シェヘラザード81 | 僕はここにいるよ。

僕はここにいるよ。

ホミンの小説を、好き勝手に書いてます。
きわどい内容もあるので、ご注意下さい。

俺は、部屋の荷物をまとめると、家を出る準備をした。

お袋が半狂乱で、止めにかかるが、それを振り切ってダンボールに荷物を詰める。

親父がお袋に、
「放っておけ!
その内に音を上げて戻って来るさ。」
そう言った。

俺は、アパートを借りて、一人暮らしを始める事にした。
自立の第一歩だ。

それから、ユナさんに連絡を取り、会う約束をした。
ユナさんは、普通にデートだと思ったらしく、嬉しそうに腕を絡めた。

はたから見たら、幸せそうなカップルに見えるだろう。

カフェに入ると、俺たちは向かい合って座り、それぞれ飲み物を頼んだ。
コーヒーを飲みながら、俺は、何度も自分を鼓舞する。

そして、勇気を振り絞って、ユナさんを見すえた。
「あの…実は、話があります。」
「はい?」

「すいません。
俺と、別れて下さい!」

俺は、テーブルに頭をつけて、深々と謝罪をする。

「どういう…事ですか?」
ユナさんの顔から、血の気が失せていく。

俺は、罪悪感で胸が締め付けられながら、口を開いた。
「どうしても、忘れられない人がいます。
俺は、その人じゃなきゃダメなんです。」

「…私じゃ、ダメなんですか?」
「すいません。」

しばらくの間、沈黙が続く。

スッと席を立つ気配がした。
俺が顔を上げると、ユナさんはもういなかった。
テーブルには、婚約指輪が置いてある。

俺は、もう一度頭を下げた。

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