東大世界史の1987年第2問(C)の問題・解答・解説です。
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問題
7世紀にアラビア半島でおこったイスラームは,西アジアと北アフリカを中心とする広大な地域にひろまったが,その初期の過程で,各地のキリスト教徒・ユダヤ教徒・ゾロアスター教徒などがイスラームの支配を進んで受けいれるということがしばしば見られた。
その理由と思われるところを4行(120字)以内で述べよ。
解答
解答例
「イスラームが異教徒に対して税の支払いを条件として信仰の維持を認め生命・財産の安全を保障するなど寛容な姿勢をとっていたことや,ビザンツ帝国とササン朝の支配や抗争に対して住民が不満をもっておりイスラームが解放者として迎えられたことなどによる。」
解答のポイント
イスラームの異教徒への対応は最も重要なのでしっかり書く。どのような姿勢であったかにくわえ,具体的に支配下でどのようなことが認められていたかまで書きたい。
旧支配者であったビザンツとササン朝の支配・抗争に対する住民の反発を背景に,イスラームが解放者として受け止められたという理由もなるべく書けるとよい。
解説
イスラームの征服活動
イスラーム勢力は,正統カリフ時代からアラビア半島外へと積極的な征服活動を展開し,西方ではビザンツ帝国を破ってシリア・エジプトを,東方ではササン朝を破ってイラク・イラクを征服した。
このように急速に支配地域を拡大した背景には,新支配者となったイスラームと,旧支配者であったビザンツ・ササン朝の,現地の住民に対する対応が関係していたと考えられる。
<イスラームの支配を異教徒が受け入れた理由>
イスラームの異教徒への対応
イスラームは征服地の異教徒に対して柔軟で比較的寛容な対応をとったが,これがイスラームの支配を異教徒が受け入れた最大の理由だといえる。
イスラームは,異教徒が税を納めれば,信仰の維持を容認し身体や財産の安全も保障した。特にユダヤ教徒とキリスト教徒は「啓典の民」として保護されたが,ゾロアスターもほぼ同様に扱われた。このため,異教徒はイスラームとむやみに戦うことなく,和約を結んで支配に従うことが多かった。
ビザンツ帝国とササン朝への反発
もう一つ,異教徒がイスラームを受け入れた理由としては,現地の住民の旧支配者への反発もあったと考えられる。
これらの地域の住民は,ビザンツ帝国やササン朝による支配や抗争に苦しみ不満をもっていた。そのためイスラームはそこからの解放者として迎えられたという側面もあった。