静かな炎天 (文春文庫)静かな炎天


まるで日常の延長のようにさりげなく書いてあるけど、よく考えるとぞっとするミステリー集。主人公の女探偵が疲れやすかったり四十肩になったりで、大丈夫?とちょっと心配になりますが、真面目でしぶとくてけっこう仕事のできるタイプ。なかなかやるじゃない!とほめてあげたくなります。事件(仕事?)に取り組みながらしょっちゅう出てくる愚痴も、周りにいる男性たちの鈍感さもおもしろくて、ぞっとする話の間に少しだけクスッとできるティータイムです。

 著者:若竹七海

 


私、ジョージア (詩人が贈る絵本 II)私、ジョージア (詩人が贈る絵本 II)


言葉をかみしめながら、絵を見つめながら、そしてジョージアの思いに気持ちをはせながら、繰り返し読みました。一人でいること、人と違うことを心地よいと感じ、独自の感性と手法で花や空を描き続けた画家。

彼女を導いたものは、「ずっと遠いところからよびかけてくるもの」でした。遠いところ…それは自分の奥深くからよびかけてくるものだと言えるかもしれません。そういう声と向き合いながら、芸術家と呼ばれる人々は作品を生みだしていくのですね。

少し難しいけど、子どもたちにもぜひ読んでほしい本です。
 著者:ジャネットウィンター

 


暗い越流 (光文社文庫)暗い越流


初めての作家。不思議な雰囲気のミステリー?ホラー? 気持ち悪くぞっとする3作を、ちょっとほのぼのとした女探偵ものでサンドイッチした短編集です。その女探偵葉村晶がまじめでドジで、どことなく荻原浩のハードボイルド探偵を思い出させます。この探偵のシリーズをもう少し読んでみたいなと思いました。
 著者:若竹七海

 


共犯捜査 (集英社文庫)共犯捜査


若い刑事皆川がどうやって事件を解決していくのか、気になるのとおもしろいのとで一気に読んでしまいました。勘の鈍いわたしは、途中で「これは捜査シリーズの3なんだ!」と気づいて、それからはまた別のおもしろさが出てきてきました。最後まで読んで、犯人と犯行の理由は有り得ないと思いましたが、一度チームを組んだメンバーが管轄を超えて助け合っていくという設定はけっこう好きです。シリーズの1と2をもう一度読み返したいと思って探しましたが、すでに処分していました。残念。シリーズ4を楽しみに待つしかないですね。
 著者:堂場瞬一

 


人はなぜ老いるのか 遺伝子のたくらみ (朝日文庫)人はなぜ老いるのか 遺伝子のたくらみ


副題は「遺伝子のたくらみ」。20年前に書かれたものです。20年というと、遺伝子にに関する研究はかなり進んで変わった部分もありそうですが、日高氏の本だからと思い読んでみました。『動物が自分の遺伝子を残すために生きるように、人も個体との子孫を残すための遺伝的プログラムが組まれている。ただ、そのプログラムの具体化のしかたはその人次第である』…そこがむずかしいですね。プログラムされていない部分で、人は悩んだり苦しんだりしているのでしょうか。老いることを考えるより、生きることを考える方がいいのかもしれません。
 著者:日高敏隆

 


バイ貝 (双葉文庫)バイ貝

 


日頃わたしがぼんやりと思っていることをこんなにしっかりと文章にできるなんて、やっぱり町田さんはすごい!そう、買い物は楽しいけど、意にそわない物が増えるのはストレスだし、お金が出ていくのはもっとストレスになるし…。鎌と中華鍋とカメラを通して、消費社会に生きる苦悩について知らしめてくれる愉快でちょっと哀しい教科書でした。「高い中華鍋をレジに持っていこうとしたら足が動かなくなった」なんて、本当に庶民は愛おしい。わたしは町田さんが好きだけど、本の貸しっこをしている友人はどうかなとちょっと心配しながら読みました。
 著者:町田康

 


無名 (幻冬舎文庫)無名


抑えられた文章ですが、作者の父親への思いが深く静かに伝わってきて、読んでいる間も読んだ後も胸の中にこみ上げてくるものがありました。

タイトルの通り、ほとんどの人々は「無名」に生き、無名に死んでいきます。でも、それは何もなさなかったということではありません。家族や社会のためにせいいっぱい生きてきた親は、社会的には無名でも、子どもにとってはかけがえのない大きな存在です。その親を送った悲しみと、何か大切なものを受け取ったという思いが、このタイトルだからこそ余計に強く伝わってきました。
 著者:沢木耕太郎

