今回はロシアの都市・地名のうち,高校の世界史や大学受験の世界史で出てくるものを,地方・行政区分・地形などとあわせて紹介します。
<ロシア 都市 一覧>
総論
ロシアの領域
ロシアの領域は広大で,特に東西方向はきわめて広く,西はバルト海や黒海,東は太平洋まで広がり,ヨーロッパとアジアにまたがっている。
<ロシアの領域>
ヨーロッパ・ロシアとアジア・ロシア
このようなロシアの領域は,ウラル山脈を境界として,西側はヨーロッパ・ロシア,東側はアジア・ロシアと,大きく区分される。東側のアジア・ロシアはシベリアと呼ばれる領域ともかなり重なっている。
<ヨーロッパ・ロシアとアジア・ロシア>
ロシアの地理を学ぶ際には,まずはこのウラル山脈を基準とした東西の区分によって大まかに把握しておくとよい。
連邦管区
現在のロシアの広域の地方区分としては連邦管区という行政区画が存在する。
しかし,この連邦管区という枠組みは,近年につくられた新しい区分であるうえに,頻繁にその区画・編成が変化することもあって,世界史の学習では非常に使いにくい。
地形による把握
このような事情から,ロシアの都市・地名などの位置は,現在の行政区画よりも,山脈や河川など自然の地形をもとに位置を把握するほうがよい。
<ロシアの地形>
具体的には,まず東西方向については,バルト海と太平洋を西・東の端とし,その両端の内部でウラル山脈・オビ川・イェニセイ川・レナ川などを境界として使って,位置をつかむことが有効である。
そして,南北方向については,北側は全体が北極海に面していてわかりやすいので問題ないとして,南方は黒海・カフカス山脈・カスピ海・ヴォルガ川・アムール川・スタノヴォイ山脈などを目印・標識として使って位置を把握するとよいだろう。
注意・補足
ロシアが実効支配している領域としては,クリミア半島もある。
この記事では,ロシア史に関係することからクリミア半島そのものは地形として紹介するが,ヤルタやセヴァストーポリなどのクリミア半島内に存在する都市・地名については扱わない。
クリミア半島内の都市・地名は,ウクライナの都市・地名の記事で紹介する。
重要度ランクについて
それぞれの地形や都市・地名について,世界史の学習や受験における重要度を★の数で示した。星の数が多いほど重要ということを意味する。
| ★★★ | 基本:高校の定期テストや大学受験の共通テストのレベル |
| ★★ | 標準:一般的な国立大学や私立大学の入試で必要なレベル |
| ★ | 発展:難関大学の入試では必要なレベル |
| | 参考:入試で問われることはまずないだろうレベル |
地形
ロシアやその歴史の理解のうえで有益な,海洋・河川・山脈などの地形を紹介する。
以下,①海洋・湖,②河川,③山脈,④半島・島,の順で挙げていく。
<ロシアの地形>
海洋・湖
<ロシアの地形 海洋・湖>
世界史の学習上は,西方のバルト海・黒海・カスピ海が特に重要である。
以下,北から南,西から東,の順で挙げていく。
北極海 ★
北極を中心に,ユーラシア大陸・北米大陸・グリーンランドなどに囲まれた海。
バルト海 ★★★
ヨーロッパの北部,ユトランド半島とスカンディナビア半島の間の海で,主に東欧と北欧に挟まれた海。
ロシアにとっては,西欧などのヨーロッパ諸国と交流するための主要な海上ルートとなった。
黒海 ★★★
ヨーロッパとアジアの間に位置する内海で,ボスフォラス海峡・ダーダネルス海峡を通じて地中海へとつながっている。
17世紀末以降,ロシアが進出し,南下政策の主要な経路となった。
カスピ海 ★★
東ヨーロッパと西アジア・中央アジアの間に位置する湖で,世界最大の湖。
ロシア・カザフスタン・トルクメニスタン・アゼルバイジャン・イランの境界となっている。
バイカル湖 ★
シベリアの東南部に存在する湖。
オホーツク海 ★
ロシアの東岸とカムチャッカ半島・千島列島・北海道・樺太島に囲まれた海。
ベーリング海
太平洋の北部,シベリア・アラスカ・アリューシャン列島に囲まれた海。
