桜の季節になると思い出す本があります。

 

 

「櫻守」

 

        木樵だった祖父の後について山へ行っていた弥吉が

       植木屋としての修業を積み、桜に魅せられ桜を守り育ててきた生涯を

       戦前から戦後までを通して描かれています。

 

       桜の美しさとともに

       山や自然を守るとはどういうことか

       その道を一筋に歩み続けた祖父や師と慕う竹部の

       地に足の着いた実直な言葉が胸を打ちます。

       桜の下で眠りたい…桜の妖艶さと華やかさ、儚さが散りばめられた美しい作品です。

 

      桜といえばソメイヨシノだと思っていたのですが

      それが意外に新しい交配木で寿命が短いことをこの本で知りました。

 

 

 

       花の海といわれるほど広がった桜の森もきれいですが

       1本だけ凛と咲く桜の美しさにも魅せられるようになりました。

 

      我が家にも小さな植木鉢に毎年咲く桜があります。

      庭に植えようか迷いながら

 

 

        でも、この小ささが可憐でいいかなとも思って眺めています。

花粉症で重い頭と、咳、鼻水に悩まされながらの読書タイムでした。

風の強い日に下ばかり見て読んでいると、季節はいつの間にか春。

庭や道端にかわいい花たちが顔を出していました。


考えるマナー (中公文庫)考えるマナー (中公文庫)
おもしろく読んでいたのですが、マナーが多くて後半はちょっとバテ気味で読みました。

マナーには潤いが大切。理詰めでいくと心が渇いてしまうので、町田さんくらいがいいかも、とちょっと贔屓目な感想です。町田さんの「保留のマナー」、赤川さんの「横断のマナー」、穂村さんの「電車のマナー」…、いろいろな意味でおもしろかった!

一番考えさせられたのは楊逸さんの「放送のマナー」、カナダの鉄道会社の話でした。電車が遅れますのアナウンスなしに11時間の遅れ。駅員さんが一人一人に遅れる旨を声かけしますが、理由については説明なし。でも誰も駅員さんに詰め寄らないという内容でした。

あのくらいゆったりしていないとマナーのいい社会にはなりにくいかもしれません。忙しくて権利ばかり主張していると、マナーどころではなくなりますね
 著者:赤瀬川 原平,井上 荒野,劇団 ひとり,佐藤 優,髙橋 秀実,津村 記久子,平松 洋子,穂村 弘,町田 康,三浦 しをん,楊 逸,鷲田 清一

 


堪忍箱 (新潮文庫)堪忍箱
20年ほど前に書かれた短編集。意味が分かりにくくて読み返したものもありましたが、貧しい暮らしでも人を思いやりながらつましく生きる人々の、秘密や後悔など心の奥深いところに隠されていた部分が描かれています。そんな部分をもちながらも、人はなんて辛抱強くけなげに生きていることか…。

 「てんびんばかり」や「砂村新田」の、幼馴染や家族への強い思い。苦しいことが多い暮らしだと、小さな喜びがどれほど大切で守りたいものか、わかるような気がします。
 著者:宮部 みゆき

 


欠落 (講談社文庫)欠落

 

花粉が飛び交う風の強い日、今日は外出なし!と決めて読み始めました。同期シリーズの2冊目。

今回は闇がそれほど深くなく、同期から繋がる仲間との関係も、信頼し合い助け合う場面が多く、けっこう爽やかです。

公安は、その仕事内容を知りたいような知りたくないような怖ろしい存在。でも、社会の裏は必ずあって、平凡な人たちがその裏に引きづり込まれないように働いている人がいるのでしょうね。「国を守る」ために、切り捨てられる市民もいるような気もしますが。 

気の弱い人間ですが、警察小説はもう少し怖ろしい方が好きです。
 著者:今野 敏

 


骨の刻印 (ヴィレッジブックス F ヘ 5-2)骨の刻印


法人類学デイヴィッド・ハンターシリーズ。

深い悲しみを経験し、一度は法人類学から離れた主人公が、「死者に自身の物語を語らせること」が自分に与えられた仕事、天職だと考えるようになっての第2弾。

寒くて暗い、冬の嵐の孤島で起きた数件の殺人事件に、自分も殺されそうになりながら立ち向かっていく…。と書くと、いかにも勇敢に見えるけど、けっこうグジグジしていて脇が甘い。登場する人物がみな闇を抱えていて誰もが犯人に思え、その闇から目が離せなくて一気読みしてしまいました。

これで解決かと思ってからの二転三転。ミステリーではなくホラー?とぐったりするおもしろさでした。
著者サイモン・ベケット

 


世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)世界音痴


おもしろくて何度ふきだしたことか。おもしろくて、おもしろくて、それなのに何だか哀しくて…。

わたしが言うのも何ですが、穂村さん、大丈夫ですよ。音痴もなかなかすてきです。 
 著者:穂村 弘

 


予告された殺人の記録 (新潮文庫)予告された殺人の記録 (新潮文庫)感想


「自分が殺される日、ナサールは~略~朝、五時半に起きた」という文で始まる物語。そう、彼は殺されると決まっていて、いったいなぜ、そしていつどうやって殺されるのか、家族や町の人々の見聞きした話で語られていきます。