 


ラストレター (朝日文庫)ラストレター


ちょっとうまく行き過ぎだけど、さださん、やっぱり上手だなあと思いながら読み終えました。さださんでなければ書けないテーマ、言葉かもしれません。

ラジオ局の抱える問題、そこで働く人々の思いや人間模様、そして葉書という形を借りたリスナーたちの小さいけど温かい人生。その組み合わせが本当に妙です。ほんわかしたりしんみりしたり、本当にテレビでは伝わりにくいものがラジオでは素直に伝わってくるなと、言葉の力と想像力の大きさについて改めて実感しました。 

テレビのない子ども時代、「1丁目1番地」に夢中になり 、同じくテレビのない学生時代、4畳半の下宿で、ラジオから流れる拓郎の「今日までそして明日から」にビビッときたことを思い出しました。 

 著者:さだまさし

 


白砂 (双葉文庫)白砂


殺人はどんな場合でも理不尽なものですが、この作品の場合は理不尽過ぎます。なぜ殺されなければならなかったのか…。フィクションとは言え、できればもう少し感情を揺さぶられるような(涙腺が崩壊されるような)ところまで行きたかったなと、最後の解決の場面でちょっともったいなさを感じてしまいました。それでも、都会で暮らしてもなお抜け出せない山村の悲しい秘密に追い立てられて、飽きることなく一気読みしてしまいました。
 著者:鏑木蓮

 


九十歳。何がめでたい九十歳。何がめでたい


タイトルに惹かれ、スカッとしたくて読みました。おもしろさに年齢を考慮したら、「九十歳。それがどうした」と叱られそうですが、いやいや「九十歳。おそれいります」。判断の速さ、潔さは本当に素晴らしい! 犬への思いやいちいちうるさい世間に対しての怒りにも共感し納得です。 

そこはちょっとと思う話や、まあどうでもいいかなと思う話もありますが、そういうことに思いを巡らせるのも作者の生命力ならでは。「九十歳。どうでもいいや」とならないところがいいですね。ちなみにわたしはスーパーで、「袋入りません。」と言う派です。
 著者:佐藤愛子

 


チロルくんのりんごの木チロルくんのりんごの木
冬休みの孫のためにと借りたのですが、小2の孫は最近「こわい話」にばかり夢中で…。まずはわたしがじっくり読んでみました。移り変わる季節と移り変わる山々の風景が雄大できれいです。

子どもにとって世界はどれくらいの大きさなのでしょう。自分の子ども時代を思い出すと、毎日暮らしている町、通学路から見えた場所、遊びまわった野原や川だけだったような気がします。チロルもそうですね。

『ぼくがいちばんすきなところ りんごの木があるところ かぞくの木があるところ』 豊かな風景と温かい家族の大切さを感じているチロルは幸せな子です。
 著者:荒井良二
 

書店で可愛いノートを見つけました。

大好きなムーミンとスナフキンの表紙。大きさは文庫本と同じです。

中は、1ページずつ本のタイトルと著者名や自由に記入できる欄があります。

 

 

わたしは1年に100冊ほどの本を読みますが、感想はパソコンに入れているので

手書きのノートはとくに必要ありません。

でも、このノートはほしい…。

 

考えました。

読んだ本全部の感想ではなく、子どものころからを振り返って、

「生涯で心に残った本100冊」のノートを作ろう。

 

1ページ目に記入する本は、佐藤まさる氏の「だれも知らない小さな国」です。

半世紀ほども前、小学6年生の時に夢中になって読みました。

コロボックルという蕗の葉の下にいる小さな人と一人の若者のわくわくドキドキする物語。

 

             コロボックル物語1 だれも知らない小さな国 (講談社文庫)

 

わたしに読書の楽しさを教えてくれた本です。

 

2ページ目は中学で読んだあの本…と考えがふくらんでいきます。

明けましておめでとうございます

昨年も心に残るいい本にたくさん出合うことができました。

とくに星野さんの文と写真に感銘を受け、こんなふうに静かで力強い風景を

心の中にもち続けていたいなと思いました。

写真展に行けたこともよかったです。

 


