カプクル(スルタンの奴隷) | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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新課程の世界史(世界史探究)の教科書・用語集で新たに採用された語句を順に紹介していきます。


今回は,「カプクル(「スルタンの奴隷」)」を紹介します。(※世界史用語集では「スルタンの奴隷」の方が先に記載されていて,カプクルがカッコ内に記述されています)


カプクルスルタンの奴隷)は,オスマン帝国において,スルタンに仕えた直属の軍人・官僚である。


カプクルとは


オスマン帝国では,14世紀後半頃から,帝国の拡大・発展も背景に,君主であるスルタンに直接仕える有能な軍人や官僚などの人材が集められるようになった。このようにして集められ,オスマン帝国のスルタンに直属した軍人・官僚らを,総称してカプクルと呼ぶ。


「カプ」はトルコ語で「門」,転じて「(有力者などの)家」を意味し,「クル」は「奴隷」の意味で,そこから「カプクル」は「君主(スルタン)に隷属する者」を指すようになった。このため,日本語では「スルタンの奴隷」または「王の奴隷」などと訳されている。


成り立ち


このようなカプクルの人材は,デヴシルメ制デウシルメ制)と呼ばれるオスマン帝国の独特の制度によって編成された。


デヴシルメ制は,14世紀後半,第3代君主のムラト1世の時代に始まったとみられ,君主中心の強力な中央集権体制を構築するために導入されたと考えられている。


この制度は,主にバルカン半島のキリスト教徒のなかから,身体・容姿などの優れた少年を強制的に徴発する仕組みで,徴発した少年たちはイスラーム教徒に改宗させて教育や訓練を施したうえで,スルタンに直属する軍人や官僚に育成した。


デヴシルメによる少年の徴発

<デヴシルメによる少年の徴発>


役割


デヴシルメ制で集められた者の多くは,直属の兵士となって常備軍を構成した。この制度によって編成された部隊としては,スルタン直属の歩兵部隊イェニチェリが有名で,オスマン帝国の軍事力の中核となって帝国の発展を支えた。


また,徴発された少年のうち,一部の優秀な者は宮廷に迎えられ,エリートとしての教育を受けたうえで官僚になった。彼らは中央や地方の要職につき,さらには宰相や大宰相の地位について国政を指導する者もいた。


こうして,カプクルは,スルタンを頂点とした中央集権的な軍事および行政を支え,オスマン帝国の中枢を占めるエリート軍人・官僚となった。