あちらからこちらからセリフが飛び出してくる群集劇のようで、これは誰?と何度も前のページをめくってしまいました。

結局彼が殺されたのは最後の1行。南米特有の不条理な因習と情熱に振り回された人々の怖ろしく、哀しく、そして滑稽にも見える殺人の記録でした。この独特の雰囲気を受け入れるのは難しいけどおもしろい…。
 著者:G. ガルシア=マルケス

 


はじまりの日はじまりの日


大型絵本。男の人が、少年にギターをあげるところから歌が始まります。ページをめくるたびに少年は大きくなり、そして、「FOREVER YOUNG」の曲が(歌詞が)流れていきます。

♪まわりの人々と たすけあって行けますように 

♪流されることなく 流れをつくりますように 

♪毎日がきみのはじまりの日  

 少年の歌をビートルズもジョーン・バエズもキング牧師も聴いています。 最後に少年は彼の歌を聴いていた少女にギターをあげます。伝えて…、でも君は君の自由な思いで。デュランの歌と絵が懐かしく心に響いてきました。
 著者:ボブ・ディラン



ルソー『エミール』 2016年6月 (100分 de 名著)ルソー『エミール』 2016年6月 (100分 de 名著)


若い頃から断片的には触れることが多かった「エミール」。今回も西件さんに導かれながらの読書でした。

子どもを育てることは、子どもがやがて生活することになる社会がどんな社会であってほしいかも含めて、育てる側が深く学ばなくてはなりません。ただ、学んでいなくても愛情や誠実さで、豊かな実践をしている人の方が多いような気がしますが…。

「幸福は比較できない」「不寛容への反対」など、共感も含めて自分の考えを整理し、さらに考えていくきっかけとなる内容でした。 

 農耕がもたらした陰の産物、所有と格差については、以前、NHKの番組で「鬱」について特集していたものでも取り上げられていました。ルソーは鬱については触れていませんが、この時代に格差や小さな国家につながる問題にも考えを及ばせていたことに感心しました。


 

ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル    

 

ごめんなさい。映画館ではなく先週BSで観たのですが、

1週間心の中で温めてやっぱり宣伝?しようと思って書いています。

 

わたしの貧しい語彙では語りきれないくらいすばらしい作品でした。

舞台はヨーロッパのどこでもない国の美しいホテル。

中心となる人物は、ホテルのコンシェルジュとロビーボーイ。

現代から60年代へ、60年代から30年代へと物語が変わるたびにスクリーンの大きさが変わります。

 

心に沁みる愛や誠実さやユーモアと、ゾッとするような残酷さ、欲望、時代のいたずら。

相反するものが淡々と描かれていて、ファンタジーかと思えるような不思議な雰囲気ももっています 。

一番いいなと思ったのは、汽車の中でロビーボーイが兵士に連れ出されようとしたとき、

コンシェルジュが「わたしのベルボーイにさわるな!」と叫んだ場面です。

ベルボーイを部下としてではなく、家族のように大切にしているのだなと、

その後二人の間に芽生えた友情や親子の情にも思える信頼関係が

物語をとても温かいものにしています。

 

会話の妙。ホテルや風景の美しさ。

大きなスクリーンで、ぜひもう1度観る機会があればと願っています。

 

 

 

 

 

 

  

じぶんのための子守歌 じぶんのための子守歌    工藤直子
 
  『 ひとよ はなよ むしたちよ  地球のうつわの あるがまま 』  やさしい言葉だけど、大地にそよぐ風のようにゆったりとわたしたちの心を包み、命は美しく輝いていると語りかけてくれます。 
  その地球が、自然や人々が、なんだか悲しい方へと逆回りしているように思えて、自分の心から元気が失われているようなこの頃。そっと、「だいじょうぶ。いっしょにいるよ。」と言ってもらっているようでした。 風がいきつくはるか遠く。そこにきっと希望が出番を待っているから、と。
  高齢者の施設で学習会のボランティアをしています。詩を音読するコーナーもあります。
よく取り上げるのは、まどさんと工藤さんの詩です。気持ちが温かく明るくなり、ときにはしっとりとした思いなります。
 
  
 
わたしの愛する孤独 わたしの愛する孤独  メイサートン
  メイサートンはアメリカ在住の詩人、作家。
  「愛はすべてのドアを開く」と信じているけど、そのドアから入ってくるものが自分を傷つけないとはかぎらない…。苦しい経験をしながら長い時間を生きてきた作者の、強いけど繊細な思いが伝わってきます。
  正直でいることは怖いけど、自身にも他者に対しても正直でいることが必要だと闘ってきて、たどり着いた孤独。それは傷ついた自分を守るための孤独ではなく、傷つきやすい世界を守るための孤独なのでしょう。
  訳された文がむずかしいのか、理解できない作品もありましたが、わたしの心に入ってくるものだけを繰り返して読みました。
 
 
 
