ポンド(スターリング・ポンド) | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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新課程の世界史(世界史探究)の教科書・用語集で新たに採用された語句を順に紹介していきます。


今回は,用語集に新しく追加された「ポンド」を紹介します。

現在もイギリスで使われている有名な通貨ですね。



ポンドスターリング・ポンド)は,イギリスの通貨であり,世界の主要通貨の一つである。


前近代(17世紀まで)


イギリスの通貨として知られるポンドは,古代や中世に使用されていた貨幣の重さを表すための単位に由来し,しだいにイギリスの通貨そのものを指すようになった。


ポンドという言葉は,本来は古代ローマで使用されていた「重さ」を意味する言葉で,そこから重さの単位を表すようになり,ローマ帝国支配下に入ったイギリスにも伝わった。


そして,中世のイギリスでは,スターリングと呼ばれる貨幣が使用されていたが,ポンドはその貨幣の重さを示す単位として使用され,このように通貨の単位として使用されているうち,しだいにポンドはイギリスの貨幣そのもののことも指すようになった。


近代(19世紀~20世紀初め)


イギリスが世界の覇権を握った19世紀から20世紀初めに,ポンドの貨幣としての制度は整備され,世界の基軸通貨となった。


イギリスは,1816年にポンドと金の交換を保証する制度を開始し,翌年には金との交換が可能なソブリン金貨を発行したが,これが世界における公的な金本位制の始まりとなった。


ソブリン金貨

<ソブリン金貨>


そして,19世紀半ばから後半には,金との交換保証による高い信頼のうえ,イギリスが世界経済の覇権を握ったこともあって,ポンドは世界の基軸通貨となって世界中で取引され,世界の貿易や金融を支えた。


20世紀


ところが,20世紀の二つの世界大戦を契機にイギリスは打撃を受け,ポンドの地位も衰えていく。


第一次世界大戦の結果,イギリスが戦争で経済的な打撃を受けたことでポンドの信用は衰え,かわって大きく勢力を伸ばしたアメリカの通貨であるドルの地位が上昇した。


つづいて,1929年に世界恐慌が起こった後,1931年にイギリスは金本位制を離脱し,これによってポンドへの信頼はさらに揺らいだ。


そして,第二次世界大戦でイギリスはさらに大きな打撃を受けて,これによってポンドの没落は決定的になり,アメリカのドルが世界の基軸通貨となっていった。


第二次世界大戦後にはブレトン・ウッズ体制のもとでドルを基軸通貨とした固定相場制がとられたが,貿易赤字に苦しんだイギリスは1949年・1967年とポンドを切り下げ,ポンドの価値と信用はますます下がっていった。


現在


こうして,ポンドはかつてのような基軸通貨としての地位は失ったが,それでも現在も世界の主要な通貨の一つとしての地位は維持している。


イギリスは,20世紀後半にECおよびEUに加盟したが,EUの共通通貨であるユーロを導入することは拒んでポンドの使用を維持し,現在までもずっと使用され続けている。


現在,ポンドは世界の外国為替市場において,米ドル・ユーロ・日本円に次いで世界4位の取引量をもつ主要通貨の一つになっており,俗に「殺人通貨」とも呼ばれるように値動きが大きく,投機を目的とした取引で人気であるのとともにリスクも大きいことで知られている。


世界の通貨の流通量ランキング(2022年度)

第二次世界大戦以降,ポンドは米ドルや日本円など主要通貨に対して下落トレンドが長く続いており,近年ではブレグジット,すなわちEU離脱の決定によってさらに下落が起こったが,EU離脱後のこれから,ポンドの地位がさらに下落を続けるのか,あるいは回復が起こるのか,注目される。


英ポンド/米ドルの為替レート 1950~2024


英ポンド/日本円の為替レート 1950~2024