「アメリカ合衆国の地方と州」の記事ではアメリカ合衆国全体について紹介しましたが,これから世界史の学習の上で特に重要な州を個別に取り上げて,その州の都市や歴史について説明してきます。
まず今回は,マサチューセッツ州を紹介します。
総論
<アメリカ合衆国におけるマサチューセッツ州の位置>
マサチューセッツ州は,アメリカ合衆国北東部,ニューイングランド地方の代表的な州であり,アメリカの歴史において最重要の州の一つである。
この州は,アメリカ合衆国の形成と独立を主導し,また自由・民主主義の思想や学問・工業をリードした地域であり,合衆国の精神的な故郷としてもみられている。
都市・地名
<マサチューセッツ州拡大図>
代表的な都市・自治体としては,東部・大西洋沿岸のボストンが最も重要で,戦場として知られるレキシントン・コンコードやハーバード大学もボストンの近郊に存在する。
このほか,同じく大西洋沿岸にあるプリマスも世界史では有名な地である。
歴史
マサチューセッツ州は,イギリス13植民地のなかで早くから成立・発展した地域で,北部のニューイングランド地方では最も早く成立した植民地である。
この地域に最初に到来したのはピルグリム・ファーザーズと呼ばれるピューリタンの集団で,彼らが自由を求めて1620年にプリマスに入植してプリマス植民地を建設した。
つづいて,1629年にはマサチューセッツ植民地が建設された。この植民地では,ボストンを中心に貿易と造船業が発達した。また,1636年にハーバード大学が創立され,これはアメリカ合衆国で最古の大学となった。
プリマス植民地とマサチューセッツ植民地はもとは別の植民地だったが,1691年にプリマス植民地はマサチューセッツ植民地に併合され,この結果,プリマスはマサチューセッツ州の一部となった。
この地域は,独立戦争の初期にイギリスとの対立の主な舞台となったことで有名である。
1773年にイギリスが茶法を制定すると,反発した人々によってボストン港でボストン茶会事件が起こった。
そして,1775年には,ボストン近郊のレキシントンおよびコンコードでイギリス軍との衝突が起こり,これがアメリカ独立戦争の始まりとなった。
独立後,19世紀前半頃からマサチューセッツでは貿易や工業が発達し,アメリカ合衆国の産業革命を先導する地域となった。
また,19世紀半ばには,奴隷制をめぐる南北対立のなかで,マサチューセッツは奴隷制廃止論を積極的に主張し,奴隷制を否定する北部の中心的存在になった。
その後,20世紀に入ってからは,工業の中心の地位を失って,現在では人口の面でも経済力の面でもアメリカにおいて上位ではなくなっている。
しかし,高等教育や学問においてはトップレベルで,それを生かしてハイテク産業も発達している。そして何より,独立戦争や南北戦争の際にも示されたように,現在も自由や民主主義の精神を重んじ,アメリカ合衆国の精神面において重要な役割を果たし続けている。