雷鳴轟き暴風豪雨の中で,後楽園球場でのライヴを行い,今や伝説と化している グランド・ファンク・レイルロード(Grand Funk Railroad:GFR)の初来日公演のオーディエンス録音の登場です.

 梅雨明け直前の最悪の日となった1971年7月17日.
 後楽園球場で開催された 『 Kyodo Tokyo ロックカーニバル#6 』 は,日本から ザ・モップス(The Mops),アメリカを拠点に活動していた 麻生レミ,カナダから マッシュマッカーンMashmakhan),そしてヘッド・ライナーとして グランド・ファンク・レイルロード(Grand Funk Railroad:GFR)が出演.

 当時 ”As The Years Go By”(”霧の中の二人”)がヒットしていた マッシュマッカーンが,グランド・ファンク・レイルロードの前に出演.彼らのステージが終わる頃に突風が吹き,ステージ前に設置されていたグランド・ファンク・レイルロードの横断幕が吹き飛ばされます.そして演奏が終了し,ステージ転換時に雷鳴が轟き強い雨(雹)が降り出します.
 グランド・ファンク・レイルロードの出演時間も,当初予定よりかなり遅れていたはずですが,観客側も帰ることもできず,待ち続けるしか無かったのでしょう.

 リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)の ”Also Sprach Zarathustra”(”ツァラトゥストラはかく語りき”)が爆音で流れる中,グランド・ファンク・レイルロードのメンバーがステージに登場し,オープニングの ”Are You Ready” から爆音でステージがスタートします.
 9ヵ月前の1970年11月に 『 Live Album (ライヴ・アルバム) 』 をリリースし,ロック・ファンに圧倒的な人気を誇っていた中での来日となった訳ですが,セット・リスト的にも 『 Live Album (ライヴ・アルバム) 』 収録のキーボード曲:”Mean Mistreater” がカットされた程度でした.

 演奏する側も,聴く側も,録音する側も最悪の状況だと思いますし,正直,コアなファンにも厳しいオーディエンス録音ではありますが,これもドキュメントという事でしょう(笑)
 因みに同内容が他のレーベルからリリースされているとしたら,それは 2011年にリリースされた 『 Korakuen 1971 』 のコピーなのでしょうね.

 メーカー情報では
 『日本洋楽史に巨大すぎる伝説を刻みつけたコンサート「嵐の後楽園」。その全貌を現場体験できる奇跡のライヴアルバムが復刻です。

 【伝説を証言する初の全貌記録】
 そんな本作が記録されたのは、もちろん「1971年7月17日:後楽園球場」。
 PINK FLOYD、LED ZEPPELINに先駆けて来日を果たしたGRAND FUNK RAILROAD唯一の初来日公演です。このショウは、まさに伝説以外の何物でもない。
 シンプルに新しい音楽“ニューロック”の襲来というだけでなく、日本にとっても初のスタジアム(そして恐らく日本初の野外)コンサート。観客にとってもスタッフにとってもすべてが未体験の手探りであり、しかも生憎の豪雨に見舞われた。野球の試合も雨天中止が当たり前の時代だけに「どんな音楽?」以前に「本当に開催されるのか?」「どう観るもの?」までもが未知。そんな混沌とトラブルの連続にも関わらず、GRAND FUNK RAILROADはショウを完遂しただけではなく、世界的にも希に見る凄絶な名演を繰り広げた……。まさに奇跡と伝説の結晶だったのです。
 
 そんな「嵐の後楽園」の全貌を初めて「現実の音」として伝えたのが本作。2011年に初登場したオリジナル・カセットです。何しろ、日本随一の伝説ですから、それまでも録音は存在していました。しかし、それはあくまで断片的。それらを組み合わせた既発でも4曲目の「Heartbreaker」まで(30分弱)でした。ところが、このマスターには「その後」も約34分間も収録。ラストの「Inside Looking Out」が13分40秒演奏されたところでテープが尽きてしまうものの、この後半部は史上初の快挙であり、当日の全曲をほぼ完全に記録しきっていたのです。
 しかも、「当日の全曲」はGRAND FUNK RAILROADだけではない。なんと前座として来日したMASHMAKHANのステージまで録音されており、さらに当日の進行を務めた糸居五○氏やマネージャーのテリー・ナイトによるナレーションまで収録。(さすがに露払いの日本人グループはありませんが)まさしく「伝説の全貌」を丸ごと記録されていたのです。

