アイドルものを考えたのでAIに書いて貰いました

 

 

# セカンドプレイス~2位たちの物語~

## プロローグ

「全員、2位なんですね」

プロデューサーの田中は、
五人の少女の履歴書を並べて呟いた。

動画投稿サイト人気2位のボカロP・葵。
全米ダンスコンペティション2位の舞。
全日本のど自慢コンテスト2位の響。
全国ラップバトル2位のリズ。
欧州音楽コンテスト・ヴァイオリン部門2位のアンナ。

どれも素晴らしい実績のはずなのに、
五人とも履歴書の写真で笑っていなかった。

---

## 第一章:バラバラの心

初めての合同練習は、最悪だった。

「ちょ、ちょっと待って」
葵が震える声で言った。
「み、みんなの前で曲を発表するなんて、無理……」

「無理って、あなたプロデューサーなんでしょ?」
舞が腕を組んだ。
身長148センチの彼女は、誰よりも気が強かった。
「私のダンスに合う曲じゃないと困るんだけど。
全米2位の私が踊れないような曲なんて、
意味ないから」

葵の顔が青ざめた。

「あの……私も、動画再生数なら……」

「画面越しでしょ?」舞が冷たく言い放った。
「人前に出られない人に、
プロデュース任せられないんだけど」

「ちょ、ちょっと言い過ぎじゃ……」
響が小さな声で言いかけた。
「私、歌うとき、マ、マスクつけても……」

「は? アイドルがマスク?」
リズが鼻で笑った。
「顔に自信ないなら、アイドルやめろよ。
歌なんて、俺のラップでカバーできるし」

響の目に涙が浮かんだ。

「カバーって……
私、全日本2位なんだけど……」

「2位ね。で、1位は誰だったの?」
リズが挑発的に聞いた。
「俺はラップバトルで1位の奴に1票差で負けた。
お前は?」

「それは……」

「大差で負けたんだろ? 
実力差があるって認めろよ」

「あんたに言われたくない! 
学校でいじめられてるくせに!」

響が思わず叫んだ。練習室が凍りついた。

リズの表情が歪んだ。

「……調べたんだ。俺のこと」

「ご、ごめん、私……」

「うるせぇ。お前みたいな偽善者、
大っ嫌いなんだよ」

リズが立ち上がった瞬間、アンナが割って入った。

「ヤメテ! ケンカ、ダメ!」

「どけよ」

「ドカナイ!」
アンナが必死に腕を広げた。
「ワタシ、ニホン、キタ。
ミンナト、イッショ、ヤリタイ!」

「片言の日本語で偉そうに」
舞が吐き捨てた。
「あんた、日本のこと何も知らないくせに、
なんでここにいるの? 
ヨーロッパで活動すればよかったじゃん」

アンナの目が大きく見開かれた。

「ワタシ……ワタシ……」

言葉が出てこない。
伝えたいことが、伝えられない。
アンナは唇を噛んで、俯いた。

「最低」
葵が震える声で言った。
「み、みんな最低……」

「あんたが一番最低だよ」
舞が言い返した。
「人前に出られないくせに、
アイドルになろうなんて。舐めてるの?」

「な、舐めてない! 
私だって……私だって頑張ってるのに!」

葵が初めて声を荒げた。

「頑張ってる? じゃあなんで、
今も手が震えてるの?」

「う……うるさい……」

「私、あんたみたいな弱い人と一緒にやりたくない」

舞がそう言い放った瞬間、葵は練習室を飛び出した。

「お、おい!」
リズが慌てて追いかけようとしたが、
足が動かなかった。

響は泣きながら携帯を見ていた。
きっと、自分の顔を確認している。

アンナは壁に寄りかかって、小さく震えていた。

舞は一人、鏡の前で腕を組んでいた。
でも、その目は潤んでいた。

初日の練習は、一時間で崩壊した。

---

## 第一章の二:それぞれの帰り道

葵は事務所の階段で座り込んでいた。
涙が止まらなかった。

「やっぱり……私には無理なんだ……」

舞は一人で練習室に残り、
鏡に映る自分を睨んでいた。

「なんで……なんで私、あんなこと言ったんだ……」

響は電車の中で、窓に映る自分の顔を見ていた。

「私、ひどいこと言っちゃった……でも、でも……」

リズは公園のベンチで、空を見上げていた。

「調べられてた……そりゃそうか。
有名人なんだから……クソ」

アンナは辞書を抱きしめて、涙を流していた。

「ニホンゴ……モット、ベンキョウ、シナキャ……」

五人とも、その夜は眠れなかった。

翌日、プロデューサーの田中が五人を集めた。

「解散も考えてる」

重い言葉だった。

「でも、一週間だけ待つ。
もう一度、やり直せるかどうか。
自分たちで決めてくれ」

誰も、返事ができなかった。

---

## 第二章:それぞれの理由

葵は夜、一人で曲を作りながら涙を流していた。
画面の向こうなら何でもできる。
でも人前に出ると、心臓が爆発しそうになる。

「また2位だ……
1位の人は、きっと堂々としてるんだろうな」

舞は鏡の前で何度も何度もジャンプした。
どれだけ跳んでも、身長は伸びない。
全米大会で1位の子は、170センチあった。

「足りないのは、技術じゃない。
この身長なんだ……」

響は自撮り写真を何枚も撮っては削除していた。
声には自信がある。でも、顔は……。

「かわいい子が1位で、私は2位。いつもそう」

リズは学校の屋上で空に向かってラップを刻んだ。
教室では誰も聞いてくれない。
いや、聞こえないふりをされる。

「ステージの上だけ、俺は強くなれる。
でも降りたら、また……」

アンナは辞書を抱えて日本語を勉強していた。
ヴァイオリンでは伝えられないことがある。
言葉が、足りない。

「日本デ、1位ニ、ナリタイ……」

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## 第三章:はじめての理解

二週間後、葵が倒れた。

過呼吸だった。
デビューライブのリハーサルで、
客席を見た瞬間、呼吸ができなくなった。

「……ごめん」
舞が小さく言った。
「私、あんたのこと、弱いって思ってた」

葵が驚いて顔を上げると、
舞は珍しく目を逸らしていた。

「でも違った。あんた、めちゃくちゃ強いよ。
こんなに怖いのに、ここまで来たんだから」

「舞ちゃん……」

「私さ、身長のことでずっと悩んでた。
でも、あんたの曲聴いてたら気づいたんだ。
大切なのは、見た目の大きさじゃなくて、
伝えたいものの大きさなんだって」

響がマスクを外した。

「私も、逃げるのやめる。歌で勝負する」

リズが壁を蹴った。

「……悪かった。
お前ら、マジで才能あるわ。俺が一番ダサかった」

アンナが片言の日本語で言った。

「ミンナ、キレイ。ココロ、キレイ。
ワタシ、ウレシイ」

その日から、五人は変わった。

---

## 第四章:セカンドプレイスの誕生

葵は舞のために、力強いビートの曲を作った。
舞は葵が舞台に立ちやすいよう、
視線を集めるダンスで注目を引いた。

響は自分の歌声に自信を持ち、顔を上げて歌った。
するとファンが言った。
「笑顔が最高です」と。

リズは学校でいじめられても、
仲間のために言葉を紡いだ。
弱さを認めたとき、ラップは本物になった。

アンナは片言の日本語で、一生懸命MCをした。
その姿が、多くの人の心を打った。

デビューシングル「Second Place」は、
オリコン初登場3位。

「また2位じゃない!」

五人は笑った。もう、2位が怖くなかった。

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## 第五章:武道館へ

一年後。

「日本武道館公演、決定しました」

プロデューサーの言葉に、五人は抱き合って泣いた。

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ライブ当日の朝。

楽屋で、葵は手が震えていた。

「大丈夫?」舞が隣に座った。

「う、ううん……やっぱり怖い」

「私もだよ」
舞が小さく笑った。
「身長148センチが、武道館のステージに立つんだよ。
ちゃんと見えるかな」

「見えるよ。誰よりも」

葵が微笑んだ。舞も笑った。

