明けましておめでとうございます

昨年も心に残るいい本にたくさん出合うことができました。

とくに星野さんの文と写真に感銘を受け、こんなふうに静かで力強い風景を

心の中にもち続けていたいなと思いました。

写真展に行けたこともよかったです。

 


おやじネコは縞模様 (文春文庫)おやじネコは縞模様


同居している猫だけではなく、外から来る猫、道で見かける猫たちへの愛情が綴られた1冊。あまり関心のない蚊の部分はとばして読みました。

全体にほのぼのとした交流が描かれていますが、

「外ネコの3年間は、室内で飼われているネコの3年間とは全く違う気がする。」

という文に、本当にそうだと胸が痛くなりました。

わたしが外で会う猫たちも3、4年たつとかなり弱ってきます。冷たい風が吹いた今日、温かい部屋で寝ている3匹を見て、外の猫たちはどうしているのだろうと考えてしまいました。
著者:群ようこ

 


風葬 (文春文庫)風 葬

 

物語の舞台は道東の町とオホーツクの厳しい海。北国の冬の厳しさや暗さ、一昔前のソ連領海の怖ろしさがずっと漂っているかのようでした。

社会の裏、というよりは社会の底。その闇で行われて、世間の人が見ないふりをしている犯罪がいちばん怖ろしいと、読んでいてゾッとしました。 

そんな中で、自分の思いを貫こうとした過去の二人の女性と、その女性から繋がった二人の女性の静かで強い生き方に救いを感じて安堵しました。
 著者:桜木紫乃

 


口入れ屋おふく 昨日みた夢 (角川文庫)口入れ屋おふく 昨日みた夢


初めて読んだ宇江佐さんの作品は『卵のふわふわ』でした。江戸に生きる人々の情や知恵、心の機微の描き方が上手だなと感心し好きになりました。この作品で21冊目。全部は読んでいませんが、多分この作品で終わりかなと思いながら読みました。

解説にあるように、本当に「この世は生きがたい。それでも前を向いて生きていかねばならない」と、宇江佐さんはいつも語りかけてくれます。

 

体をマメに動かして働き、心を小ぎれいにして、人を思いやって生きていくこと。何気ないことが幸せなのだということ。もっと生きたいと願っていた作者の声のようです
 著者:宇江佐真理

 


彼岸花 (光文社時代小説文庫)彼岸花


いつの時代でも誰であっても、生きていくのはなかなか大変。貧しい人々や病気(病人)を抱えている人はなおさらです。気持ちがぎすぎすしたり誰かを恨みたくなったり、心の隙間から暗い影が入りこんできそうです。でも、それではなおさら生きにくい世の中になるばかり。

 

みんなが少しだけ人を思いやり、人の悲しみに寄りそって心を配れば、自分だって生きやすくなるはず、と宇江佐さんの物語が語りかけてくれます。
 著者:宇江佐真理

 


月と雷 (中公文庫)月と雷


生きている間に、人はどれだけ選ぶのでしょう。ものを、人を、仕事を、もっともっとたくさんのことを…。より良い方を選ぶことが幸せにつながると誰もが知っているのに、なぜか人は違う方を選んだりします。

この作品に登場する人々も、そっちを選んじゃだめ、というわたしの声が届かないようで、わたしの考える普通の幸せなんてたいした意味を持たないのだろうなと思いました。母親の直子は、選ぶということさえ忘れてしまったようでした。

心の中に差し込む一筋の光。その光がもたらす心地よさ。それは、安定とか普通とかいう言葉では計れない幸せなのでしょうか。
 著者:角田光代

 


任侠書房 (中公文庫)任侠書房


おもしろくて一気読み。今野さんの警察シリーズもわかりやすい人物像で楽しめますが、こちらもわかりやすい任侠道で、こんなヤクザならいてもいいかもと思ってしまいました。逆に警察って怖い^^!

出版社のメンバーもそれぞれのキャラクターがヤクザなみに熱く、コウリョウ戦争の場面など、ヤクザが引くほど殺気立っていて、なかなかのお仕事本です。人の道を説く名言もたくさん。
 著者:今野敏

 


美人薄命 (双葉文庫)美人薄命


タイトルの意味を追いかけたり、帯にあったミステリーという言葉を意識したりせず、老婆カエと青年総士のやりとりを楽しみながら読みました。

人の一生は、表からは見えにくい部分ほど重く深いと思っています。言葉にしにくいし、なかなか分かってはもらえないし。

カエの人生も大変なものだったのだと思いながら読んでいたら、最後にその人生とはちがう人生があったと知って、それもまた大変だったのだろうなと想像しました。その人生の物語は、総士だけが知り温めていくのです。総士はなかなかすてきな遺産を引き継ぎましたね。
 著者:深水黎一郎

 


とんぼの本 星野道夫と見た風景とんぼの本 星野道夫と見た風景


星野氏が亡くなって10年ほど後に書かれた作品。いっしょに暮らした3年間をていねいに振り返り、温もりと寂しさを抱きながら書かれたのでしょうか。アラスカへの思いを押しつけることなく、ゆっくり出会いの場を設けた様子に、星野氏のおおらかさと思慮深さを感じました。

『いきなりカメラを構えるのではなく自分の目でじっくり見て、マインドの部分で関わってから撮る』その思いがたくさんの写真から静かに伝わってきました。

遠い昔、シベリアとアラスカが氷の大地で繋がっていたように、二人の思いも、わたしたちの思いもきっと繋がっているはず。

 

以前「長い旅の途上」で心に残った文が、この本でも紹介されていました。

「漁に出る前、ウィリーは小さな漁船の上から薬草をすりつぶしたものをそっと海面にまき、この海に生きた祖先の魂に祈った。『あらゆるものが、どこかでつながっているのさ…。』~ぼくは人が祈るという姿にこれほど打たれたことはなかった。」
 著者:星野道夫,星野直子

 


宵山万華鏡 (集英社文庫)宵山万華鏡


藤田君の言うとおり、「恐るべし京都、恐るべし祇園祭、恐るべし宵山」です。夏の宵、移り変わっていく空の色と増える灯りが醸し出す世界が幻想的で、寂しい華やかさがあり、そして不気味で…。

確かに祭りは非日常で、酔ったように誘われ、不思議な世界へ連れていかれるような気がします。

きつねに惑わされる京都の裏路地も怖かったのですが、赤い金魚や万華鏡に翻弄される京都も怖くて、一人では歩けません。恐るべし森見登美彦です。
 著者:森見登美彦