お袋が半狂乱で、止めにかかるが、それを振り切ってダンボールに荷物を詰める。
親父がお袋に、
「放っておけ!
その内に音を上げて戻って来るさ。」
そう言った。
俺は、アパートを借りて、一人暮らしを始める事にした。
自立の第一歩だ。
それから、ユナさんに連絡を取り、会う約束をした。
ユナさんは、普通にデートだと思ったらしく、嬉しそうに腕を絡めた。
はたから見たら、幸せそうなカップルに見えるだろう。
カフェに入ると、俺たちは向かい合って座り、それぞれ飲み物を頼んだ。
コーヒーを飲みながら、俺は、何度も自分を鼓舞する。
そして、勇気を振り絞って、ユナさんを見すえた。
「あの…実は、話があります。」
「はい?」
「すいません。
俺と、別れて下さい!」
俺は、テーブルに頭をつけて、深々と謝罪をする。
「どういう…事ですか?」
ユナさんの顔から、血の気が失せていく。
俺は、罪悪感で胸が締め付けられながら、口を開いた。
「どうしても、忘れられない人がいます。
俺は、その人じゃなきゃダメなんです。」
「…私じゃ、ダメなんですか?」
「すいません。」
しばらくの間、沈黙が続く。
スッと席を立つ気配がした。
俺が顔を上げると、ユナさんはもういなかった。
テーブルには、婚約指輪が置いてある。
俺は、もう一度頭を下げた。
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