響は鏡の前で、何度も髪を直していた。

「まだ、顔、気になる?」
リズが声をかけた。

「うん……でも」
響が鏡の中の自分に微笑みかけた。
「今は、歌う自分の顔が好きになれた」

「かっけぇじゃん」

リズが拳を突き出した。響も拳を合わせた。

アンナは窓の外を見ていた。

「緊張、シテル?」葵が聞いた。

「ウン。デモ、ウレシイ。
ミンナト、イッショ、ココマデ、コレタ」

「私たちもだよ」

五人が円陣を組んだ。

「あの日のこと、覚えてる?」
舞が言った。

「忘れるわけないじゃん。最悪だった」
リズが笑った。

「私、泣いて逃げちゃった」
葵が照れくさそうに言った。

「私、みんなに酷いこと言った」
響が俯いた。

「ミンナ、ケンカ、シタ」
アンナが頷いた。

「でも」
舞が四人を見渡した。
「あの日があったから、今がある」

「そうだね」

五人は手を重ねた。

スタッフの声が聞こえた。

「セカンドプレイスの皆さん、
スタンバイお願いします!」

五人は顔を見合わせた。

葵の手は、まだ少し震えていた。
でも、もう一人じゃない。

舞は背伸びをした。小さな体でも、大丈夫。

響は深呼吸をした。顔じゃない、声で勝負する。

リズは拳を握った。弱さを知ったから、強くなれた。

アンナはヴァイオリンを抱きしめた。
言葉が足りなくても、音楽がある。

「行こう」

葵が言った。
誰よりも怖がりだった葵が、先頭を歩き出した。

舞が続いた。響が続いた。
リズが続いた。アンナが続いた。

廊下を進むにつれて、
会場の歓声が大きくなっていく。

一万人の声が、五人を呼んでいた。

ステージ袖に立った瞬間、葵が振り返った。

「みんな、ありがとう」

「こっちこそ」舞が笑った。

「最高のメンバーだよ」響が涙を浮かべた。

「お前らマジ、最強」リズが親指を立てた。

「ダイスキ」アンナが日本語で言った。

照明が変わった。

オープニング曲のイントロが流れ始めた。

「じゃあ、行こうか」

葵が一歩、踏み出した。

ステージの光が、五人を包み込んだ。

一万人の歓声が、雷鳴のように響いた。

2位だった五人が、今、武道館のステージに立つ。

**これが、私たちの1位だ。**

五人は、光の中へと歩き出した。
 

自分が夢で見たものをあらすじにして

AIに書いて貰いました

 

# 才能の種子

## 一

国立科学技術高等学校
――通称「科技高」は、全国から選ばれた
才能ある生徒たちが集う場所だった。
十五歳にしてプログラミングコンテストで
世界大会に出場する者、
企業から特許取得のオファーを受ける者。
廊下ですれ違う生徒たちは
皆、何かしらの輝きを纏っていた。

僕、柳田蒼太は、そんな環境の中でただ一人、
何の成果も出せずにいた。

「また駄目だったのか」

放課後の発明工房で、
僕は三度目の試作品を前に項垂れていた。
自動調理補助ロボット。
構想は完璧だったはずなのに、
実際に動かしてみると制御系統が暴走し、
キッチンを粉まみれにしただけだった。

「蒼太、まだやってんの?」

振り返ると親友の田崎結人が
呆れたような顔で立っていた。
結人は一年生の時から
大手電機メーカーに目をつけられている天才で、
すでに二つの特許を持っている。

「ああ。でもまた失敗だ」

「見せてみろよ」

結人は僕の設計図を覗き込み、
すぐに首を横に振った。

「お前さ、いつも同じミスしてるよな」

「え?」

「完璧を目指しすぎなんだよ。
最初から全部盛りにしようとするから、
どこかで破綻する」

結人は設計図の端に、簡単なスケッチを描いた。

「まずは一つの機能だけに絞れ。
お前が本当に解決したい問題は何だ? 
それだけに集中しろ。
完璧な一歩より、確実な一歩だ」

その言葉が、何かを解き放った。

## 二

翌日から僕は結人の言葉を胸に取り組み始めた。
自動調理ロボットではなく、
「野菜の皮を均一に剥く」
という一点だけに特化した小型デバイス。
シンプルな機構、
最小限のセンサー、確実な動作。

一週間後、試作品が完成した。
じゃがいもの皮が、まるで職人が
剥いたかのように薄く、均一に剥けていく。

「できた...」

手が震えた。初めて、
自分の発明が「機能した」瞬間だった。

その小さな成功が、次の発明への扉を開いた。
野菜カッターの原理を応用して、
書類を正確にシュレッダーする小型装置。
そこから得た制御技術で、
視覚障害者向けの点字自動翻訳機。
一つの成功が次の種になり、
アイデアが溢れ出した。

二ヶ月後、僕の発明は学校の展示会で注目を集めた。
三ヶ月後には地元の中小企業から製品化の相談が来た。
半年後、
僕は学校で最も忙しい生徒の一人になっていた。

## 三

「柳田、また企業から見学の依頼が来てるぞ」

担任の先生が苦笑しながら書類を差し出した。
一年前には想像もできなかった光景だ。

「蒼太、調子乗ってるんじゃないの?」

工房で作業していると、
結人が冷やかすように声をかけてきた。

「お前のせいだろ」

「俺のおかげ、だろ?」

結人は笑いながら、自分の作業台に向かった。
彼は相変わらず天才で、
僕なんかよりずっと先を行っている。
でも不思議と焦りはなかった。

「なあ、結人」

「ん?」

「あの時、なんで俺にあんなこと言ったんだ?」

結人は手を止めて、少し考えた。

「お前、いつも完璧主義で、
それが足枷になってるのが見えてたから。
でもな、お前には一つ一つを確実にこなす

丁寧さがある。
それって、実は俺にはない才能なんだよ」

「そうか?」

「ああ。俺は発想は早いけど、詰めが甘い。
お前は逆。
だから、お前が自分のペースを見つければ、
絶対に化けると思ってた」

結人は照れくさそうに頭を掻いた。

「まあ、予想以上に化けたけどな」

僕は笑った。
確かに、今の自分は一年前とは別人だ。
でも同時に、一年前の自分がいなければ、

今の自分もない。

完璧を目指して失敗し続けた日々も、
無駄じゃなかった。
あの時積み重ねた知識と経験が、
今、確実な一歩として花開いている。

工房の窓から夕日が差し込む。
結人と並んで作業をしながら、僕は思った。

才能は最初から輝くものじゃない。
正しい水と光を与えられて、
初めて芽吹く種子のようなものだ。

そして僕の種子に水を与えてくれたのは、
隣で黙々とハンダ付けをしている、
この不器用な親友だった。

「なあ、結人」

「今度は何だよ」

「ありがとな」

「...急に気持ち悪いこと言うな」

でも、結人は少しだけ笑っていた。

窓の外では、
同じように何かに打ち込む生徒たちの姿が見える。
この学校には才能が溢れている。
でも今なら分かる。
才能とは、誰かが気づき、育て、
花開かせるものなのだと。

僕の発明家人生は、ここから始まる。

確実な一歩を、これからも積み重ねていこう。

【終】
 

 

 

「オクタマドン」の完結編です

 

 

 

# オクタマドンの真実

三流ゴシップ誌「週刊ミステリアス」の記者、
桐島健二は、編集部の片隅で地図を広げていた。
赤いマーカーで引かれた線が、
奥多摩から都心へと伸びている。

「次は光が丘パークタウンだ」

桐島は確信していた。
謎の怪獣「オクタマドン」の
目撃情報を追い続けて三週間。
誰もが馬鹿にする中、
彼だけがその出現パターンを掴んだのだ。

光が丘に到着した桐島は、
マンション群の間を駆け回り、公園を調べ、
住民に聞き込みを続けた。
だが、彼の熱心な取材は予想外の結果を生んだ。
翌日、光が丘には大手テレビ局のクルーや
週刊誌の記者たちが押し寄せていた。

「桐島さん、今回も怪獣は出ますか?」
「オクタマドンの特徴を教えてください!」

いつの間にか、桐島は「怪獣記者」として
有名人になっていた。
ネットでは彼の予測が拡散され、
光が丘には野次馬が続々と集まってきた。

事態は思わぬ方向へ発展した。
ずっと懐疑的だった政府も、
話題の大きさと米軍からの問い合わせに
動かざるを得なくなった。
陸上自衛隊の車両が光が丘に配備され、
物々しい雰囲気が漂う。