おやじネコは縞模様 (文春文庫)おやじネコは縞模様


同居している猫だけではなく、外から来る猫、道で見かける猫たちへの愛情が綴られた1冊。あまり関心のない蚊の部分はとばして読みました。

全体にほのぼのとした交流が描かれていますが、

「外ネコの3年間は、室内で飼われているネコの3年間とは全く違う気がする。」

という文に、本当にそうだと胸が痛くなりました。

わたしが外で会う猫たちも3、4年たつとかなり弱ってきます。冷たい風が吹いた今日、温かい部屋で寝ている3匹を見て、外の猫たちはどうしているのだろうと考えてしまいました。
著者:群ようこ

 


風葬 (文春文庫)風 葬

 

物語の舞台は道東の町とオホーツクの厳しい海。北国の冬の厳しさや暗さ、一昔前のソ連領海の怖ろしさがずっと漂っているかのようでした。

社会の裏、というよりは社会の底。その闇で行われて、世間の人が見ないふりをしている犯罪がいちばん怖ろしいと、読んでいてゾッとしました。 

そんな中で、自分の思いを貫こうとした過去の二人の女性と、その女性から繋がった二人の女性の静かで強い生き方に救いを感じて安堵しました。
 著者:桜木紫乃

 


口入れ屋おふく 昨日みた夢 (角川文庫)口入れ屋おふく 昨日みた夢


初めて読んだ宇江佐さんの作品は『卵のふわふわ』でした。江戸に生きる人々の情や知恵、心の機微の描き方が上手だなと感心し好きになりました。この作品で21冊目。全部は読んでいませんが、多分この作品で終わりかなと思いながら読みました。

解説にあるように、本当に「この世は生きがたい。それでも前を向いて生きていかねばならない」と、宇江佐さんはいつも語りかけてくれます。

 

体をマメに動かして働き、心を小ぎれいにして、人を思いやって生きていくこと。何気ないことが幸せなのだということ。もっと生きたいと願っていた作者の声のようです
 著者:宇江佐真理

 


彼岸花 (光文社時代小説文庫)彼岸花


いつの時代でも誰であっても、生きていくのはなかなか大変。貧しい人々や病気(病人)を抱えている人はなおさらです。気持ちがぎすぎすしたり誰かを恨みたくなったり、心の隙間から暗い影が入りこんできそうです。でも、それではなおさら生きにくい世の中になるばかり。

 

みんなが少しだけ人を思いやり、人の悲しみに寄りそって心を配れば、自分だって生きやすくなるはず、と宇江佐さんの物語が語りかけてくれます。
 著者:宇江佐真理

 


月と雷 (中公文庫)月と雷


生きている間に、人はどれだけ選ぶのでしょう。ものを、人を、仕事を、もっともっとたくさんのことを…。より良い方を選ぶことが幸せにつながると誰もが知っているのに、なぜか人は違う方を選んだりします。

この作品に登場する人々も、そっちを選んじゃだめ、というわたしの声が届かないようで、わたしの考える普通の幸せなんてたいした意味を持たないのだろうなと思いました。母親の直子は、選ぶということさえ忘れてしまったようでした。

心の中に差し込む一筋の光。その光がもたらす心地よさ。それは、安定とか普通とかいう言葉では計れない幸せなのでしょうか。
 著者:角田光代

 


任侠書房 (中公文庫)任侠書房


おもしろくて一気読み。今野さんの警察シリーズもわかりやすい人物像で楽しめますが、こちらもわかりやすい任侠道で、こんなヤクザならいてもいいかもと思ってしまいました。逆に警察って怖い^^!

出版社のメンバーもそれぞれのキャラクターがヤクザなみに熱く、コウリョウ戦争の場面など、ヤクザが引くほど殺気立っていて、なかなかのお仕事本です。人の道を説く名言もたくさん。
 著者:今野敏

 


美人薄命 (双葉文庫)美人薄命


タイトルの意味を追いかけたり、帯にあったミステリーという言葉を意識したりせず、老婆カエと青年総士のやりとりを楽しみながら読みました。

人の一生は、表からは見えにくい部分ほど重く深いと思っています。言葉にしにくいし、なかなか分かってはもらえないし。

カエの人生も大変なものだったのだと思いながら読んでいたら、最後にその人生とはちがう人生があったと知って、それもまた大変だったのだろうなと想像しました。その人生の物語は、総士だけが知り温めていくのです。総士はなかなかすてきな遺産を引き継ぎましたね。
 著者:深水黎一郎

 


とんぼの本 星野道夫と見た風景とんぼの本 星野道夫と見た風景


星野氏が亡くなって10年ほど後に書かれた作品。いっしょに暮らした3年間をていねいに振り返り、温もりと寂しさを抱きながら書かれたのでしょうか。アラスカへの思いを押しつけることなく、ゆっくり出会いの場を設けた様子に、星野氏のおおらかさと思慮深さを感じました。