  イギリスの田舎町を舞台にしたミステリー。
 法医学ではなく法人類学。刑事でさえ理解できなかった、解剖だけでなく死体が置かれていた場所の虫、植物、土などからもその死の真相に迫っていく仕事です。映像では絶対見たくない描写もありますが、主人公デイヴィッドが事件を解明、解決していく過程から目が離せず、ぐんぐん惹き込まれていきました。
  事件も悍ましいけど、田舎の閉塞感がもたらす人間関係も怖ろしくて、彼が犯人?いや、こっち?まさかこの人?と振り回されてしまいました。医学者とは思えないほど感情的で頼りないところもありますが、人や人の死に向き合う主人公の心の動きには共感できるものが多くありました。
  
 
びんぼう草 (ハルキ文庫)    びんぼう草   群ようこ
  子どものとき、友だちと遊んでいて「その草にさわると貧乏になるから、さわっちゃダメ!」と言い合っこしていました。どんな草だったか思い出せませんが…。多分わたしはいっぱいさわったのでしょう。
  この本に登場する人たちも、知らないうちにさわっていたのかもしれません。主人公も、脇で活躍する人たちも。でも、貧乏でも人には理解してもらえないような嗜好があり、それが小さな楽しみ、小さな幸せになっています。23年も前の短編集なので、今との違いも楽しめます。昔から猫にはやさしく、子どもと男性には厳しかったんですね。
 
 
ベル・カント    アンパチェット      ベル・カント
  ペルーで起きた日本大使館人質籠城事件をベースにして書かれた作品ですが、フィクションです。
  読み始めてすぐに、物語の中に、テロリストたちに占領された官邸に、わたしも閉じ込められてしまいました。銃で見張られてはいるけど、残酷な考えも行為もなく、むしろお互いを尊重し合い、一定の秩序の中で穏やかに生活する人質とテロリストたち。そこは、外界にある不必要なものを省いて、大切なものだけで満たされたとても豊かな空間でした。大切なもの…美しい芸術への憧れと尊敬、言葉を超えた信頼感や愛情。 
  辛い結末でしたが、一人一人の思いがていねいに描かれていて、気づかないだけで人はみんな豊かなものを持っているという作者の思いが伝わってきました。一人一人の思い…それは、束ねられない物語たち…。
 
 
山女日記 (幻冬舎文庫) 山女日記  湊かなえ
  山に登りながら自分の抱える迷いや悩みと自問自答する女性たち。彼女たちの考えや言葉が、一歩踏み出すごとに変わっていく山の姿と重なったり絡み合ったりして、新しい雰囲気の山岳小説のようで、おもしろいなと思いながら読みました。
  8編の山々に登場する人物がリンクしているのも好きな手法です。若いときは、わたしも山女でした。登っているときは本当にきつくて、もう登らないなんて思っているのに、頂上に着いた途端その辛さを忘れ、下るときは「次はどこに登ろうか」なんて考えていたこと、そのとき見た風景や花をは今でもよく覚えています。
 
 
いつも彼らはどこかに   小川洋子 いつも彼らはどこかに (新潮文庫)
  どの物語を読んでも思うことですが、小川さんの作品を読むといっそう強く思うことがあります。わたしが使う言葉と同じ言葉で書かれているのに、まるで違う国の言葉を使っているかのように独特で不思議な世界だなと…。そして、その世界がとても心地良くて、そこでずっと迷子になっていてもいいなと。 
  迷子になって小道を歩いていると、あゝなんてすてきな場所だろうと思えるところに出合います。誰にも気づかれず、静かに自分の仕事をしている「彼ら」がいる場所。 そんな場所を、わたしも自分の心の中に持っていたいと思います。
 
 
家族連写 (PHP文芸文庫)家族連写   森浩美
  はじめは、少しくすぐったい話で可もなく不可もなくという感じでしたが、読みながら、ほとんどの家族というのはこんなふうに可もなく不可もなくというものかもしれないなと思いました。 
  いろいろな問題を抱えながらも家族でいるためには、くすぐったく思えても相手を思いやる気持ちや言葉が必要だし、自分を育ててくれた親や大人たちに思いをはせることも必要なのでしょう。 失ったものは二度と帰ってこないから、後悔したくないから、と言い聞かせて、わたしも何とか家族と向き合っています。
 
 
 
 
                  ララは残された猫でした。
 
         
 
1年前にララのご主人が急死し、もう1匹の猫ナナといっしょに外ネコになってしまいました。
ナナは人懐っこくて保護できたので、里親さんを探して飼ってもらいました。
 
ララは用心深くて保護できなかったので、近所の人たちがご飯をあげて見守っていました。
とくにお向かいの男性が可愛がってくれて、自宅の敷地で食事をさせ、寝床も用意してくれました。
わたしも毎日餌を持って行っていたのですが…。
 
先日交通事故にあい旅立っていきました。
8才くらいだったようです。
お向かいさんがとても寂しそうでした。
もっと長生きさせてあげたかったけど、やさしいお向かいさんに可愛がってもらって、
きっと幸せな1年だったことと思います。