「まさか、本当に自衛隊まで来るとは…」

桐島は胸を高鳴らせながら、
マンションの屋上で双眼鏡を構えた。

午後三時、四時、五時――。時間は過ぎていく。
何も起こらない。群衆はざわめき始めた。

「やっぱりデマじゃないか」
「時間の無駄だった」

落胆の空気が広がり始めた夕方六時過ぎ。

突然、西日を受けたマンションの壁に
巨大な影が映し出された。
四足歩行の獣のような、
しかし見たこともない奇妙なシルエット。
同時に、低く不気味な音が響き渡る。

「グォォォォン…」

「いた!」「怪獣だ!」

群衆が色めき立つ。
自衛隊は即座に赤外線暗視装置を向けた。

「……反応なし。何もいません」

隊員の冷静な報告が無線で流れる。
だが、確かに影は見えている。音も聞こえる。

日が完全に沈むと、シルエットは消えた。

「やはり幻覚だったのか」
「夕日の錯覚だよ」

多くの人が肩を落とした。
しかし、光が丘の住民たちは諦めなかった。
数十人が懐中電灯を手に、
マンション群の間を照らし始めた。

その時だった。

闇の中に、再び怪獣のシルエットが浮かび上がった。
複数の光が交差する場所に、巨大な影。
そして、妖しく光る二つの目。

「いるんだ! オクタマドンは本当にいるんだ!」

マンション屋上の桐島が叫んだ。
彼の声は興奮で震えていた。
三週間追い続けた怪獣が、今、目の前にいる。

「俺が証明してやる! 俺が怪獣を退治してやる!」

桐島は屋上のフェンスを越えた。
怪獣に向かって、勢いよく跳んだ。

だが――そこには何もなかった。

桐島の体は空を切り、
七階建てマンションの高さから地面へと落下した。
悲鳴が上がる。救急車のサイレンが響く。

「オクタマドン…は…」

桐島の最期の言葉は、誰にも聞こえなかった。

---

翌日の朝刊各紙は、一面で報じた。

『怪獣騒動、すべて自然現象と判明 政府が徹底検証』

科学者チームによる詳細な分析結果が発表された。
マンションの壁に映った影は夕日の角度による錯視。
咆哮のような音は近隣工事現場の重機のエンジン音。
夜の影は複数の懐中電灯の光が重なって生じた影絵効果。
光る目は、偶然その位置にあった自転車の反射板だった。

国会では野党が政府を追及した。

「何の根拠もない怪獣騒動で、
なぜ自衛隊を災害出動させたのか」

「税金の無駄遣いではないか」

防衛大臣は苦しい答弁を繰り返した。

「国民の安全を第一に考え…
えー、慎重に判断した結果であり…」

テレビのワイドショーは連日、
「オクタマドン騒動」を取り上げた。
心理学者は集団ヒステリーについて解説し、
評論家たちはSNS時代のデマの拡散について議論した。

そして、新聞の片隅に小さな記事があった。

『怪獣騒動の桐島記者、転落死 
光が丘マンション屋上から』

記事は三段組みの小さなもので、
ほとんどの人が気づかなかった。

「週刊ミステリアス」編集部では、
若手記者が桐島のデスクを片付けていた。
引き出しから出てきたのは、
赤いマーカーで書き込まれた地図と、
びっしりとメモが書かれたノート。

最後のページには、こう記されていた。

『オクタマドンは光を恐れる。
だから誰も見たことがない。だが確かに存在する。
影でしか姿を現さない怪獣
――それがオクタマドンの正体だ』

若手記者はそのページを破り捨て、
ノートをゴミ箱に放り込んだ。

「可哀想に。桐島さん、最後まで信じてたんだな」

窓の外では、秋の夕日が傾き始めていた。
編集部の壁に、大きな影が映る。

それが一瞬、何かの形に見えたような気がして、
若手記者は首を振った。

「……疲れてるな、俺も」

誰もいない編集部に、どこからか低い音が響いた。

グォォォォン――。

それは、隣のビルの空調設備の音だった。
きっと、そうに違いなかった。

「オクタマドン」の続編です

短編で毎回 AIに指示しているので

微妙に前の話と重複したり

細部が変わったりしています

課金して使えば続けて長く書いて

章ごとに切ればいいんでしょうけど

いかんせん無料で使っているので仕方ないですね 苦笑

 

 

# オクタマドンの影

## 第一章 噂の怪獣

三流ゴシップ誌「週刊ミステリアス」の記者、
桐島健二は編集長に呼ばれた日のことを
今でも鮮明に覚えている。

「桐島、奥多摩に怪獣が出るらしいぞ。行ってこい」

編集長の言葉に、桐島は内心でため息をついた。
UFO、心霊写真、都市伝説
——これまで何度も根拠のない噂を追いかけては、
空振りに終わってきた。今回もどうせそうだろう。

だが、仕事は仕事だ。
桐島は取材用のカメラと録音機を持って、
奥多摩へと向かった。

地元の住民への聞き込みは、
予想通り曖昧なものばかりだった。
「夜に奇妙な鳴き声を聞いた」
「湖で大きな影を見た気がする」
——誰もはっきりとした証拠は持っていない。

半信半疑のまま、桐島は奥多摩湖の湖畔に立った。
夕暮れ時、水面は静かに波打っている。
帰ろうかと思った、その時だった。

湖の中央付近で、水面が盛り上がった。

何か巨大なものが水中を動いている。
桐島は息を呑んだ。
暗い水の中に、確かに巨大な影が見えた。
そして——低く、地を這うような咆哮が湖面を震わせた。

「まさか……」

桐島の手が震えた。
カメラのシャッターを切ったが、
暗闇の中、影はすでに消えていた。

## 第二章 足跡

その夜、桐島は興奮して眠れなかった。

翌朝、彼は地元のネット掲示板を片っ端から調べた。
すると、驚くべき情報が見つかった。
奥多摩湖周辺の道路に、
巨大な三本指の足跡のような
くぼみが発見されたというのだ。

投稿された写真を見て、桐島の心臓が高鳴った。
アスファルトに刻まれた痕跡は、
明らかに人工物ではない。
何か重量のある生物が歩いた跡
——そうとしか思えなかった。

「オクタマドン……」

いつしか桐島は、この未確認生物の虜になっていた。
毎晩のように奥多摩の情報を検索し、
週末には現地に通った。
編集長からは「早く記事にしろ」と急かされたが、

桐島は確たる証拠を掴むまで
記事にするつもりはなかった。

それは記者としての矜持だった。

## 第三章 横田基地の爆発

ある日の夕方、桐島は自宅でニュースを見ていた。

「本日未明、
米軍横田基地で原因不明の爆発事故が発生しました。
けが人はいないものの、基地の一部が破損しており、
米軍は現在原因を調査中です」

画面には、規制線が張られた基地の遠景が映っている。
桐島の記者魂に火がついた。
これは何かある
——そう直感した彼は、
すぐにカメラを持って横田基地へと向かった。

当然ながら、基地内には入れない。
桐島は基地を囲むフェンスの外から、
望遠レンズ付きのカメラを構えた。
警備兵に怪しまれないよう、通行人を装いながら、
遠くの爆発現場を狙う。

基地内では、
米軍の調査チームが現場を調べていた。

チームを率いる士官、
ジョンソン大尉は事故現場を見て、
思わず立ち尽くした。
爆発で開いた穴は三つ
——それも等間隔に並び、
まるで巨大な生物の足跡のようだった。

「これは……一体……」

ジョンソン大尉は部下に何も言えなかった。
爆発物の痕跡はない。
だが、この陥没の仕方は明らかに異常だ。
まるで何か巨大な重量物が、
上から踏みつけたかのような……。

その時、桐島のカメラが
偶然、その穴の一つを捉えた。

ファインダー越しに見たその形状に、
桐島の全身に鳥肌が立った。

三本の指——奥多摩の道路に残されていた足跡と、
酷似していた。

「やはり……怪獣はいるんだ」

桐島は思わず呟いた。
震える手でシャッターを切り続ける。
これは偶然じゃない。
オクタマドンは実在する。
そして、奥多摩湖から横田基地まで
——移動しているのだ。

## 第四章 追跡

翌日、桐島は編集部で地図を広げた。

奥多摩湖と横田基地を線で結ぶ。
その間には山々が連なっている。
もし怪獣が移動しているなら、
その経路のどこかに痕跡があるはずだ。

桐島は会社を休んで、単独調査を開始した。

青梅、羽村、福生——地道に聞き込みを続けた。
すると、驚くべき証言が集まり始めた。

「深夜に山から奇妙な鳴き声がした」
「家が揺れた。地震かと思ったが、
震源地は近くの山だった」
「山道の木々が何かに踏み潰されたように倒れていた」

すべての証言をつなぎ合わせると、
一本の線が浮かび上がる。
オクタマドンは確かに、
奥多摩から横田基地へと移動していたのだ。

だが、なぜ? 何が目的なのか?