『いきなりカメラを構えるのではなく自分の目でじっくり見て、マインドの部分で関わってから撮る』その思いがたくさんの写真から静かに伝わってきました。

遠い昔、シベリアとアラスカが氷の大地で繋がっていたように、二人の思いも、わたしたちの思いもきっと繋がっているはず。

 

以前「長い旅の途上」で心に残った文が、この本でも紹介されていました。

「漁に出る前、ウィリーは小さな漁船の上から薬草をすりつぶしたものをそっと海面にまき、この海に生きた祖先の魂に祈った。『あらゆるものが、どこかでつながっているのさ…。』~ぼくは人が祈るという姿にこれほど打たれたことはなかった。」
 著者:星野道夫,星野直子

 


宵山万華鏡 (集英社文庫)宵山万華鏡


藤田君の言うとおり、「恐るべし京都、恐るべし祇園祭、恐るべし宵山」です。夏の宵、移り変わっていく空の色と増える灯りが醸し出す世界が幻想的で、寂しい華やかさがあり、そして不気味で…。

確かに祭りは非日常で、酔ったように誘われ、不思議な世界へ連れていかれるような気がします。

きつねに惑わされる京都の裏路地も怖かったのですが、赤い金魚や万華鏡に翻弄される京都も怖くて、一人では歩けません。恐るべし森見登美彦です。
 著者:森見登美彦

 

 

12月14日、岩波ホールで映画を観てきました。

 

「湾生回家」

 

日本が台湾を統治していた時代に台湾で生まれ

台湾で育った人々を湾生とよびます。

 

敗戦と同時に彼らは故郷を失いました。

 

人生のしめくくりの時期に近づいて

台湾を懐かしみ、もう一度台湾を訪れた人々の思いを描いた

ドキュメンタリー映画です。

 

 

わたしの父も湾生でした

台北で生まれ、台北の学校を出て

台北から出征していきました。

 

敗戦後は台湾に戻ることはできず

南方の戦地からそのまま日本に帰還しました。

 

家も仕事もなく、引揚者と冷たい目で見られ

辛い日々だったと語っていました。

 

台湾はいいところだった、もう一度台湾に行きたい

そう思いながら病気で亡くなりました。

 

映画を観ながら、父の願いをかなえてあげられなかったことが

悔やまれて、涙が止まりませんでした。

 

二つの故郷を持つ人々

彼らを温かく受け入れてくれた台湾の人々

 

父も風になって、台湾の空に行ったのでしょうか。

 

 


ふゆねこ (講談社の創作絵本)ふゆねこ (講談社の創作絵本)


お母さんのいなくなった家はどんなに寂しくて、心はどんなに悲しいでしょう。幼い子どもを残して旅立ったお母さんは、どんなに切なかったでしょう。でも、静かに見回すと、家の中のあちらこちらにお母さんのやさしさが残されていて、心の中にも温かい思い出がいっぱい。悲しいけど、お母さんのそんな愛情があなたを包んでいることをを忘れないでと、白いねこが伝えに来てくれたようでした。

 読友さんの感想を読んで図書館で探した本。前に借りた人の伝票がはさんでありました。どんな子が借りて、どんな気持ちで読んだのかなと想像してみました。
 著者:かんのゆうこ,こみねゆら

 


あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)


原爆投下は正しかったと考えるアメリカ人は多いと聞きます。原爆記念館を訪れ、被爆者の話を聞いて初めて原爆の恐ろしさを知り、本当に正しい選択だったのか悩む人もいると。知らなければ、事実を学ばなければ、きちんと考えることはできません。

わたしの父も出征しましたが、その父が語る南方での戦争は、戦うよりも飢えて死ぬ兵士の方が多い悲惨なものでした。シベリアに抑留された兵士たちも同じでしょう。彼らの無念さから目をそらしたり美化したりせず、あの戦争についてきちんと知り、考えることが、次のより良い選択に繋がるのだと思います。
 著者:保阪正康

 


猫のよびごえ (講談社文庫)猫のよびごえ (講談社文庫)

 

