ゴアは,インド西岸に位置する海港都市である。
成立と発展(16世紀初めまで)
ゴアは,インドの西海岸の中部に位置する都市で,インド洋のアラビア海に面している。
この地は,古代から南インドを支配したさまざまな国家の支配下に入ってきたが,その地理的な利便性からしだいに貿易港として発達するようになり,特に15世紀からは主要な海港都市へと発展して海上貿易が行われた。
ポルトガルの支配(16世紀初め~1961年)
そうしたなか,1510年,アジア進出を進めるポルトガルはゴアを攻めて陥落させ,ここを拠点とした。
以後,ポルトガルによって西欧風の都市の開発が行われ,この都市はアジアにおけるポルトガルの貿易と布教の中心になった。フランシスコ・ザビエルやマテオ・リッチなどのイエズス会宣教師もここに滞在した後に,日本や中国に向かっている。
16世紀にポルトガルがヨーロッパとアジアを結んで世界的な貿易を展開するなかで,ゴアは大いに繁栄して一大都市へと発展し,人口が急増し,多数の教会や修道院が建設され,「黄金のゴア」とまで呼ばれるようになった。
ところが,17世紀になると,疫病が繰り返し発生したことや,イギリスやオランダの進出で海上貿易に打撃を受けたこともあって,ゴアは急速に衰えていった。
18世紀半ば以降,インドの大部分はイギリスの植民地支配下に入るが,以後もゴアはポルトガル領にとどまった。この頃,従来の市域(旧ゴアと呼ばれる)は放棄されて新たな市域(新ゴア)へと移転し,再開発が進められてゴアは近代的都市へと姿を変えていった。
インド領(1961年~)
第二次世界大戦後にインドがイギリスから独立した後,インドはポルトガルにゴアの返還を求めたもののポルトガルはこれを拒否し,インドではゴアの回復を求める運動が高まっていく。そして,ついに1961年,インド政府は武力によってゴアを接収して併合した。
こうしてゴアはインド共和国の一部となり,政府による直轄管理の期間を経て,1987年にはゴア州としてインドの一州となった。
現在でも,ゴアは海港都市として貿易が行われており,鉄鉱石やマンガンなどの資源が輸出され,インド内でも経済的に発展した地域となっている。
また,かつての市域である旧ゴアには,ポルトガル時代の教会や修道院が多く残っており,これらは世界遺産にも認定され,多くの観光客を集めている。