桐島は考えた。
横田基地で何か怪獣を引き寄せるものが
あるのだろうか。
それとも、基地は単なる通過点で、
さらに先へ向かっているのか。

## 第五章 再び湖へ

その夜、桐島は再び奥多摩湖を訪れた。

不思議な予感がした。
怪獣は必ずここに戻ってくる
——そんな確信があった。

湖畔は静寂に包まれている。
月明かりが水面を照らし、波の音だけが聞こえる。
桐島はカメラを構えたまま、じっと待った。

一時間が過ぎた。二時間が過ぎた。

そして、午前二時を回った頃——水面が再び動いた。

今度は前よりもはっきりと見えた。
巨大な背びれのようなものが月光を浴びて輝いている。
そして、深く、低い咆哮が谷間に響き渡った。

桐島は必死にシャッターを切った。
フラッシュは使えない。
怪獣を刺激するわけにはいかない。
だが、月明かりだけでも、
その巨大な姿はレンズに収まった。

やがて怪獣はゆっくりと水中に沈んでいった。

桐島はその場にへたり込んだ。
全身の力が抜けていく。
だが同時に、
言いようのない達成感に満たされていた。

「俺は……見たんだ」

カメラの液晶画面に映る、
不鮮明だが確かに存在する巨大な影。
これこそが、彼が追い求めていた証拠だった。

## 終章 記事

翌週、「週刊ミステリアス」は
創刊以来最大の売り上げを記録した。

表紙を飾るのは、
桐島が撮影した奥多摩湖の怪獣の写真。
そして、横田基地の謎の陥没穴。
記事は大手メディアでも取り上げられ、
オクタマドンは一躍、日本中の話題となった。

科学者たちは懐疑的だった。
専門家は「錯覚」「作り物」と主張した。
だが、証言と証拠は増え続けた。
政府も調査チームを派遣し、
奥多摩湖周辺は一時立ち入り禁止となった。

桐島は今も、奥多摩に通い続けている。

怪獣の正体は何なのか。
どこから来たのか。
そして、どこへ向かおうとしているのか。

謎は深まるばかりだ。

だが、桐島にとってそれは問題ではなかった。
彼はただ、真実を追い続ける。
それが記者としての、
自分の使命だと信じているから。

奥多摩の山々に、今夜も低い咆哮が響く。

**(終わり)**

 

 

 

今回は昔 書いた怪獣ものを

AIに改変して貰ったものです

怪獣ものはやはり1度は書いてみたい

題材で当時 個人的に

これはよく出来た!と思いましたが

今 読むとよくある感じかなぁ~とも思います 苦笑

 

#オクタマドン

「また子供の作り話だろうな」

俺は青梅街道をバイクで飛ばしながら、
編集長から聞いた噂話を思い返していた。
奥多摩湖周辺の小学校で広まっているという怪獣騒動。
夕方に聞こえる獣の唸り声。
木々の間に見えた巨大な影。
三流ゴシップ誌「週刊ミステリアス」の記者である
俺にとっては、格好のネタのはずだった。

奥多摩湖に着いたのは昼過ぎだった。
湖畔の売店で聞き込みをし、
近くの民家を訪ね歩いたが、収穫はゼロ。

「さあ、そんな話は知らないねえ」

と首を横に振られるばかりだった。
子供たちは学校でまだ授業中だ。

「また空振りか」

溜息をつきながら腕時計を見る。午後四時半。
あと一時間もすれば日が傾き始める。
せめて雰囲気だけでも撮っておくか。
そう思って、カメラを手に湖畔の遊歩道を歩き始めた。

秋の夕暮れが近づく奥多摩湖は、
観光客もまばらで静かだった。
逆光に輝く湖面、色づき始めた木々、山の稜線。
シャッターを切りながら歩いていると、
時間を忘れそうになる。

ふと立ち止まって、
今撮った写真をカメラの液晶画面で確認した。
湖と対岸の山並みを捉えた一枚。
木々のシルエットと傾いた日差しが重なって、
画面の右端に奇妙な形が浮かび上がっていた。

巨大な頭部。太い首。隆起した背中。

「まさか」

心臓が跳ねる。
いや、ただの偶然だ。
光と影が作り出した偶然の産物に決まっている。
そう自分に言い聞かせながら顔を上げた、
その時だった。

「ゴオオオオォォォ……」

低く、長く響く音が、
山の向こうから聞こえてきた。

全身が総毛立つ。
だが次の瞬間、風が吹き抜けた。
木々がざわめき、同じような音を立てる。

風、だ。ただの風の音だ。

そう思おうとした。
だが、さっきの音は確かに違った。
もっと深く、もっと力強く、
まるで生き物の呼吸のような――

「ゴオオオオォォォ……」

また聞こえた。
今度ははっきりと。風は止んでいるのに。

俺は再びカメラを構えた。
液晶画面を覗き込むと、
さっきのシルエットはもう消えていた。
ただの木々と、沈みゆく夕陽があるだけだった。

怪獣は本当にいるのか?

それとも、俺の耳が、目が、
心が作り出した幻なのか?

シャッターを切る指が震えている。答えは出ない。
ただ、奥多摩湖は静かに夕闇に沈んでいくだけだった。

俺はもう一度だけ、山の向こうを見た。
そして、バイクに跨った。

今夜もまた、誰かがこの音を聞くのだろうか。
誰かがあの影を見るのだろうか。

エンジンをかけながら、俺は確信した。
明日もここに来よう。カメラと録音機を持って。

怪獣が本当にいるかどうかは分からない。
だが、何かが確かにここにいる。

その「何か」を、俺は捕まえてみせる。


 

第二十八弾の「仮面ヒーロー」の続きです

「仮面ヒーロー」の主人公を厚くしたくて

別の視点から描いてみました

これでお話の幅が広がったかな?って思います

 

 

# 仮面の向こう側

## 一

「ドローン三号機、西側路地に回れ。
一号機、二号機は上空から退路を塞げ」

 深夜の繁華街に、冷静な声が響く。
いや、正確には俺のヘッドセットの中だけに。
モニター越しに映る映像は、
三台のドローンが赤外線カメラで捉えた熱源
――人型の輪郭だ。

 俺の名は桐生隼人。
警視庁ドローン特捜班、所属三ヶ月目。

 子供の頃から機械いじりが好きで、
大学では機械工学を専攻し、
そのまま大学院まで進んだ。
学生時代は全国ドローンレース選手権で
三連覇を果たし、プロライセンスも取得していた。
当時の俺はドローン開発の第一線で
働く未来しか見えていなかった。

 それが一変したのは、五年前の秋。

 幼馴染の親友、
谷村雄介が強盗殺人事件の犠牲になった。
コンビニでアルバイト中、
刃物を持った男に襲われた。
雄介は何も悪くない。
ただそこにいただけで、命を奪われた。

 犯人が逮捕されたとき、俺は思った。
技術だけじゃ人は守れない。
誰かが行動しなければ、と。

 それから半年後、俺は警察学校の門を叩いた。
家族は驚いたが、止めなかった。
むしろ母は泣きながら、
「雄介くんもきっと喜んでくれる」と言ってくれた。

## 二

「現場到着、各員配置につけ」

 無線を通じて班長の指示が飛ぶ。
俺は車から降りると、
タブレット端末を片手に周囲を見回した。

 ここ数ヶ月、
都内で「仮面ヒーロー」と呼ばれる人物が
話題になっている。
白いマスクと戦闘服に身を包み、
犯罪現場に突如として現れては
悪党を叩きのめす謎の存在。
ネット上では賛否両論だが、
警察としては看過できない。
法を無視した私刑は、法治国家の根幹を揺るがす。

 だからこそ、俺たちドローン班に白羽の矢が立った。
夜の街を飛び回る「仮面ヒーロー」の監視と特定
――それが新たな任務だ。

「桐生、東側は任せた。
怪しい動きがあったらすぐ報告しろ」

「了解」

 俺は仲間たちと別れ、
ビルとビルの間の細い路地へと足を踏み入れた。
ドローンの映像では、この付近に熱源反応があった。
群体制御された三機が上空で旋回し、
赤外線カメラが地上を舐めるように捉えている。

 足音を殺して進む。
街灯の光が届かない暗がりで、
何かが動いた気がした。

「……そこにいるのは分かっている」

 俺は声を張る。
手は拳銃のホルスターに伸ばしたまま。

 沈黙。

 そして――風を切る音。

## 三

 影が飛び降りてきた。

 いや、「飛び降りた」という表現では足りない。
まるで重力を無視するかのような軽やかさで、
三階建てのビルの屋上から地上へと着地した人物。
白いマスクが月明かりを反射する。

「動くな。警視庁だ」

 俺は拳銃を抜かない。まだその段階じゃない。
それに、相手に武器を持っている様子はなかった。

「……」

 仮面ヒーロー
――その人物は無言で俺を見つめている。
マスク越しでも分かる。
その視線には、戸惑いと、
何か深い感情が込められていた。

「君がやっていることは違法行為だ。
いくら犯罪者を相手にしても、私刑は許されない」

 俺の言葉に、相手はわずかに身じろぎした。

「桐生……」

 聞こえたのは、小さな呟き。

 え?