日本海 ★★
ロシア沿海地方・樺太島・日本列島・朝鮮半島に囲まれた海。
河川
<ロシアの地形 河川>
ロシアの河川は,南北方向に流れる大きな川が重要である。
世界史の学習のうえでは,西部のドニエプル川・ヴォルガ川,東部のアムール川・アイグン川・ウスリー川が非常に重要で,他のオビ川・イェニセイ川・レナ川については地理の学習上は重要ではあるものの世界史では滅多に出てこない。
以下,西から順に挙げていく。
ドニエプル川 ★★★
ロシア西部を源とし,ベラルーシ,ウクライナを縦断して黒海へと注ぐ川。
沿岸には現在のウクライナの首都キエフが存在し,9世紀末にルーシたちによって建国されたキエフ公国の中心地となった。
ドン川 ★
ロシア南西部から,黒海のアゾフ海へと流れ込む川。
1670年に起こったステンカ・ラージンの乱は,このドン川流域にいたコサックが中心になった。
ヴォルガ川 ★★★
ロシア北西部に源を発し,東方に流れた後に南下してカスピ海へと注ぐ川。
ロシアは,イヴァン4世の頃から,このヴォルガ川に沿って南東方向に進出し,カザン・ハン国やアストラハン・ハン国を征服して支配領域を拡大した。
オビ川
アルタイ山脈を水源とし,西シベリアを通って北西方向に流れて,北極海に注ぐ川。
イェニセイ川(エニセイ川)
ロシアとシベリアの国境地帯を水源とし,シベリアを通って北方に流れ,北極海に注ぐ川。
レナ川
バイカル湖の西岸に源を発し,北東方面に流れて,北極海に注ぐ川。
アムール川 ★★★
ユーラシア大陸の東端に位置し,ロシア・中国の国境地帯を流れ,間宮海峡(タタール海峡)に注ぐ川。
1858年にロシア帝国と清の間で締結されたアイグン条約によって,この川が両国の国境とされた。
アルグン川 ★★★
アムール川の主な源流の一つで,アムール川の南西方面から流れてきてアムール川へと合流する川。
1689年にロシア帝国と清の間で結ばれたネルチンスク条約では,スタノヴォイ山脈とともにこの川が両国の国境と定められた。
ウスリー川(ウスリー江) ★★★
アムール川の支流で,北方へと流れてアムール川に合流する川。
この川と日本海にはさまれた地域は沿海州と呼ばれ,1860年の露清北京条約によってロシア領とされた。
山脈
<ロシアの地形 山脈>
山脈は国や地方の境界として重要である。
特に,カフカス山脈はロシアの南下政策との関係で,ウラル山脈は領域の境界として,スタノヴォイ山脈は中国との国境の関係で,それぞれ重要である。
ウラル山脈 ★★
ロシア西部を南北方向に走る山脈で,ヨーロッパとアジアの境界をなし,ヨーロッパ・ロシアとアジア・ロシア(シベリア)の境界にもなっている。
世界史では直接言及されることは少ないが,地方の境界として重要。
カフカス山脈(コーカサス山脈) ★★★
黒海とカスピ海の間を,北西-南東方向に走る山脈。
現在のロシアとジョージア・アゼルバイジャンの国境となっている。
アルタイ山脈 ★
シベリア南東部からモンゴル高原へ,北西-南東に走る山脈。
スタノヴォイ山脈(外興安嶺) ★★★
ロシア東部,東シベリアを東西に走る山脈。
1689年にロシアと清の間で締結されたネルチンスク条約で,アルグン川とともに両国の国境とされた。
半島・島
<ロシアの地形 半島・島>
西方ではクリミア半島,東方では樺太島・千島列島など,現在まで続いている国境・領土問題と関係した地形が多い。
クリミア半島(クリム半島) ★★★
現在のウクライナの南部,黒海の北岸から南に突き出た半島。
18世紀後半にロシアが支配下に入れて南下政策の重要な拠点となり,19世紀半ばにはクリミア戦争の舞台にもなった。
20世紀末のソ連の崩壊後はウクライナ領となっていたが,2014年にロシアが占領して一方的に併合を宣言している。
カムチャッカ半島 ★
アジアの東北の端,ロシアの極東部に位置し,南方に伸びる半島。
18世紀前半に,ピョートル1世によって派遣された探検家ベーリングが探検を行った。
樺太島(サハリン島) ★★★
ユーラシア大陸の東岸,北海道の北方に位置する島。
