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最新刊27巻を読んでの感想です。

2巻ぐらいが出てた時に話題になってて読み始めて、最初から面白いと思ってたけど、想像以上に完成度の高い漫画だと27巻で改めて思ったわけです。

笑わせたり、ハラハラさせたり、感動させたりと、ジャンルというか作品の系統はすごく王道的な漫画だと思うんですよ。

「ザ・ワールド・イズ・マイン」と「最終兵器彼女」というタイトルでブログに書いたけど、20世紀末頃、やたら暴力描写やセックス描写や不条理な人の死等、漫画の過激さが頂点に達して王道的な漫画が少なくなっていたような気がするんです。

が、ここ10年ぐらいは優れた王道的な漫画が結構出てきて、なんか嬉しく思うんです。奇抜な漫画も好きだけど、やっぱりいろんなタイプの漫画を楽しみたいですから。

確か週間ジャンプの三大キーワードが「友情、努力、勝利」だったと思いますが、宇宙兄弟も当てはまります。「夢、努力、友情」の方がぴったりだと思いますが。

兄弟揃って宇宙飛行士になって月面に立つという夢。それを達成するまでの努力と仲間やJAXAやNASAの人々との友情。これは王道的で面白い。

 

それでも、ここまでの作品になるとは思ってなかった。

ここまで。というのは既に宇宙飛行士になり月面に降り立つまでに至っているが、それまでにいろんな登場人物が居て話は進んで来たわけだけど、22~27巻あたりで通過点の登場人物だと思っていた人が物凄く重要な役割を担って復活してきたり、これまでの出来事もいろんな形で結びついてきて、あまりの話の出来の良さ、物語のまとめ方に感心してしまった。

まず冒頭JAXAの試験からこの漫画はスタートするが、その時に共に試験に挑んだ福田さん、古谷やすし(やっさん)が再登場。その再登場の流れが秀逸。南波六太が所属するジョーカーズというNASAの宇宙飛行士チームとボルツというチームが次回の月へのミッションのアサインを争っていて、偉い人にはジョーカーズメンバーは劣っていると思われていて、ボルツの方が優位に立っていた。そこにISSが老朽化により修理コストがかさむため、ISSの廃止をNASAの偉い人は実行しようとする。ISSには、近々伊東せりかと北村絵名がミッションで行く予定のところが、である。そのミッションで伊東せりかは父が亡くなる原因となった病ALSの治療薬の研究も行おうとしている。ムッタ兄弟が幼いころから交流があり宇宙飛行士の夢を後押しする存在であった天文学者のシャロンおばさんもALSにかかり手足が動かせなくなり表情も作れないまで症状が進行している中で。

NASAの偉い人はISS廃止の署名を多く集めたチームを月へのミッションにアサインすると言うのだが、ムッタはこれまで出会った人々にいろんな協力を得てISSを存続しつつコストを削減する案を出す。今回の月のミッションではシャロン考案のシャロン望遠鏡の設置も含まれている。ムッタ自身の手でシャロンの夢を実現したいし、ISSでの研究でシャロンの病気の進行を食い止めたいと願っているから。

そしてそのコスト削減の案のひとつが日本初の民間有人飛行ロケットを作り上げたスイングバイという会社がISSの修理を行うというもの。このスイングバイに福田さんは関わっており、古谷やすしはその企業の飛行士になろうとしている。

そしてNASAの偉い人の心まで動かし、ISSの存続が決まり、伊東せりかと北村絵名はISSのミッションへ旅立ち、ムッタのチーム、ジョーカーズは月へのミッションをアサインされる。

もう、この話の流れ、これまでのいろんな出来事、登場人物の結びつき方には顔が綻ばずにいられなかった。すごい。

 

そして27巻の最後のシーンで泣いた。

ISSの伊東せりかが、なかなかALSの治療薬の研究が上手くいかず、地球ではあらぬ噂を立てられボロボロになりながらも、ようやく実験の成果が出て泣く場面。

コマ割など、決して斬新なわけではないが、とても効果的に表現されている。

伏線のような感じで無重力下における水の性質、球体で宙に浮くさまを何度か描き、読者に印象づけておいたうえで、

 