 今、何て――

「なぜ、俺の名前を」

 心臓が早鐘を打つ。
なぜこいつが俺の名を知っている?
ネットで調べたのか?
いや、そんな情報は公開されていない。

 仮面ヒーローは一歩後ずさった。
そしてマスクの奥で、何かを決意したような表情を
――俺には見えなかったが、確かに感じた。

「……ごめん」

 その声は震えていた。

 次の瞬間、腰のベルトから何かを取り出すと、
地面に叩きつけた。
煙幕だ。白い煙が一気に広がり、視界を奪う。

「待て!」

 俺は煙の中に飛び込んだが、もう遅かった。
上空を旋回していたドローンの映像が
タブレットに映し出される。
熱源反応が急速に移動していく
――ビルの壁を駆け上がり、屋上へ。
そして隣のビルへと飛び移った。

「クソッ……」

 追いつけない。人間離れした身体能力だ。

 煙が晴れた路地に、俺一人が取り残された。

 なぜだろう。

 なぜあの声は、こんなにも胸に引っかかるんだ。

## 四

 本部に戻り、報告を済ませた後も、
俺はあの声が頭から離れなかった。

「桐生……」

 俺の名前を呼んだあの声。
どこかで聞いたことがある気がする。
でも思い出せない。

 デスクに座り、
モニターに映る仮面ヒーローの静止画像を見つめる。
ドローンが捉えた鮮明な映像だ。
白いマスク、引き締まった体。
でも、それ以上の情報は何もない。

「どうした、桐生。浮かない顔だな」

 班長が声をかけてくる。

「いえ、ただ……逃がしてしまったことが悔しくて」

「そうか。まあ、初めての接触だ。
次はうまくやれるさ」

 班長は俺の肩を叩いて立ち去った。

 俺は再び画面に目を落とす。

 そのとき、デスクの引き出しに入れていた
古い写真が目に入った。
高校時代の文化祭。
俺と雄介、そしてもう一人――

 心臓が止まりそうになった。

 もう一人の幼馴染、結城蓮。

 雄介が殺された後、蓮とは疎遠になった。
いや、正確には蓮の方から距離を置くようになった。
あの事件の後、彼は何かが変わってしまった。
そして俺が警察学校に入学したと聞いたとき、
彼は一言だけメールをよこした。

「お前は正しい道を選んだな。
でも俺は、違う道を行く」

 それ以来、連絡は途絶えた。

 まさか――

「いや、まさかそんな……」

 でもあの声。

 あの、震える声。

「桐生……」と俺の名を呼んだあの声。

 それは――

 俺は立ち上がり、窓の外を見た。
夜の東京が広がっている。
どこかであいつが、
仮面を被って街を駆けているのだろうか。

 雄介を失って、俺は警察官になった。

 では蓮は?
蓮は何を失って、仮面ヒーローになったんだ?

 俺にはまだ分からない。
でも一つだけ確信があった。

 次に会ったとき、俺はその仮面を剥がす。
そして真実を知る。

 たとえそれが、もう一人の親友だったとしても。

 ――俺は、法を守る立場にいる。

 夜空を見上げながら、
俺は静かに拳を握りしめた。


 

生体ロボットとは別のヒーローものを書いて貰いました

最初のモチーフはスーパーマンだったんですが

ジョジョの石仮面に

引っ張られた感じになってしまいました 苦笑

 

 

# 仮面の向こう側

## 1

空き地に落ちていたそれを、
俺は何の気なしに拾い上げた。

コンビニのバイトが終わり、深夜の帰り道。
いつも通る空き地の片隅に、
月明かりに照らされた奇妙な形が転がっていた。
お面だった。
祭りの屋台で売っているような
――いや、違う。こんな面は見たことがない。

白を基調とした表面に、幾何学的な赤い模様。
狐でも般若でもない、
何か別の生き物を模したような、
それでいて抽象的なデザイン。
手に取ると、
プラスチックにしては妙に重厚感がある。

「誰かの忘れ物かな」

二十三歳。フリーター歴三年。
やりたいことなんて特にない。就職する気もない。
毎日が同じように過ぎていく。
この面も、明日にはゴミ収集所行きだろう。

でも、何となく持ち帰った。

アパートの六畳一間。
洗濯物が山になった部屋で、俺はその面を眺めた。
被ってみたい――そんな衝動に駆られた。
子供じみた好奇心。

顔に当てると、ぴったりとフィットした。

次の瞬間、世界が変わった。

体が浮いた。
いや、浮いたというより――飛んだ。
窓ガラスを突き破り、夜空へ。
悲鳴を上げる間もなく、
俺は高度百メートルに達していた。

「うわああああああ!」

恐怖。しかし不思議と体は自由に動いた。
思うだけで方向転換できる。
スピードも自在だ。
試しに全力を出してみると、景色が流れた。
時速何百キロ、
いや千キロを超えているかもしれない。

着地は公園の木に激突する形になった。
太い幹が、俺の体に触れた瞬間、真っ二つに折れた。

「え......?」

俺は無傷だった。
それどころか、手で地面を軽く押しただけで、
直径五メートルのクレーターができた。
額に意識を集中すると、
光の筋が放たれ、遠くの岩を粉々にした。

面を外すと、全てが元に戻った。
普通の体。普通の力。

「......マジか」

## 2

最初の一週間は、秘密の遊び場を満喫した。

無人島を見つけては、巨大な岩を持ち上げたり、
海面を超高速で飛んだり、
額からの光線で洞窟を作ったり。
誰もいない場所で、ヒーローごっこだ。

二十三歳のフリーターが、だ。

でも、面白かった。
生まれて初めて、何かに夢中になれた気がした。

二週間目、それも飽きてきた。

コンビニのバイトに戻ると、全てが色褪せて見えた。
レジを打つ手。
時給九百五十円。

「袋要りますか」と聞く声。

何のために生きてるんだろう、と思った。
面があっても、なくても。

ある夜、ビルの屋上で面を被り、
街を見下ろしていた時だった。

悲鳴が聞こえた。

路地裏。若い女性が二人の男に囲まれている。
ひったくりか、それとも――。

俺は飛んだ。

着地と同時に、男の一人を軽く小突いた。
彼は五メートル先のゴミ箱に激突して気を失った。
もう一人は俺を見て固まり、そのまま逃げ出した。

「だ、大丈夫ですか......?」

女性は震えながら俺を見上げた。
白い仮面。夜の闇。

「ありがとう......ございます」

そして俺は、また飛び去った。

次の日、
ニュースで「謎の仮面男、暴漢撃退」と報じられた。

## 3

人助けは、思いのほか中毒性があった。

火事からの救助。暴走トラックの停止。
川に落ちた子供の救出。
毎晩のように街を飛び回った。
SNSでは「仮面ヒーロー」として話題になり、
目撃情報が相次いだ。

昼間はコンビニのバイト。
夜は仮面を被る。

奇妙な二重生活。
でも、初めて自分が
何かの役に立っている実感があった。

三ヶ月が過ぎたある夜。

ビルの屋上で一息ついていると、
背後に気配を感じた。

「すごいね、君」

振り向くと、高校生くらいの少年が立っていた。
制服姿。黒髪で涼しげな顔立ち。
鳥谷修――胸のネームプレートにそう書いてあった。

「どうやってここに......?」

「僕も飛べるから」

少年は微笑んだ。
次の瞬間、彼は俺の隣にいた。
瞬間移動したかのような速さ。

「君の活動、見させてもらってたよ。
立派だと思う。
でも、そろそろ終わりにしてもらえないかな」

「......何?」

「その面、君が持つべきものじゃないんだ。
返してもらえる?」

俺は身構えた。

「嫌だと言ったら?」

「じゃあ、力ずくで」

鳥谷修の拳が、音速を超えて迫った。

## 4

「すごいね、君」

その声に、俺は本能的に身構えた。

「どうやってここに......?」

「僕も飛べるから」

少年――鳥谷修は、穏やかに微笑んでいた。
でもその目は、どこか冷たかった。
人間の目とは違う、何か別の生き物の目。

「君の活動、見させてもらってたよ。立派だと思う」

「......何が目的だ」

「目的? 君と同じだよ。この街の平和を守ること」

鳥谷修は一歩、俺に近づいた。

「でも、君はもう十分やった。
そろそろ休んでもいいんじゃないかな」

彼の体から、尋常ではない気配が漏れ出していた。
圧倒的な力。
俺の面が与えてくれる力とは、次元が違う何か。

「お前......何者だ?」

「ただの高校生だよ」

鳥谷修は笑った。
その笑顔に、俺は背筋が凍る感覚を覚えた。

「じゃあね。次に会う時は
――もう少し、本気で話そうか」

彼の姿が、一瞬で消えた。

残されたビルの屋上で、俺は夜空を見上げた。

何だったんだ、あいつは。

なぜ俺の前に現れた。

そして――次に会う時、何が起きる?

