STADIUM 1971(Zion-158)』が伝説的な人気となっておりますが、本作はそれよりも遙かに鮮やかでクッキリとしています。さらに言えば、オーディエンス・ノイズも極少。もちろん、曲間になれば初来日を経た人気ぶりも伝わってくるのですが、演奏中は楽音と歌声に占領されるのです。
 とは言え、これは(当時話題にもなった)演奏音の力強さと日本独特のムードによるもの。録音自体は現場の息づかいも綺麗に捉えており、それが猛烈な時代感も醸してくれます。特に強く感じるのは開演前。場内にBGMが流れる中、2年前に来日したばかりのYESやCHICAGO、当時ソロ来日を間近に控えていたジェフ・ベックについて語る観客の声も聞こえる。そして、開演アナウンス。これがまた味わい深いので、ちょっと書き出してみましょう。
「ここでステージ・マネージャーより皆さまにお願い致します。本日のコンサートは大変エキサイトしたコンサートになると思いますが、先ほどもお願いしましたように、特にアリーナのお客様、椅子の上には絶対に上がらないようにお願い致します。えー何度もお願いしておりますが、椅子の上には絶対に上がらないようにお願い致します。間もなく開演でございますので、椅子にお立ちのお客様、自分の席にお戻りくださいませ」
 当時はRAINBOWの死亡事故が起きる3年前であり、注意しながらもどこかのどか。本作のサウンドは、そんなアナウンスの一言一言までクッキリ・ハッキリと聴き取れるクリア・サウンドなのです。余談が過ぎてしまいましたが、本作の要はもちろんライヴ本編。ここで、その内容も整理しておきましょう。

 ・ON TIME(2曲):Heartbreaker/T.N.U.C.
 ・GRAND FUNK(1曲):Inside Looking Out
 ・CLOSER TO HOME(1曲):I'm Your Captain (Closer To Home)
 ・SURVIVAL(1曲):Gimme Shelter
 ・E PLURIBUS FUNK(1曲):Footstompn' Music
 ・PHOENIX(1曲):Rock & Roll Soul
 ・WE'RE AN AMERICAN BAND(3曲):Black Licorice/The Railroad/We're An American Band
 ・SHININ' ON(2曲):Shinin' On/The Loco-Motion

 ……と、このようになっています。
 全アルバムから満遍なくセレクトされたグレイテスト・ヒッツであり、一言で言えば「CAUGHT IN THE ACT in Japan」。「Some Kind of Wonderful」こそありませんが、あの伝統盤をそのまま現場体験するようなライヴアルバムなのです。もちろん、その現場は公式盤とは違う日本武道館ですし、インプロヴィゼーションも熱気もまったく異なる。その熱演ぶりは公式盤以上にも感じられ、マーク・ファーナーのシャウトやメンバーの一挙手一投足に反応する声援やビシッと揃った手拍子は他のどこでもない日本だけのムードを醸し出す。12分を超える「Inside Looking Out」のド迫力に揺れる八角形の空間も超リアルに感じ取れるのです。

 万雷の拍手が渦巻く中、「以上をもちましてGRAND FUNK公演を終わらせて頂きます(中略)ゆっくりとお帰りください」のアナウンスが流れて幕を閉じる本作。初来日は天候も相まって伝説となりましたが、熱演ぶりは本作もまた伝説級。その現場をクリア・サウンドで実体験できる。それも、開演アナウンスから終演アナウンスに至るまで。これほどの録音が45年もの時を超えて登場しようとは。そして、何の前触れもなく出逢えようとは。これだからアンダーグラウンド記録は止められない。そんな感慨まで吹き出すライヴアルバムの大傑作。どうぞ、じっくりと噛みしめるようにお楽しみください。

★録音者提供の初登場オリジナル・ソース!!』

Budokan 1975 2nd Night (Uxbridge 1188)
 
 Live At Budokan,Tokyo,JAPAN 23rd May 1975
 [From Original Masters]

  Disc 1
   1. Intro
   2. Footstompn' Music
   3. Rock 'N Roll Soul
   4. I'm Your Captain / Closer To Home
   5. Heartbreaker
   6. Shinin' On
   7. The Loco-motion
   8. Black Licorice
   9. The Railroad
   TOTAL TIME (49:12)

  Disc 2
   1. We're An American Band (Promo Film)
   2. We're An American Band
   3. T.N.U.C.
   4. Inside Looking Out
   5. Gimme Shelter
   TOTAL TIME (38:45)

 Mark Farner : Guitar, Vocal
 Don Brewer : Drums, Vocal
 Mel Schacher : Bass
 Craig Frost : Keyboards

 Heartbreaker
 
 Inside Looking Out
 

[参考]
 1975 Japan Tour Dates
  May
   18 Nagoya-Shi Kokaido,Aichi,JAPAN
   19 Kyoto Kaikan,Kyoto,JAPAN
   21 Koseinenkin Kaikan,Osaka,Osaka,JAPAN
   22 Nihon Budokan,Tokyo,JAPAN
   23 Nihon Budokan,Tokyo,JAPAN

















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#2020-01-07