新課程の世界史(世界史探究)で教科書・用語集に新たに掲載された用語・語句 | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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現在の高校2年生以下では,すでに世界史を含む各科目の新課程が実施されていますが,来年の2025年度からは入試でも新課程が適用されます。


今日の記事では,世界史(世界史探究)の教科書と,それをベースに制作されている世界史用語集(山川出版社)で,新たに掲載された主な語句をジャンル別に紹介してみます。今回は,特に近年の新しい情勢やトレンドが反映された語句を取り上げたいと思います。


なお,語句によっては,世界史用語集に収録されるより前から一部の教科書には掲載されていたものもあるのですが,ここではわかりやすさを重視して用語集を基準に新たに掲載されたかどうかを決めています。


国際関係

  • NATO の東方拡大
  • クリミア半島併合《ロシア》
  • ロシア、ウクライナ全土へ侵攻
  • イギリスのEU離脱(ブレグジット)

2022年にロシアがウクライナに侵攻して現在も戦闘が続いていますが,この事件が「ロシア、ウクライナ全土へ侵攻」として早くも用語集に掲載されました。


これに関連するトピックとして,「NATOの東方拡大」も掲載されています。20世紀末からNATOが東方へ拡大していき,ウクライナもNATO加盟を求めていたが,これにロシアが反発したという文脈です。


2014年のロシアによるクリミア併合は,以前から教科書の多くには掲載されながらも用語集の見出し語句になるには至っていませんでしたが,今回は「クリミア半島併合《ロシア》」という見出し語句として明確に掲載されました。


ちなみに,新規掲載というわけではありませんが,原発事故で有名な「チェルノブイリ原子力発電所事故」が,「チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故」というように,ウクライナ読みの「チョルノービリ」を先,ロシア読みの「チェルノブイリ」を後にして併記するかたちに変わっています。ウクライナの現地読みを尊重する流れの一環だと思われますが,それではウクライナの首都の「キエフ」(ロシア読み)も「キーウ」(ウクライナ読み)に変わっているかと思って確認すると,こちらは「キエフ」のままになっていますね。


このほか,イギリスにおいて国を二分する議論になった末に実現された,「イギリスのEU離脱(ブレグジット)」が見出し語句として掲載されました。


感染症関係

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
  • コレラ
  • スペイン風邪

2020年から流行して世界的パンデミックとなったコロナウイルスが,早速「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」として見出し語句に採用されました。


ちなみに,各教科書では,このコロナウイルスを単発の事件として紹介するというよりも,それをきっかけにしながら世界史上の感染症とその原因・影響について学習してもらおうという方向で記述されています。


このように感染症が注目されたこともあって,これまではいくつかの教科書には載っていても用語集の見出し語句としては扱われていなかった,「コレラ」や「スペイン風邪」も見出し語句として取り上げられました。


テクノロジー関係

  • 知識基盤社会
  • 人工知能(AI)
  • iPS 細胞(人工多能性幹細胞)

コンピュータやインターネットなどの情報通信技術の急速な発達を背景に,情報や知識が重要な基盤となった社会を意味する「知識基盤社会」という語が追加されました。


そして,最近急速に注目を集めた「人口知能(AI)」もついに世界史用語集に登場。人口知能のメリットとともにそのリスクなどにも触れられています。あと,用語集の見出し語句にはありませんが,「VR(仮想現実)」などを掲載している教科書もありました。


医学では,「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」がようやく見出し語句として採用されました。iPS細胞が広く知られるようになってからずいぶん時間がたっている気もしますが,こういった専門的な科学用語は教科書に掲載されるまでに長くかかる傾向があるように思います。


環境・社会関係

  • 持続可能な開発目標(SDGs)
  • 再生可能エネルギー
  • LGBT
  • フェアトレード

環境や社会に関するテーマでは,「持続可能な開発目標(SDGs)」が新規に掲載されました。教科書によってはSDGsをテーマとして多くのコラムを設けるなど大きく扱っているものもあります。


SDGsの項目の一つでもありますが,エネルギーの問題では「再生可能エネルギー」が新しく掲載されました。


社会面では,ジェンダーなどの多様性(ダイバーシティ)への意識の高まりを反映して,「LGBT」が用語集に登場しています。


他には,グローバル化が進む一方で格差の拡大が進行していることを背景に,途上国の生産者などにも適切な報酬・利益を支払う「フェアトレード」も語句として新たに採用されています。


最近の政治家など

  • トランプ
  • バイデン
  • 習近平
  • 一帯一路
  • 金正恩
  • 蔡英文

現代の政治家は,改訂の度に近年の主な人物が追加されていくのですが,今回新たに掲載されたのはアメリカ・中国・北朝鮮・台湾の首脳くらいで,ずいぶん国が限定されている感があります。


アメリカは,前大統領の「トランプ」と現大統領の「バイデン」が採用されていて,妥当に思えますが,迫りつつある次の大統領選がどうなるのかが気になるところです。


中国については,「習近平」は前からいくつかの教科書には出ていましたが,今回から用語集の見出し語句としても登場。彼の推進する,アジアとヨーロッパの広い地域を経済的に結ぶプロジェクト「一帯一路」も掲載されました。


やや意外なのが,他の先進国首脳の追加掲載がないこと。イギリスのジョンソン(他の用語の説明文中にはありますが),フランスのマクロン,ドイツのメルケル・ショルツなどはいずれも掲載はありませんでした。米中2大国の圧倒的なプレゼンスを反映しているのかもしれません。


それ以外では,国際政治上の注目・関心が高まっているからと思われますが,核保有などで問題になっている北朝鮮から「金正恩」,中国との間で緊張が高まっている台湾から「蔡英文」が新たに収録されています。