《C サイド》
ヒョンと別れて以来、僕の毎日から、色が消えた。
何を見て、何を聞いても、感動を覚えない。
無気力な毎日が続く。
今日も、ヒョンの写真に語りかけた。
ヒョン…。
元気にしてますか?
僕は、かろうじて生きています。
1分1秒たりとも、あなたの事を忘れていません。
あなたが、幸せである事を祈っています。
…さようなら。
そして、学園祭の初日が来た。
演奏会でピアノを披露する日である。
ピアノがあるから、どうにかここまでやって来れた。
学園祭でピアノを弾く事、それを目的に練習してきたんだ。
とりあえず、練習室で何度も弾いては、感覚を確かめる。
よし、大丈夫だな。
舞台袖には、部長とチョウさんがいて、僕を励ましてくれた。
そんな二人にお礼を言って、観客の待つ舞台へと、歩みを進める。
大きな拍手が、出迎えてくれる。
ふと観客席を見た時、前列にヒョンがいるのを見つけた。
あぁ…。来てくれたんだ…。
ありがとう…ヒョン。
頑張るから見ていてね。
大きく息を吐くと、鍵盤に指を這わせた。
美しいメロディーが生まれ、客席からため息が漏れる。
それに勇気づけられ、力いっぱい弾ききった。
終わると、割れんばかりの拍手が、沸き起こる。
ヒョンを見ると、嬉しそうに微笑んでいた。
切なさが胸にこみ上げてくる。
やっぱり、ヒョンが好き...。
どうしようもなく、悲しくて、やりきれない。
だけど、その手を離したのは、僕なんだ…。
僕は、未練を断ち切るように、舞台袖へと歩いて行った。
うっすらと目に浮かぶ涙を、そっと腕で拭った。
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