町田氏独特の少しおちゃらけた文章ですが、それはそれは真剣な、小さな命への愛情と責任があふれています。 

小さなタイトルを振り返るだけでも、町田夫妻の思いが伝わってきて胸にこみ上げてくるものがあります。 「こいつは野良では生きていけない猫だ」 「みんなが生きていたこと、生きた時間を書いていきたい」 「京の着倒れ、…我が家の共倒れ」 「わたしたちはそんな風にして生きている」 そして解説にあった「名前の歌」。

 思いを受けとめて、わたしも猫が生きる時間を最期まで大切に見守っていこうと思います。
著者:町田康

 


刑事ファビアン・リスク 顔のない男 (ハーパーBOOKS)刑事ファビアン・リスク 顔のない男 (ハーパーBOOKS)


一人で北欧ミステリーフェアなどと盛り上がって(はまって)30冊。一番多いのはスウェーデンの作品ですが、読むたびにスウェーデンが抱いているイメージとは違って怖ろしい国に思えてきます。

人が殺される場面はどの国のミステリーも怖ろしいものですが、アメリカのようにピストルで1発というのではなく、怨念を込めてじわりじわりという感じで本当にひどい…。その分、殺人者の恨みや追う警察側の心理状態がこちらにもひたひたと伝わってきて、途中で閉じられませんでした。警官たちの家庭の問題や職場の人間関係など、抱える悩みも相変わらず。
 著者:ステファンアーンヘム

 


黄金の烏 (文春文庫)黄金の烏 (文春文庫)


シリーズの1作目は女たちの物語、2作目は男たちの物語。3作目は女たちと男たちの物語でしたが、まさかそこに大猿まで出てくるとは…。美しい描写や心理的なかけひきから、一気におどろおどろした血なまぐさい話へと変わっていき、2作目で終わりでいいかもと思っていたのに、また惹きこまれて読んでしまいました。

大猿も最後に出てくる人間も、八咫烏の世界を脅かす存在で、これからもっと恐ろしいことが起こりそうで気になりますが、う~、ここで終わりにしたい…。

 著者:阿部智里

 


烏は主を選ばない (文春文庫)烏は主を選ばない (文春文庫)


前作の、大奥を思わせるような女たちの美しくも怖ろしい物語に続く作品。でも、ストーリーは続編ではなく、前作と同時進行の男たちの側の物語です。こんな手法もあるのかと感心しながら、前作よりもおもしろく読みました。

若宮と雪哉のやりとりがおかしくて、何回かふき出す場面もありました。わかりやすい女たちの戦いと違って、裏の裏をかくような深いところで行われる戦いに、そうきたか!という感じ。

続きも読みたいけど、ここで完結と言われて終わりにしてもいいかも…。
 著者:阿部智里

 


マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェマカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ感想
叶うなら、このお店に行って温かい料理とお茶で疲れた心と体を癒してもらいたい…。そんなことを考えながら一気読みでした。

食べる人に少しでも元気に、そして幸せになってもらいたい、というやさしい気持ちにあふれたお店「マカン・マラン」。自らが重い病気にかかり、またドラァグクイーンという難しい生き方を選んだ店主だから、傷ついたお客の心がわかり、深く大きな気持ちで包み込んでくれるのでしょうね。 

表通りのおしゃれなお店にはない温かさがとても心地良い作品。 仕方ないからわたしは自分でおいしいスープ作りにチャレンジします。
 著者:古内一絵

 


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)


本を閉じて、しばらく眺めて、静かな作品だったなぁと思いました。登場人物の言葉が静かで、ときに流れる音楽も静かで、新宿駅の騒音でさえ何故か静かに感じられて、透きとおったプールの水、フィンランドの美しい湖や森の映像も静かで…。 

どこへ向かっているのかわからない怖さもありましたが、青春時代の悲しいできごとをなぞるように旅をし、その旅を終えて次の旅に出発する勇気を信じ、その旅に寄り添う人ができることを祈りたくなる結末でした。
 著者:村上春樹

 


レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝きレオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝き


表紙の女性の魅惑的な眼差し。レオナルドの秘密にもうそこから惹きこまれていきます。まるで、読んでいる自分がレオナルドと同じ時代に生きているように思えるほど、レオナルドや彼を取り囲む人々の様子がわかりやすくいいきいきと描かれています。

あふれる才能、創り出すものの苦悩、自分の思いを優先させる利己、何より科学的にそして哲学的に物事を追及していく探究心。ただ、死後、自分の作品がこれだけ世界を魅了し惹きつけることまでは予測できなかったかもしれませんね。

レオナルドの作品に限らず、絵画の魅力についても教えられました。
著者:コスタンティーノドラッツィオ