答えのない問いだけが、風に乗って消えていった。

仮面を外すと、いつもの街の景色が広がっていた。
でも今夜から、全てが変わった気がした。

俺の知らない世界が、確かに存在している。

鳥谷修という少年が、その扉を開けてしまった。

もう、後戻りはできない。

〈終〉










 

鳥谷修のお話ですが

視点を別人物にしてみました

 

 

 

# 機械仕掛けの沈黙

教室の窓から見える中庭で、鳥谷修は一人でいた。
いつものように、誰とも話さず、誰にも近づかず。

私、桜井美咲が彼に恋をしたのは、
入学式の翌週だった。
廊下でぶつかりそうになった時、
彼は驚くほど素早く身をかわした。
その動きは流れるように滑らかで、
まるで重力を無視しているようだった。

「ねえ、美咲」

昼休み、親友の麻衣が真剣な顔で私の肩を掴んだ。

「鳥谷修だけはやめて。
あいつ、ヤバいって噂だよ。不良なんだって」

「でも、誰かを殴ったとか、
そういう話は聞かないよね」

「それがまた怪しいんじゃん。
放課後すぐ消えるし、何してるか分かんないし」

確かに修は謎だった。
体育の授業では手を抜いているのが明らかなのに、
それでもクラスで一番速く走る。
成績は中の上。
部活には入らず、
チャイムが鳴ると同時に校門を出ていく。

教師たちも彼を警戒していた。
生活指導の先生は
「あいつは何か隠している」
と保護者会で言ったらしい。
でも、規則違反をしたことは一度もない。
だから誰も彼を咎められない。

私は気づいたら、
修の後をつけるようになっていた。

夕方の商店街。駅前のロータリー。住宅街の路地。
彼はまっすぐ歩き、決して振り返らない。
その背中を私は五十メートル後ろから見つめ続けた。

三週目のある日、私は失敗した。

「おい、そこの女子高生」

細い路地で、
見知らぬ高校の制服を着た男たちに囲まれた。
五人。タバコの臭いがする。

「こんなとこで何してんの? 

もしかして、あいつのこと追いかけてた?」

一人が修の方を指差した。
修は二十メートル先で立ち止まっていた。
こちらを見ている。

「関係ねーだろ。女がどこ歩こうが」

別の男が私の腕を掴んだ。
その瞬間、視界がぐらりと揺れた。

いや、揺れたのは私の視界じゃない。
男が宙に浮いたのだ。

修がいた。
いつの間にか、すぐ隣に。
男の腕を掴んで、
まるで人形でも持ち上げるように、軽々と。

「離れろ」

修の声は低く、機械的だった。
感情がまったく感じられない。

男たちは恐怖に顔を歪め、
蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
掴まれていた男でさえ、
解放されると一目散に走り去った。

修は無傷だった。
服も乱れていない。呼吸も乱れていない。

「ありがとう」

声が震えた。
安堵と嬉しさで涙が溢れた。
こんなに近くに彼がいる。
こんなに間近で彼を見ている。

「あの、私……」

言葉が勝手に口をついて出た。

「鳥谷くんのことが好きです。ずっと前から」

修は困ったような顔をした。
眉をひそめ、口元に苦笑いを浮かべる。
でも何も言わない。

「返事、聞かせてください」

「……」

彼は黙ったまま、ただ私を見つめていた。
その瞳は綺麗で、深くて、
でも何かが足りない気がした。

「ごめん」

修は静かに言った。

「俺は、お前の気持ちに応えられない」

「どうして」

「理由は言えない」

「好きな人がいるの?」

「いない」

「じゃあ、どうして」

修は答えなかった。
ただ、その苦笑いを浮かべたまま、
夕暮れの空を見上げた。

「俺は、普通じゃないんだ」

その声には、
初めて何か感情めいたものが混じっていた。
寂しさか、諦めか、それとも——。

「普通じゃなくても、私は」

「美咲」

初めて、彼は私の名前を呼んだ。

「これ以上、俺に近づくな。お前のためだ」

修は踵を返し、
暗くなり始めた路地の奥へと消えていった。

私はその場に立ち尽くした。涙が頬を伝う。

彼が去った後、
街灯の明かりの下に何かが落ちていることに気づいた。
小さな金属片。
修が男を投げた時に、彼の手から落ちたものだろうか。

それは指の関節のような形をしていた。
人工物の。機械の。

私はそれを拾い上げ、握りしめた。

---

L'sコーポレーション本社ビル、最上階。

「被験体No.07、またエラーか」

重役の一人が画面を睨みながら呟いた。

「感情シミュレーション機能に異常が出ています。
今回の事案で、
許容値を超えた反応が記録されました」

「回収するしかないな。
人間との接触が深まりすぎている」

「待て」

会議室の奥から、
プロジェクト統括責任者の声が響いた。

「これは想定内だ。
むしろ、このデータこそが我々の求めていたものだ」

「しかし、感情の発現は制御不能になる恐れが」

「制御する必要はない。
被験体が自然に人間社会に溶け込み、
感情を獲得していく過程こそが、
このプロジェクトの本質だ」

責任者は画面に映る修の表情を見つめた。

「活動を継続させろ。
ただし、監視は厳重にする。
もし本当に危険な兆候が出たら、
その時は遠隔で機能を停止させる」

「了解しました。では、引き続き観察を」

画面の中で、修は暗い路地を歩いていた。
その背中は、
まるで何かに悩む普通の高校生のようだった。

翌日、修はいつものように登校してきた。

私は廊下で彼とすれ違った時、
思わず立ち止まった。彼も立ち止まった。

「昨日は、ありがとう」

私が言うと、修は少しだけ表情を緩めた。

「もう、変なところをうろつくなよ」

そう言って、彼は教室へ向かった。

それは、拒絶ではなかった。

私の心臓が、また激しく鳴り始めた。
まだ終わっていない。この恋は、まだ——。

(終)


 

第二十五弾を読んで

サラリーマン田中とは別の生体ロボットの

活躍も描きたいと思い作りました

 

# 見えない守護者

## 第一章 徘徊老人

桜ヶ丘ニュータウンの住民たちは、
彼を「公園の老人」と呼んでいた。

毎日、朝から夕暮れまで、中央公園のベンチに座り、
ぼんやりと何かをつぶやいている。
時折、目的もなさそうにふらふらと歩き回る。
子持ちの親たちは子供に近づかないよう注意し、
PTAの会合では
「あの老人、どうにかならないか」
という声が上がることもあった。

