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ユグノア城跡

 


カミュ:こ…こいつは……。

シルビア:ここが 主人公ちゃんの故郷
ユグノア王国ね……。
ウワサでは聞いてたけど……ひどい ありさま。

シルビア:16年前 世界一の歴史を誇る
ユグノア王国は 魔物の大軍勢に襲われ
たった ひと晩で 滅びたそうよ……。
ユグノア王や王妃……そして 偶然 訪れていた
デルカダールの王女さまも
魔物に殺されたと 聞いているわ。
もしかして……
その王と王妃って 主人公ちゃんの
お父さんと お母さん……?

カミュ:……にしても 仮面武闘会で戦った
あの じいさんと女武闘家は どこにいるんだ?
呼びつけておきながら もったいぶりやがって。

ベロニカ:あっ! 奥のほうに かがり火が見えるわ!
もしかしたら あそこに いるんじゃない!?
ちょっと 行ってみましょうよ!
 



ロウ:ふぉっ ふぉっ ふぉっ。
おぬしらが来るのを 待っておったぞ。

カミュ:一緒にいた姉ちゃんの姿が 見えないが
じいさん ひとりだけか?

ロウ:ゆえあって 姫には 席を外してもらっている。
それにしても よく来てくれたのう。

カミュ:さあ。来いと言うから 来てやったぜ。
奪った虹色の枝を 返してもらおうか?
オレたちには あの枝が必要なんだ。

ロウ:ふむ……。おぬしたちに 必要とな……。
それは 主人公が 勇者であるからかの?

カミュ:じいさん 何者だ?

ロウ:……16年前に死んだと 思っておったぞ。
だから グロッタの武闘会で 手のアザを
見た時は 心の臓が止まるかと思ったわい。

ロウ:主人公に どうしても
見せておきたいものが あったんじゃ。
すこしだけ この老人に付き合ってもらうぞ。
 



ロウ:この地は つらい思い出が多くてのう。

カミュ:おい じいさん。あんた 何者なんだよ?

ロウ:あのころ わしは 隠居しておってのう。
城下に降りては 民と 杯を交わし 笑い合う。
そんな毎日を 過ごしておったのじゃ。
じゃが 16年前の あの日……
魔物たちが すべてを奪っていった。
今や かつての栄華は 見る影もない。
たった ひと晩で こうなってしまったんじゃ。

ロウ:おおっと すまんのう。
主人公に 見せたかったものは
別にあるんじゃ。では 行くとしよう。

ベロニカ:おじいちゃん。このお墓は?

ロウ:この国の……ユグノアの 国王夫妻の墓じゃよ。

シルビア:それって つまり 主人公ちゃんの……。

ロウ:さよう。勇者 主人公の じつの両親。
すなわち 16年前に亡くなった
わしの娘と ムコ殿の墓じゃよ。

カミュ:えっ? ということは あんた
主人公の じいちゃん……?

ロウ:娘も死に ムコ殿も死に……それでも
わしだけが生き残ったことには 意味があると。
そう思わなければ あまりにも つらすぎた。
だから 16年間 わしは追い求めたのじゃよ。
なぜ ユグノアは滅ぶことになったのか……。
その原因を探るのを 生きる目的としたのじゃ。

ロウ:そして 各地を回り わしは知った。
勇者伝説の信奉者であった
盟友 デルカダール王の変心をな……。
16年前の あの日から……デルカダール王は
まるで 人が変わったかのように
勇者を 悪魔の子と呼び 非難を始めたんじゃ。
あまつさえ 自分の娘の死まで
勇者の仕業として 世に広めている始末。
わしには 王が正気であるとは思えなかった。
裏で 何かが起きている……。亡国の真相と
盟友の変心……ふたつの謎を 必ずや
解き明かしてみせると 誓ったのじゃ。
エレノアよ アーウィンよ……。
よろこべ お前たちの息子じゃ。
元気に 生きておったぞ……。