 【超リアルな前座のMASHMAKHANと伝説のMC】
 実際、前座のMASHMAKHANからして圧巻。「Children Of The Sun」「Gladwin」の2曲を演奏しているのですが、アコースティカルなアンサンブルだけに演奏だけでなく、周囲のムードまで綺麗に捉えられている。これが凄い。「雨降ったら見ものだな!」「皆、もう裸になっちゃうんじゃないの!?」「俺、洋服脱いで裸になっちゃう!」「あ、雨降ってきた!!」「感電して死ぬなよー!」といった会話が美しい演奏と共にハッキリと聞こえる(ちなみにレス・ハーヴェイやキース・レルフが感電死したのはさらに後年でした)。
 特に強烈なのは5分ほど「Gladwin」を演奏したあたり。静かなインプロで盛り上がる要素は皆無なのに、猛烈な大歓声が沸き上がる。実は、この日の伝説の1つに「GRAND FUNK RAILROADの横断幕(看板)が突風で飛ばされた」というのがあるのですが、それがこの瞬間(カセットにもそのように表記されています)。加熱していく演奏とは別次元でトラブルに興奮する観客の熱気が超リアルなのです。
 そんなMASHMAKHANの後、セットチェンジに1時間近くかかったのもこの日の伝説。さすがにそこではテープが止められていましたが、糸居○郎氏とテリー・ナイトの登場から録音再開される。再開直後の「早く始めろ、バカヤロウ!」「座って!座って!」からして殺気だった現場を伝えてくれますが、テリーによる「ミナサン、コンバンワ」で一気にムードが変わり、平和に「こんばんわー!」と返すのが面白い。その後、テリーは「GFRはここで待ってるんだ(Grand Funk Railroad is here now!)」に大歓声が沸き、「雨でステージが濡れてしまって。遅れて申し訳ない。でも、GFRは今夜キミたちのために演奏する!(Because of rain, the stage is very wet. We are sorry for the delay...Grand Funk Railroad will play for you tonight!)」に熱気が吹き上がるのです。この挨拶パートと続く開演SE「ツァラトゥストラかく語りき」は本編とは別マスター(約4分40秒)ですが、これもトレーダー間で流通していたノイズまみれの物とは異なるノイズレスな極上マスターです。

 【“キャリア・ベスト”とまで言わせた大名演の真実】
 そして、いよいよ主役が登場! この瞬間が凄まじい!! 糸居五○氏の「どうもお待ちどおさま、じゃあご紹介しましょう。Ladies & Gentlemen, GRAND FUNK RAILROAD!!」とシンクロして「Are You Ready」のイントロが唸りを上げるのですが、その音圧と大歓声のド迫力! 
 雨の中で1時間近くも待たされたフラストレーションが爆発しているのですが、それを完全にねじ伏せる演奏はまさに核爆発。前座がアコースティックで美しいMASHMAKHANだったせいもあって、その突撃力のダイナミズムが半端ない。曲間になると相変わらず会話声までクリアに聞こえるので同じ録音と分かるものの、演奏音はまるで違います。正直なところ、多少なりともオーディエンス慣れを必要とするサウンドではあるのですが、このエネルギーとダイナミズムこそが重要な証拠でもあるのです。
 もちろん、客録慣れした方なら極太の芯で演奏の機微もしっかりと感じ取れる。これがまた凄い。あまりに鉄壁な演奏ぶりに当時“口パク疑惑”まで流布されましたが、それもまだまだ稚拙だった日本洋楽シーンの表れというものでしょう。どこをどう聴いてもアドリブたっぷりの生演奏。それも飛びっきりに極上の。この録音が初登場した際には、専門誌のレビューで「昭和のメディアによって広められた“GFR=クチパク”というイメージは愚かにも、この日本だけで21世紀の今も尚語られる事となるのだが、本音源が登場した今となって、年老いた彼らは裸足で逃げ出したい心境であろう」とまで書かれていましたが、まさに至言。むしろ「ツェッペリンもぶっとんだ」というフレーズの方がしっくりと来ますし、かの大名盤『LIVE ALBUM』とはまったく異なりながらも凌駕する大熱演が猛烈な勢いで吹き出してくるのです。

 日本の洋楽シーンに数々の逸話を刻んだだけでなく、後年マーク・ファーナー自身も「キャリアのベスト」に挙げるほどの大名演。その全貌を超リアル・サウンドで体験できてしまう正真正銘の文化遺産アルバムです。口伝されてきた伝説は本当であり、虚偽でもあった。その真実をつまびらかにし、永久に語り継ぐプレスCD。完売久しい伝説盤、ここに堂々の復刻です。』

Korakuen Stadium 1971 (ZION-158)
 
 Live At Korakuen Stadium,Tokyo,JAPAN 17th July 1971 
 [From Original Masters]