1875年に樺太・千島交換条約によってロシア領となった後,日露戦争後のポーツマス条約で南半分は日本領となったが,第二次世界大戦の末期にソ連が南半分も支配下に入れ,ソ連崩壊後はそのままロシアが支配している。
千島列島(クリル列島) ★★★
カムチャッカ半島の南方から北海道の東方にかけて並んだ列島。
日露通好条約では,歯舞群島・色丹島・国後島・択捉島(いわゆる北方領土)が日本領,得撫島以北がロシア領とされた後,1875年に樺太・千島交換条約によって全島が日本領となったが,第二次世界大戦の末期にソ連が侵攻して北方4島も含めて全島を支配下に入れ,現在もロシアが実効支配を続けている。
その他
シベリア ★★★
ユーラシア大陸の北東部,ウラル山脈から太平洋に広がる地域。
もともと「シベリア」という言葉は,ウラル山脈の東方の地域を漠然と指す用語だったことから,時期や場面によって該当する領域にはかなり幅があるので,注意が必要である。このように範囲があいまいであるため,世界史の学習においても大まかに把握しておくのがよい。
基本的には,シベリア全体はウラル山脈から太平洋にかけての領域を指し,その内部はイェニセイ川を境界として西シベリアと東シベリアに2つに分けるか,またはイェニセイ川とレナ川を境界として西シベリア・中央シベリア・東シベリアの3つに分けられる。
16世紀後半からロシアが進出を開始し,17・18世紀にかけてほぼ支配を確立した。
その後,19世紀後半にはシベリア鉄道が建設され,ロシア革命後には連合国によるシベリア出兵が行われた。
都市・地名
ロシアの都市・地名を,4つの大きな領域に分けたうえで,紹介していく。
領域については,まず大きくウラル山脈を境界にヨーロッパ・ロシアとアジア・ロシアと東西に分けて,さらにヨーロッパ・ロシアを首都圏および北西部と南西部に南北に分け,アジア・ロシアは西シベリアと東シベリアに東西に分ける。
以下,この分け方にしたがって,①首都圏および北西部,②南西部,③西シベリア,④東シベリア,の順番で,それぞれに属する都市・地名を紹介していく。
首都圏および北西部(中央連邦管区・北西連邦管区など)
<ロシア 首都圏および北西部の都市>
まず,ヨーロッパ・ロシアのうちの北部にあたる領域で,モスクワを中心とする首都圏やロシア北西部の地方を取り上げる。現在のロシアの連邦管区でいうと,中央連邦管区・北西連邦管区と,飛び地であるカリーニングラード州が該当する。
ペテルブルク・ノヴゴロド・モスクワなど,歴史のなかで首都が置かれた都市が多く,ロシア史における政治的な中心地となっている。
モスクワ ★★★
ロシア西部の都市で,現在のロシアの首都。
モスクワ大公国の首都として発展し,モスクワ大公国によるロシアの統一の結果としてロシアの首都となった。
18世紀前半にピョートル1世によって首都はペテルブルクへと移されたが,1918年から再びソヴィエト政権・ソ連の首都となり,現在のロシアでも首都となっている。
ペテルブルク(サンクト・ペテルブルク/ペトログラード/レニングラード) ★★★
ロシア北西部の都市で,バルト海のフィンランド湾の沿岸,ネヴァ川の河口部に位置する。
18世紀前半にピョートル1世によって建設されて首都となり,バルト海を通じて西欧とつながる「西欧への窓」としての役割を担った。
第一次世界大戦中にはドイツ風の「ペテルブルク」を嫌ってペトログラードと改称され,ついでロシア革命後には首都がモスクワに移され,ペテルブルクは1924年からレーニンの名をとってレニングラードと改称された。ソ連の崩壊後は,ペテルブルクの名前に復帰している。
ノヴゴロド(大ノヴゴロド) ★★★
ロシア北西部の都市。
9世紀にリューリク率いるルーシと呼ばれるノルマン人たちがここを拠点にノヴゴロド国を建てた。
また,中世ヨーロッパにおける交易の要衝で,ハンザ同盟の在外商館が置かれたことでも知られる。
ティルジット ★
現在のロシアの飛び地となっているカリーニングラード州の都市。