ロウ:よく 戻ってきたな 我が孫よ。
よくぞ……よくぞ 生きていてくれた。
こうして 16年ぶりに
愛する孫と 再会することができたんじゃ。
この じいの頼みを聞いてくれんかの?
ユグノア王家には 代々 伝えられている
鎮魂の儀式が あってな。非業の死を遂げた
エレノアたちを 共に とむらってほしい。
儀式は 城の裏山にある祭壇で おこなう。
おぬしも 祭壇まで来てくれ。
 



マルティナ:お待ちしておりました ロウさま。

ロウ:うむ。仕度は 済ませてくれたようじゃな。
ごくろうであった 姫よ。

シルビア:あら アナタは……。

マルティナ:皆さん 下がって。
鎮魂の儀式は ユグノア王家の おふたりのみで
おこなわれるので こちらにどうぞ。

カミュ:あんた じいさんに 姫って呼ばれてるけど
もしかして あんたは……。

マルティナ:静かに。儀式が 始まるわ。
マルティナとカミュ
ロウ:では 主人公よ。
わしのマネをするのじゃ。よいな?

ロウ:人は死ねば 皆 命の大樹へと還ってゆく。
あの大樹の葉 1枚 1枚が
人の魂と言われておる。されど……
魔物によって 非業の死を遂げた者は
未練を残し この世を迷うという……。
そんな魂を救う儀式が この地に伝わっておる。

ロウ:見よ……。煙の香気に つれられて
光り輝く 蝶たちが やってきおった。
この蝶を 人の魂と見立て 命の大樹へと送る。
それをもって 死者のなぐさめとするのじゃ。

ロウ:エレノアは……ただ 死んだわけではない。
おぬしと デルカダールの王女を救うため
自ら おとりとなったのじゃ。
かけがえのない ふたりの命が救われた……。
ありがとうな エレノア……。
……そういえば エレノアは
おぬしに 何か遺さなかったかのう?

主人公は
母の手紙を ロウに渡した!

ロウ:おお! こ……これは!
そうか。そういうことじゃったのか……。
この手紙があったからこそ
おぬしは デルカダール王のもとに……。
主人公。苦労を かけたな……。
しかし ならばこそ
こうして おぬしと出会うことも かなった。
ひとえに エレノアの導きであろう。

ロウ:……すまん。しばらく ひとりに してくれ。
 



マルティナ:エレノアさま……。
誰っ……!?
これは……恥ずかしいところを 見られたわね。
エレノアさまのことを 思いだしてたの。
そう キミの お母さまのことよ。
……歩きながら
すこし お話でもしましょうか。

マルティナ:私の母は 病弱でね。
私が生まれてすぐ 亡くなったの……。
エレノアさまは そんな私を気遣って
絵本を読んでくれたり 花摘みに誘ってくれたり
本当に 優しい方だったわ……。
だから そのエレノアさまが 子供を授かったと
聞いて……私 心の底から うれしかったの。
自分に 兄弟が できたような気がして……

マルティナ:そう……。エレノアさまと 最後に お会いした
16年前の あの日も こんな雨だった……。

マルティナ:あれは……?

マルティナ:どうやら キミたちの追っ手のようね。
かなりの数だけど……
あれだけの追っ手を 出せるとしたら……
デルカダール王国……!!
主人公!
急いで みんなのもとに戻りましょう!
 



兵士:祭壇から逃げた連中は いたか?

兵士:いや 見つからん。悪魔の子は?

兵士:ダメだ。どこにも 見当たらん。
くそっ! 逃げ足の速い連中だ!

兵士:あ……悪魔の子!

兵士:み……みんな! ここに 悪魔の子がいるぞー!

マルティナ:くっ!

兵士:仲間の女が いるぞ! どうする!?

兵士:グレイグ将軍からは 悪魔の子を捕らえよとしか
言われておらん! 女のほうは 殺してしまえ!
構わん! あいつも 悪魔の子の仲間だ!

マルティナ:こんなところで 終わるワケにはいかない……。

兵士:た…大変だ。
グレイグ将軍を 呼びにいかないと……。

マルティナ:くっ! 新手を呼びにいったようね。
主人公! 急いで 山を下りて
みんなと 合流しましょう!
 



グレイグ:そこまでだ 悪魔の子よ!
デルカダールの将 グレイグ 推参!