  [Mashmakhan]
   1. Children Of The Sun
   2. Gladwin
  [Grand Funk Railroad]
   3. Goro Itoi & Terry Knight Stage Announcements
   4. Also Sprach Zarathustra / Soundcheck 
   5. Goro Itoi Introduction
   6. Are You Ready
   7. Paranoid
   8. In Need
   9. Heartbreaker
  10. Mark Says Alright
  11. T.N.U.C.
  12. Inside Looking Out
  TOTAL TIME (79:55)

 Mark Farner : Guitar, Vocal 
 Don Brewer : Drums, Vocal 
 Mel Schacher : Bass

 Gladwin 
 
 Paranoid 
 
 Heartbreaker 
 

[参考]
 Korakuen 1971
 
 オリジナルリリース時のメーカー情報
 『今よりちょうど40年前の1971年7月17日に行われた、グランド・ファンク・レイルロードの「嵐の後楽園」公演を初登場・高音質オーディエンス録音で収録。冒頭は前座の「マシュマカーン」の演奏を2曲・約12分収録(こちらも勿論、初登場)。さらに糸居五郎氏のアナウンスからGFR本編ライブを約68分収録。ラスト、マークの熱いハープ演奏が延々と繰り広げられるInside Looking Outが13分40秒程でカットアウトされますが、それ以外はほぼ完全に収録。この伝説の公演の全貌が音盤化されるのは初めてで、ライブ前半は、2008年に登場した(本盤より音質の劣る)別マスターにて聴くことができましたが、Mark Says Alrightからラストまでの34分は史上初登場パートであり、マニアは初めて聴く1971年後楽園の全貌に大いなる感動と感慨を覚えることでしょう。

今回のテイクは前座の「マシュマカーン」の2曲が収録されているところがポイントが高く、楽音がキレイに録音されている分、周りの観客の無駄話もクリアーに聴くことができ、次第に天候が悪化していく様子が会話から連想され、その時間経過がリアルに感じられるところが素晴らしい記録となっています。前座の「マシュマカーン」がGladwinでムーディな演奏を繰り広げる中、そのちょうど5分目で観客が大いにどよめくのが、例のステージ前に置かれた「GFR」のロゴ看板が強い風で飛んで行ってしまったところではないでしょうか。(オリジナルカセットにそのように表記あり。)曲中で聞ける、「雨降ったら見ものだな!」「皆、もう裸になっちゃうんじゃないの!?」「俺、洋服脱いで裸になっちゃう!」「あ、雨降ってきた!!」「感電して死ぬなよー!」といった会話は、当日の様子を知る上で貴重な記録と言えるでしょう。

 糸居五郎氏の状況説明に続き、マネージャーのテリー・ナイトが登場。
 「皆さん、コンバンワ」と日本語で挨拶すると、それまで大騒ぎだった観客が「こんばんわー!」と言うのも一興。ムードが大いに盛り上がります。テリーの「Grand Funk Railroad is here now!」(大歓声)「Because of rain, the stage is very wet!」「We are sorry for the delay…Grand Funk Railroad will play for you tonight!」との宣言に満ちた説明に、「もしかして、この雨で中止になるのでは?」と心配していた観客から怒涛の歓声が巻き起こります。糸居五郎氏の説明の後、オープニングテーマの「ツァラトゥストラかく語りき」が尊厳に流れ、ステージ上にメンバーが登場。強烈なチューニングの音が響き渡ります。(このライブ開始前のtrk3と4(約4分40秒)は本編とは別のもうひとつマスターより補填。トレーダー間に存在する幾多のノイズのある聴き辛いヴァージョンとは別のノイズレスのテイクが補填音源として使用されています。)
 再び登場した糸居五郎氏の「どうもお待ちどうさま!どうも!それではご紹介しましょう!Ladies & Gentlemen, Here is Grand Funk Railroad!」のアナウンスに続いてコンサートはAre You Ready?から劇的にスタートします。

 会場を埋め尽くした大観衆にとって、おそらく未知の領域と思われる、凄まじいばかりの轟音がPAから炸裂。この瞬間、「とんでもないことが目の前で繰り広げられている」といった興奮、熱気、そして緊張感が会場を一気に包み込んでいるのがお分かり頂けると思います。「伝説は本物だった」という、まさに日本洋楽史における緊急事態は、このテープが雄弁に物語ってくれます。ここで聞ける音像は、絶頂期のクリームを遥かに飛び越え、10年先の絶頂期モーターヘッドを連想させるほどのピュアでアグレッシブなサウンドです。まさに暴走列車の如き迫力、そして電光のようなサウンド。オーディエンスの想像をも超えた大音量と迫力は、40年経った今でも聴き手を圧倒します。
 「実際の演奏ではなくテープを流していた」との噂がありましたが、形容不能・理解不能の迫力に面喰った一部の観客の感想が独り歩きしてしまったのかもしれません。「ツェッペリンもぶっとんだ」という当時の形容があながち誇張ではないことを、数十年の時を経て、見事に証明してくれます。凄みむき出しの、強烈なまでの演奏は、時に録音レベルをもオーヴァーし、In Need の2分台ではつんざくハープだけになってしまうという特異な音像も飛び出します。一般の公式盤のみ聴いているリスナーにはお薦めしませんが、ライブ盤を聞き慣れているなら、この音の鮮度・魅力を最初の一音から容易に理解できるはずです。誓って言いますが、これは非常に優れた録音です。割れる寸前のダイレクトなサウンドですが、全体がダンゴになっては
 おらず、加えてテープのジェネが低いため、全体の聴き応えは素晴らしいものがあります。全編その全てが聴き所であり、記録としてもエンタティメントとしても、第一級の価値を持つ、非常に優れたライブ盤です。日本ライブ史に残る歴史的コンサートを捉えた久々の超重要タイトルが限定プレスCDにて、海外より入荷しました!これは凄いです!!