 

 

 

北村絵名が自分の周りに小さな水の玉が浮いてるのに気づき、伊東せりかの方へ視線を移すと。。。。大泣きしている伊東せりか。すごくブサイクな泣き顔に描いてる(眉毛を下げ、ほうれい線をくっきり描くあたり)のがまたリアルというか感情が伝わってくる。読みながら泣いた。

(表紙のせりかがメチャクチャかっこいいのは、これに対するキャラクターへの作者のお詫びだと思う。成功した笑顔、うまくいかない不安げな顔、泣き顔など内容に合わせた顔がある中で、とびきりにかっこいい顔を描いてあげたかったんじゃないかと思う)

 

読み返すと、1枚目の2コマ目と3コマ目だけで泣けるんです。もう何巻だったか分からないけど、旅立つ飛行士が家族を呼ぶイベントの時に伊藤せりかの母からムッタは聞きます。せりかは昔泣き虫だったと。けれど父が入院してからは病室で絶対泣かないように我慢してたと。そして父が亡くなった時に枯れるまで泣き尽くしたと。それ以降せりかが泣いたことを見たことがないと母は言います。ISS行きが決まった時に母から渡された昔の父からのビデオレターを見ても泣くのを我慢してました。2コマ目、口元はほころび眉が下がり安堵と嬉しさの表情。しかしすぐさま3コマ目、反射的に泣いちゃダメだと口元をキュッと結び眉毛をキリリと上げ堪えるようとする。この期に及んでまでも。しかしせりかは父の言葉を思い出したはず。

「悔しいとか恥ずかしいとかで泣いちゃダメだ。泣くほどのことなんて、実はそんなにないんだよ」「泣いてもいいのは、悲しくて仕方ない時と嬉しくて仕方ない時だ」

これまでのエピソードの積み重ねが、いろんなところで結実していく物語の展開には唸らずにはいられません。

 

この漫画は予想以上に凄かった。

 

追記 2016/10/22

何度も読み返して楽しんでいるが、最近はだいたい8巻ぐらいからいつも読み直してた。NASAに行くまでの過程は最初の頃に繰り返し読んで流れを覚えてしまったつもりでいたから。久しぶりに1巻から読み返したらブライアン・Jって2巻から登場してるんですね。日々人の部屋に写真が飾ってあって日々人が手に取るぐらいの描写が初めての登場で、その後ムッタがヒビトの遺書を見つけてしまって、ブライアンの墜落事故死について触れられている。(3人の事故死ということでタック・ラベルという名前も出てきていて現在月ミッションで同じクルーのべティ・ラベルの旦那さん)

ブライアンってなんとなくヒビトが月へ旅立つ前ぐらいからエピソードが挿入されだしたように思ってたんだけど、最初っからなんですね。

「宇宙兄弟」ってタイトルから読み出した時に想像したのは六太と日々人の兄弟が揃って宇宙飛行士となる、さらには二人一緒に月面に立つまでの物語だった。それに間違いはないと思うけど、ブライアン・J、エディ・J兄弟も裏の主人公という感じで重要なキャラクターなんですね。ブライアンは宇宙飛行士の皆の兄貴であり親父であり憧れのように描かれ、宇宙飛行士たるものの象徴的な人物。個人的にはブライアンが子供たちに語った「扉」の例え話が好き。

そして読み返して思ったのは無駄な登場人物がいないってこと。登場人物は沢山いる物語なんだけど、皆なにかしら話の展開に関わってくる。例えば六太が上司に頭突きをして辞めるときに見送ってくれた後輩。顔に特徴がなく明らかに脇役だけど、JAXAの選考のときに上司に頭突きをしたことを問題視されたときには星加さんに「上司の方が悪い」「六太さんてなんか宇宙飛行士になっても納得しちゃいそうな人です」って証言してくれたり、事故を起こさないバギーを作れという課題においてはフロントナビの技術協力として登場してきたり。

ジェニファーやオジー夫妻に小町さん等、脇を固めるキャラクターも魅力的で本当に面白い漫画だと思います。