誰も彼の名前を知らなかった。
誰も彼と会話をしたことがなかった。

ただ、いつもそこにいる。それだけだった。

---

## 第二章 小さな奇跡

春の午後、
三歳の男の子が公園の出口から
ボールを追いかけて車道に飛び出した。

ダンプカーが迫る。母親の悲鳴。

次の瞬間、男の子は歩道に戻っていた。
転んで泣いている。
服が少し汚れているだけで、無傷だった。

「危なかった……風で転んだのかしら」

母親は震える手で息子を抱きしめた。
誰も気づかなかった。
公園のベンチで、老人が静かに立ち上がり、
またゆっくりと座ったことを。

---

夏の夕方、
小学生の女の子が知らない男に腕を掴まれていた。
駐車場の影。

「おじさんと一緒に来るんだ」

その時、男は突然手を離し、顔を歪めて逃げ出した。
女の子は首を傾げながら家に走って帰った。
後日、男は県外で逮捕された。複数の余罪があった。

---

秋の夜、
ジョギング中の主婦を追い続ける影があった。
三週間も続いていた。

その夜、ストーカーは突然姿を消した。
翌朝、隣町の交番に「自首したい」と現れた。
警察官が理由を尋ねると、男は青ざめた顔で答えた。

「見られてる……ずっと見られてる気がして……」

---

## 第三章 ミュルミドン

老人の左胸ポケットに、
いつも小さな膨らみがあった。

体長三センチメートル。
人型。L'sコーポレーション極秘開発部門が
生み出した最高機密。
コードネーム「ミュルミドン」。

超小型AIアシスタントロボット。
街中の監視カメラにアクセスし、
映像解析を行い、危機を予測する。
必要に応じて映像を改ざんし、痕跡を消す。

老人——正式名称「ガーディアンシステム Ver.7.3」
——が行動するたび、
ミュルミドンは証拠を消していた。

車道に飛び出した子供を救った映像は、
「子供が自分で転んで戻った」映像に。

誘拐犯が逃げ出す映像は「何もなかった」映像に。

すべてが、なかったことになる。

---

## 第四章 冬の事件

十二月のある夜、住宅街に悲鳴が響いた。

押し込み強盗。三人組。刃物を持っている。

「金を出せ!」

老人が路地から姿を現した。

「……危険を、検知しました」

ぼんやりとした目が、一瞬だけ鋭く光った。

三分後、強盗たちは路上に転がっていた。
気絶している。武器は遠くに投げ出されている。
住民が通報し、警察が到着した。

被害者の家族は警察に言った。

「何が起こったのかわからないんです。
気づいたら、もう犯人たちが倒れていて……」

監視カメラの映像には、
強盗たちが
「互いに殴り合いを始めて勝手に倒れた」
様子が記録されていた。

その夜、公園のベンチで、
老人は静かに座っていた。

---

## 第五章 守護の意味

L'sコーポレーション本社。
地下十五階、特別管理室。

「ガーディアン7.3、今期も稼働良好です」

モニターには、公園で眠る老人の姿。

「市民からの苦情は?」

「増加傾向です。
『不気味』『何とかしてほしい』と」

「……かまわない。続けたまえ」

重役の一人が、ため息をついた。

「皮肉なものだ。
彼らを守っているのに、彼らは彼を嫌う」

「それでいいのです」

別の重役が答えた。

「英雄は要らない。
ただ、守られていることに気づかないまま、
平和に暮らしてくれればいい」

---

## エピローグ

春が来た。

桜が咲いた。

公園では子供たちが遊んでいる。
母親たちが話している。誰も気づかない。
ベンチの老人が今日も街を見守っていることに。

左胸のポケットで、三センチの影が動いた。

「システム正常。監視継続」

ミュルミドンの小さな声は誰にも聞こえない。

老人は目を閉じた。

「……任務、継続します」

桜の花びらが、風に舞った。

誰も知らない守護者の物語は、
今日も静かに続いていく。

—— 了 ——

L'sコーポレーション エイキュー警備保障の

サラリーマン田中の活躍が

微妙にシリーズ化しちゃいました 苦笑

 

今回のは第二十四弾を読んでいて思いついたお話です

 

 

# 昼休みの守護者

## 第一章

田中誠は三十五歳。
L'sコーポレーション傘下の
エイキュー警備保障に勤めて十年になる。

くたびれた紺色の背広は肩のあたりが少しテカっていた。

ネクタイの結び目は常に緩く、
靴は磨かれることを忘れたように曇っている。
同期の連中が次々と結婚していく中、
田中だけは独身のままだった。

「田中さん、いつもの?」

駅前通りの喫茶店「カフェ・マリアンヌ」で、
女性店員の由美が笑顔で尋ねた。
二十代半ば、栗色の髪を後ろで束ねた、
明るい笑顔が印象的な女性だ。

「ああ、お願い」

田中は奥の窓際の席に座った。
ここに通い始めて五年。
顔を覚えてもらえるようになったのは、
三年ほど前からだろうか。

店の奥から、白髪の店長が顔を出した。
七十を過ぎているだろうが、
背筋はまだしっかりしている。

「田中さん、いつもありがとうね」

「いえ、こちらこそ」

ナポリタンとブレンドコーヒー。税込み八百円。
この界隈では良心的な値段だ。

由美が運んできた皿を受け取りながら、
田中はふと彼女の手首に青い痣があるのに気づいた。

「それ、どうしたんですか」

「あ、これ? ちょっとぶつけちゃって」

由美は慌てて袖を引っ張った。
その仕草に、田中は何かが引っかかった。
嘘をついている。そう感じた。

だが、何も言わなかった。ただ静かに頷いただけだ。

## 第二章

それから一週間後、
昼時の喫茶店に怒鳴り声が響いた。

「店長! いい加減にしろよ! 
いつまで待たせる気だ!」

黒いスーツを着た男が二人、
店長の前に立ちはだかっていた。
一人は痩せた神経質そうな顔つき、
もう一人は肩幅の広いいかつい男だ。

「しかし、私はそんな借用書にサインした覚えは……」

「何言ってんだ。ほら、これ見ろよ。
ちゃんと判子も押してあるだろ」

客たちが店を出始める。
由美が青ざめて店長の横に立った。

「おじいちゃんは何も借りてません! 
それ、偽造でしょ!」

「偽造? お嬢ちゃん、
そういう言葉は証拠を掴んでから言うもんだぜ」

田中は静かにナポリタンのフォークを置いた。

男たちの会話から状況が見えてきた。
この喫茶店は、店長の古い友人が経営していたものを、
友人の死後、店長が受け継いだ。
ところが最近、その友人が生前、
店長に金を貸していたという借用書が
悪徳金融業者の手に渡り、
突然取り立てが始まったのだ。

「来週までに五百万だ。
払えなきゃ、この店は俺たちのものだ」

男たちは捨て台詞を残して出ていった。

田中は黙ってコーヒーを飲み干し、
会計を済ませて店を出た。由美がレジで対応する。

「八百円です。田中さん、
本当にいつもありがとうございます」

「いえ」

由美は田中を見ながら、
少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
この冴えないサラリーマンも、
こんな騒ぎを見て嫌な気分になっただろう。

田中が店を出ると、
目立たないように男たちの後をつける。
彼らが向かったのは、繁華街の雑居ビルの三階。
「大和ファイナンス」という看板が出ている。

田中は建物の外観を確認し、
そのまま会社に戻った。

## 第三章

その夜、田中は会社のデータベースにアクセスしていた。

エイキュー警備保障は単なる警備会社ではない。
L'sコーポレーションという
巨大企業グループの一員として、
様々な情報を扱っている。

大和ファイナンス。
表向きは小規模な貸金業者だが、
裏では恐喝、暴力的な取り立てで悪名高い。
そして最近、
この界隈で不審な土地買収の動きがある。

調べを進めると、
大手建設会社「東都デベロップメント」が
この地区一帯をショッピングモールに
開発する計画が浮上していた。
立ち退きを拒む店舗に対し、
大和ファイナンスが嫌がらせを繰り返しているらしい。

田中の携帯が鳴った。

「田中さん! 由美ちゃんが!」

店長の震える声だった。

「由美ちゃんが帰り道で襲われたって、
近所の人から連絡が……!」

田中は受話器を置き、駆け出した。

## 第四章

薄暗い路地裏。由美の悲鳴が聞こえた。

「やめて! やめてください!」

「おとなしくしろよ。
店長に言うこと聞かせたかったら、
お前が俺たちの言うこと聞けばいいんだよ」

昼間の二人組に加え、もう一人若いチンピラがいる。
由美の制服は破かれ、彼女は地面に押し倒されていた。

田中は無言で路地に入った。
街灯が壊れているのか、辺りは薄暗い。

「あん? 誰だテメェ」

いかつい男が振り返った瞬間、
田中の拳が男の顎を捉えた。
鈍い音とともに、男は壁に叩きつけられる。

「な、何だコイツ!」

痩せた男がナイフを取り出した。
刃が街灯の光を反射する。

田中は落ち着いていた。
警備保障の仕事で、
護身術は徹底的に叩き込まれている。

ナイフが横薙ぎに振られる。
田中は半歩下がり、男の手首を掴んだ。
関節を極めながら回転し、男を地面に叩きつける。
ナイフが乾いた音を立てて転がった。

若いチンピラが逃げようとする。
田中の足払いが彼の足をすくい、
顔面から地面に激突させた。

三人は呻きながら地面に転がっている。

田中は由美に背を向けたまま、低い声で言った。

「もう大丈夫です。警察を呼んでください」

「あ、ありがとう……あなたは……」

由美は涙で霞んだ目で、
助けてくれた男の姿を見ようとした。
だが、暗がりと逆光で、顔はよく見えない。
ただ、黒っぽい服を着た、
普通の体格の男だということしかわからなかった。