 ★beatleg誌 vol.135(2011年10月号)のレビュー要約です。ご参考まで。
 伝説の「嵐の後楽園球場」を完全収録した音源が40年の時を経て遂に“登場”。その存在はマニアの間では知られていたが、これまではネット上に流出した音源を繋ぎ合わせたものがあったのみで、本音源は完全版といえる。
 これは日本初のスタジアムコンサートを、豪雨による機器トラブルに見舞われる事なく、恐らく日本初であったハズの野外オーディエンス録音(しかも高音質)で収録し、天災の多い多湿な国土で今日まで現存したという正に奇蹟の音源である。録音者が友人と交わす会話もすっかり録音されている事で当日の空気感、周囲の観客の反応までが生々しく記録されており、まるで自分がそこに居るかのような錯覚に陥る。驚くべき事に前座のマッシュマッカーンの演奏から収められており、伝説となっているGRAND FUNK RAILROAD の横断幕(看板)が突風で飛ばされ観客が熱狂している様子や公演の遅れを詫びる司会者への痛烈な野次、徐々に荒れる天候と観客の興奮までもが見事に収録されている。約一時間もの荒天による中断(その間に飛び交う痛烈な野次)はさすがにカットされているが、GFRの登場シーンからチューニング風景までも収録されている。その直後、Are You Ready のイントロと同時に爆発する観客のエネルギーは凄まじいの一言である。
 セットリストは大ヒットした「LIVE ALBUM」通り(Mean Mistreater のみカット)であるが、これはデビュー当時の最初期セットリストであり、来日直前の全米ツアーは既に新曲を含むセットリストであったことから、恐らく日本の開催者側の要請によるものだろう。しかし当時急成長を遂げていたメンバーによって余裕をもって再現された旧セットリストは、「LIVE ALBUM」の名演を遥かに超えており、この日の公演が後世まで伝説となった理由が天候による演出だけでない事がこの音源は物語っている。
 余談だが、あまりにも完璧なこの日の演奏は、目の前で繰り広げられた圧倒的な演奏力を理解できなかった物知り顔の評論家達を困惑させ、その結果、幼稚なクチパク疑惑を生んでしまう。影響力を持つ昭和のメディアによって広められた「GFR=クチパク」というイメージは愚かにも、この日本だけで21世紀の今も尚語られる事となるのだが、本音源が“登場”した今となって、年老いた彼らは裸足で逃げ出したい心境であろう。
 全てのパートの演奏は、アレンジこそ「LIVE ALBUM」通りだが、随所に生々しいアドリブ(勿論ミスも有り)があり、GFR楽曲の醍醐味であるテンポのアップダウン(走るのとは異なる)も、マーク・ファーナーの歌い回しの妙も、この日の演奏は独特であり正に歴史的名演である。これを観て「レコード通りだった」と豪語した者ほど実は違いが理解できない、つまりレコードを良く聴いちゃいなかったのであろう。(笑)
 T.N.U.C.で聴けるマーク・ファーナーの叩くティンバレスがドラムソロに切り込むアレンジは来日直前の全米ツアーから導入された新たな見せ場であり、これもノーカットで収録されている。この日の為に新調されたWESTアンプによる凄まじいベースサウンドもレコード以上に歪んでおり、その迫力もまた必聴である。
 後のインタビューでマーク・ファーナーも自身のキャリアのベストに挙げているこの日の名演を、日本のロック史に選ばれし4万人の観客として体験しながら、今日までクチパクだと思い込み人生に大きな損失を負ってしまったままの若者が、ようやくタイムマシンに乗って失った価値を取り戻すことができるであろう、これはそういう音源である。
 40年を経て、今も歴史を変える名演。それほどまでに凄まじく、素晴らしい。


















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#2019-12-05