グレイグ:デルカダールで脱獄した貴様を 追いつづけ
グロッタの町で ようやく 足取りをつかんだ。
よくも ここまで逃げのびたものだな。

グレイグ:悪魔の子は 私が 相手をする。
その女は お前たちに まかせた。
ゆくぞ!!

グレイグ:どうした! 貴様の実力は そんなものか!

グレイグ:もう 逃げ場はない。
ここまでだな 悪魔の子よ。

マルティナ:やめなさい グレイグ!

グレイグ:なんだと?

マルティナ:ダメ!! 絶対に!!

グレイグ:姫さま!!

マルティナ:今度は 離さない……っ!
マルティナ イレブン DQ11



マルティナ:よかった。気がついたのね 主人公。
外は まだ雨よ。
服も ぬれているし 暖をとりましょう。
マル主 ドラクエ11
マルティナ:キミを助けられて よかった。
もう二度と あの日のような思いは
したくなかったから……。

マルティナ:キミとデルカダールの姫を 救うため
エレノアさまは おとりになった……。
ロウさまはキミに そう おっしゃったはず。
そう……。私こそが エレノアさまに
命を救われた デルカダール王の娘なの……。
16年前……キミを抱いたエレノアさまに
連れられ 私は ユグノア城を脱出したわ。
でも 魔物の集団に追いつめられ……
エレノアさまは 私に キミを預けると
おとりになって 私を逃がしてくれた。
それなのに……!
魔物に見つかり 幼く非力だった私は
逃げる途中で 川に落ち……
キミを…手放してしまった……!
あの後 ロウさまに助けだされたのが
私ではなく せめて キミであったなら……と
何度も 思ったわ。

マルティナ:キミと はぐれた後 私は ロウさまと共に
故郷のデルカダール王国に向かったわ。
お父さまに 助けを求めようと思ってね。
でも お父さまは 私が死んだと決めつけ……
勇者に殺されたのだと 広めていた。
まるで 真実から 人々の目を遠ざけるように。
……ロウさまは
お父さまを そそのかしている者が
背後にいるはずだと おっしゃっていたわ。
お父さまを利用しているのは 誰なのか
真実を 明らかにするため
私とロウさまは 旅に出たのよ。
でも まさか グレイグが来るとは……。
もしも もう一度 襲われたら
次は 逃げきれるかどうか……。

マルティナ:雨が あがったようね。
とりあえず ユグノア城に戻りましょう。
 



グレイグ:やはりな……。
あのようなことで 死ぬとは思わなかったぞ。
悪魔の子よ……。

マルティナ:グレイグ……!


グレイグ:……あの 忌まわしき日より 16年。
姫さま ご健在なりしは
このグレイグ 望外の よろこび……。
しかし なにゆえ 悪魔の子を
かばい立てなさるのです? 姫さまであっても
主命をジャマなさるなら 斬らねばなりませぬ。

マルティナ:グレイグ将軍。あなたの立場は わかります。
ですが 私たちにも やるべきことがある。
どうか 私たちを 見逃してはくれませんか?

グレイグ:……姫さま。我が主君は デルカダール王のみ。
主君の命令が 何よりも優先されるのです。

マルティナ:そう……。相変わらずね グレイグ。
あなたの忠誠心の強さは 誰よりも知ってるわ。
きっと 話しても わかってくれないわね……。

マルティナ:それなら……

グレイグ:おどろきました。なかなかのお手前ですぞ。
16年前は ただの おてんば姫で あられたが
相当な修羅場を くぐり抜けたようですな。

マルティナ:ふざけないで!!
戦いの最中に 相手をほめるなんて
余裕のつもり!?
マルティナ グレイグ
グレイグ:姫さまこそ 私を 甘く見ておられますぞ!
悪魔の子をかばいながら戦うなど 笑止千万!
それで 私の剣をさばけると お思いか!

マルティナ:グレイグ……!

グレイグ:くっ! 姫さま……!

マルティナ:今なら!

マルティナ:主人公! 乗って!
振り落とされないように 気をつけて!

グレイグ:マルティナ姫……。
あなたは いったい……。

 

 

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