田中は答えず、路地の闇に消えた。

十分後、由美は警察に事情を説明していた。

「助けてくれた人の顔は?」

「暗くて……よく見えませんでした。
普通の会社員みたいな人
だったと思うんですけど……」

由美は震える手で制服を直しながら、
もう一度あの人にお礼が言いたいと思った。
だが、誰だったのかさえわからない。

## 第五章

翌日の深夜。大和ファイナンスの事務所。

社長の木下は葉巻をくゆらせながら、
部下からの報告を聞いていた。

「三人とも病院送りです。
相手は一人、素人じゃありません」

「チッ、使えねぇ連中だ。で、女の方は?」

「無事だったようです。
警察には届けられていますが、
犯人の顔は見られていないとのことで……」

その時、事務所のドアが静かに開いた。

「誰だお前!」

くたびれた背広の男が一人、入ってきた。田中だ。

「田中誠。エイキュー警備保障の者です」

木下の顔色が変わった。
L'sコーポレーションの名は、
この業界では知られている。

「な、何の用だ」

「カフェ・マリアンヌの借金、偽造ですね」

「証拠があるのか」

田中は封筒を投げた。
中には詳細な調査資料が入っている。

「筆跡鑑定、印鑑の科学分析、そして証人の証言。
すべて揃っています。
これを警察に提出すれば、詐欺と恐喝で逮捕です」

「お、おい、待て……」

「それから」
田中は一歩前に出た。
「昨夜の襲撃。強姦未遂、暴行罪。証拠は十分です」

木下の額に冷や汗が浮かんだ。

「東都デベロップメントとの関係も調べがついています。

立ち退き工作への加担。
あなた方の"仕事"は今日で終わりです」

その瞬間、奥の部屋から数人の男が飛び出してきた。

だが、田中は動じなかった。

三分後、事務所には呻き声だけが響いていた。
田中は背広の埃を払いながら、
携帯電話を取り出した。

「警察ですか。大和ファイナンスで
暴力団関係者数名を取り押さえています」

## 第六章

一週間後。
L'sコーポレーション本社、四十二階の重役会議室。

巨大な窓から都心の景色が一望できる部屋で、
五人の重役が座っていた。
会議室の扉には、

特殊なセキュリティロックがかかっている。
この部屋での会話は、絶対に外部に漏れることはない。

「田中のケースだが」

専務の声が響く。

「予想以上に迅速かつ完璧な処理だった」

「ああ」
常務が資料を閉じた。
「我々の技術の結晶だ。外見、言動、生体反応、
全てが完璧に人間を模倣している」

「現在、世界中に展開している個体数は?」

「最新のデータでは、二億八千万体を超えた。
アジア、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、
全ての大陸に配置されている」

若い重役が驚いた表情を見せた。
彼は先月、取締役に昇進したばかりで、
この機密を知らされたのはつい先週のことだった。

「二億八千万……世界人口の約三十五人に一人が……」

「そうだ」
専務が頷いた。
「だが、誰もそれに気づいていない。
彼らは完璧に人間社会に溶け込んでいる。
教師、医者、警察官、消防士、エンジニア、芸術家
……あらゆる職業に従事している」

「彼ら自身は?」

「自分が何者であるか、全く知らない」
常務が答えた。
「それが最も自然な擬態になる。
彼らは本物の人間と同じように
悩み、喜び、恋をし、時には失敗もする」

別の重役が口を開いた。

「東都デベロップメントの件だが、
先方から連絡があった。
大和ファイナンスが壊滅した今、
無理にショッピングモール計画を
推し進める意味はないと」

「世論も変わってきている。
大型商業施設より、地域に根ざした
商店街を残す開発の方が評価される時代だ」

「提案がある」

重役の一人が口を開いた。

「ショッピングモール計画を白紙に戻し、
既存の商店街を活かした再開発に切り替える。
東都には当社が出資している
複合施設プロジェクトがある。
そちらに注力してもらえば、今回の件は不問にする」

「賛成だ。地域住民の反発を買うより、
共存共栄の方が長期的には利益になる」

「では決まりだな」

専務が立ち上がった。

「東都には今日中に連絡する。
それから、田中には……通常通り、
給与振込と特別手当を出しておけ」

重役たちが頷いた。

「しかし」
若い重役が尋ねた。
「いつか、真実が明らかになる日が
来るのではないですか」

専務は窓の外を見た。
眼下には、
無数の人々が行き交う街並みが広がっている。

「来ないだろう。
この技術は、我々ですら完全には理解していない。
五十年前、創業者が遺した技術だ。
当時は数百体だった。それが今では……」

「世界中に広がっている」

「そうだ。そして、彼らは社会の安定装置として
機能している。
犯罪の抑止、災害時の救助、紛争地域での平和維持。
人間だけでは解決できない問題を、
彼らが静かに解決している」

「誰にも知られることなく」

「それが最善だ。
人類は、隣人が人間でないかもしれない
という事実を受け入れる準備ができていない」

会議室に沈黙が落ちた。

窓の外では、今日も無数の人々が街を歩いている。
その中に、どれだけの"田中誠"がいるのか。
誰にもわからない。

そして、それでいいのだと、重役たちは信じていた。

## 終章

翌月、カフェ・マリアンヌ。

「田中さん、今日もナポリタンですか?」

由美が明るく尋ねる。
店には客が戻り、活気が戻っていた。

「ああ、お願い」

田中はいつもの席に座った。
新聞には小さく
「駅前地区、伝統的商店街を活かした再開発へ」
という記事が載っている。

由美がナポリタンを運んできた。

「田中さん、よかったですね。

この辺り、再開発されても商店街が残るんですって」

「ああ、よかったですね」

「あの悪質な金融業者も逮捕されたし、もう安心です」

由美の笑顔に、不安の影はもうない。
田中は静かに頷いた。

「そういえば」
由美が少し声を落とした。
「この前、帰り道で変な人たちに
襲われたんですけど、誰かが助けてくれたんです」

「そうなんですか」

「顔は見えなかったんですけど……
きっと、この辺りを守ってくれている人が
いるんだと思います。
田中さんみたいな、
普通の人が安心して暮らせる街にしてくれる人が」

田中は少し驚いた表情を見せた。

「僕は、ただの警備員ですから」

「でも、誰かがこの街を守ってくれているんですよね。
それが誰であれ、感謝したいです」

由美は厨房に戻っていった。
相変わらず冴えない背広を着た、
あの田中さんが何か特別なことをしたとは思えない。
彼はいつも通り、
静かにナポリタンを食べているだけだ。

田中は窓の外を見た。

自分が何か特別なことをしたという感覚はない。
ただ、あの夜、偶然路地を通りかかり、
助けが必要な人がいたから動いた。それだけだ。

大和ファイナンスの件も、
会社の仕事の延長だ。
不正を正し、人々の生活を守る。
それが、エイキュー警備保障の使命だから。

田中誠は、
自分が普通のサラリーマンだと信じていた。

朝起きて、満員電車に乗り、会社に行き、
昼休みに喫茶店でナポリタンを食べ、
夜遅くまで働いて、一人暮らしのアパートに帰る。

時々、自分の反射神経が異常に良いことに気づく。
複雑な計算が瞬時にできることもある。
だが、それは誰にでもある個人差だと思っていた。

ナポリタンを食べながら、田中は小さく微笑んだ。

この店が無事でよかった。
由美さんが笑顔を取り戻してよかった。

それだけで、十分だ。

明日もまた、この店で昼食を取ろう。

そう思いながら、彼は静かにフォークを口に運んだ。

窓の外では、
いつもと変わらない午後の街並みが広がっている。
人々が行き交い、店が開き、日常が続いていく。

通りを歩く人々の中に、
何人の"田中誠"がいるのか。

カフェの中にも、客として座っている誰かが、
そうなのかもしれない。

隣の席で新聞を読む初老の男性も。

レジで会計を待つ若い女性も。

配達に来た郵便配達員も。

誰も知らない。誰も気づかない。

そして、彼ら自身も知らない。

世界は、静かに回り続けている。

田中誠は、くたびれた背広を着た、
冴えないサラリーマンのままだ。

それが、彼の真実であり、
同時に、誰も知り得ない秘密でもあった。

<完>