歴史的にはプロイセンの領土で,ナポレオン戦争で,フランスとプロイセン・ロシアとの間でティルジット条約が締結された地として知られる。
南西部(ヴォルガ管区・南部連邦管区・北カフカス連邦管区)
<ロシア 南西部の都市>
ヴォルガ川流域や北カフカスなどの領域。連邦管区でいうと,ヴォルガ管区・南部連邦管区・北カフカス連邦管区に該当する。
モンゴル人が建国したキプチャク・ハン国(ジョチ・ウルス)や,それが分裂して形成された,カザン・ハン国,アストラハン・ハン国の中心的地域。
また,コサックたちが多く存在した地域でもある。
16世紀のイヴァン4世の時代頃からロシアの支配下に入ったが,その後もステンカ・ラージンの乱やプガチョフの乱など,コサックらによる反乱が起こった。
カザン
ヴォルガ川中流沿岸の都市。
キプチャク・ハン国が分裂してできた国の一つ,カザン・ハン国の中心都市だった。
イヴァン4世の時代にロシアの支配下に入った。
ヴォルゴグラード(スターリングラード) ★★★
ヴォルガ川下流沿岸の都市。
かつてはツァリーツィンという名前だったが,1925年にスターリンにちなんでスターリングラードと改称され,第二次世界大戦ではドイツ・ロシア間のスターリングラードの戦いの舞台となった。
スターリン死後の1961年にヴォルゴグラードと改名されたが,近年スターリングラードの名称に復帰することも検討されている。
サライ ★
ヴォルガ川下流沿岸に存在した都市。
モンゴルのキプチャク・ハン国の首都が置かれた(旧サライ)。なお,13世紀後半にはヴォルガ川を少し遡った北方の地に同名で新たな首都が築かれた(新サライ)。
アストラハン
ヴォルガ川下流沿岸の都市。
キプチャク・ハン国が分裂してできた国の一つ,アストラハン・ハン国の中心都市だった。
イヴァン4世の時代にロシアの支配下に入った。
西シベリア(ウラル連邦管区)
<ロシア 西シベリアの都市>
西シベリアと呼ばれる,ウラル山脈とイェニセイ川で囲まれた領域。連邦管区でいうと,ウラル連邦管区が該当する。
世界史で出てくる都市・地名はほとんどないが,キプチャク・ハン国の後継国家の一つであるシビル・ハン国の中心的な領域で,16世紀後半からロシアが進出していった。
シビル
キプチャク・ハン国が分裂してできた国の一つであるシビル・ハン国の中心都市だった。
この都市名あるいは国名であるシビルが,「シベリア」という地名の由来となったとされる。
東シベリア(シベリア連邦管区・極東連邦管区)
<ロシア 東シベリアの都市>
東シベリアと呼ばれる,イェニセイ川から太平洋までの領域。連邦管区でいうと,シベリア連邦管区・極東連邦管区にあたる。
ロシアの極東進出や,ロシア・中国間の国境問題などに関する重要な都市が存在する。
イルクーツク
バイカル湖の西岸の都市。
世界史で直接出てくることは少ないが,シベリアにおける要衝として有名。
キャフタ ★
ロシア東部,バイカル湖の南方に位置する都市。
1727年にロシア帝国と清のキャフタ条約が締結された地として知られる。
ネルチンスク ★
ロシア東部,バイカル湖の東方に位置する都市。
1689年にロシア帝国と清との間でネルチンスク条約が締結された場所として知られる。
ニコライエフスク(ニコラエフスク・ナ・アムーレ) ★
ロシア極東部,アムール川の河口近くの都市。
ロシア革命後のシベリア出兵の際に,日本の兵士や居留民が襲撃されるニコライエフスク事件(尼港事件)が起こったことで知られる。
ウラジヴォストーク(ウラジオストク) ★★★
ロシア極東の沿海州の海港都市で,日本海の沿岸に位置する。
ロシアが露清北京条約で沿海州を清から獲得した後に,極東の主要拠点として建設した。
名前はウラジ(「支配」)とヴォストーク(「東」)という語から成り,「東方を支配する」という意味から命名されており,その名の通りロシアの東方進出の拠点となった。
まとめ
最後に,取り上げた全ての地形と都市・地名をまとめた地図を再掲しておく。
<ロシア 都市 一覧>