名無しのリスの話(29)
「あー!!」
パパの大きな声が辺りに響きました。
パパはバランスを崩して、後ろに引っ繰り返ってしまいまったのです。
「大変だ!
パパ、大丈夫ですか?!」
メープルは慌てて、パパの傍に駆け寄りました。
「あいたたた…!!
頭を強く打ってしまったみたいだが、ご心配には及びません。」
パパは強く地面に頭を打ち付けましたが、そう言いながら、
すぐに頭を左右に振りながら、体を起こしました。
その次の瞬間、バパがまた、
「あっ!!
メ、メープルさん!!
あれは…。」
と、少し先の方を指差しながら、驚きの声を上げました。
パパの視線の先に、たくさんの種を付けた、千年桔梗一輪、
重い首を傾げて、立っていたのです。
「パパ、すごい発見ですよ!
ついに千年桔梗の種が見つけましたね!!」
メープルは興奮を隠せない様子で言いました。
「やったぞ!!
これで、キャンディを助けられるかも知れないぞ!」
パパは余りの嬉しさに、思わずメープルに抱きついて、
しばらく、お互いの喜びを分かち合いました。
それから、二匹の口いっぱいに千年桔梗の種を頬張ると、
キャンディの待つ、イースト・チェリー・ブロッサムの森を目指しました。
(つづく)
名無しのリスの話(28)
二匹は千年桔梗の花の下まで着きました。
「これが千年桔梗か。
近くから見ても、大きく美しい花だ。
それに、すごく甘い良い香だ。
たとえば、この花が種になるのを待つというのは、どうなんですか?」
パパが尋ねました。
「千年桔梗は花が枯れて、実になるまで、一週間くらいかかると言われています。
一週間ここで待ち続けるのは、かなり厳しい話になるでしょう。
一度元に戻って、また一週間後にここまでやってくるのも簡単な事ではありません。
でも、一週間後には確実にここにあるのですから、どうしても花が見つからなかった時に、
最後の手段として考えましょう。」
メープルはパパに言いました。
「そうか…。
花から実になるのに一週間。
そして、ここから家まで戻るのに三日間。
合わせて十日間。
キャンディの体力がそこまで持ちこたえられる、保障はないな。
一刻も早く、実を見つけよう。」
パパはなるほどと、メープルの言葉に頷きました。
二匹は花を中心に、千年桔梗の実を探し始めました。
でも、緑の大きな葉っぱを掻き分けながら探すのは、なかなか大変な作業です。
二匹からは体中、大粒の汗が流れ出ています。
パパがとうとう体力が尽きて、千年桔梗の大きな葉っぱの上でへたりこんでしまいました。
(つづく)
名無しのリスの話(27)
二匹は、雪に隠れたゴツゴツした岩の間を縫いながら、
千年桔梗を朝からさんざん探し続けたので、体中には沢山の擦り傷が出来て、
体力もそろそろ限界に近づいていました。
二匹は疲れ果てて、その場にベタッと座り込みました。
その時です。
「あっ!!」
メープルが突然、遠くの方を見て叫びました。
「どうした?
ひょっとして、千年桔梗があったのかい!」
パパはメープルに尋ねました。
「おぉー!!
我々は何と運が良かったのでしょう…。
向こうに見える、あの花こそが探し求めていた、千年桔梗です。」
二匹の居る位置の彼方に、お陽さまの光に照らされて、黄色く輝く一輪の花が見えました。
「あれが千年桔梗なのかい?
美しい花だ!!
今まで、あんな綺麗な花は見た事がない!!
でも、メープルさん。
花から実にならなければ、薬草にはならないんじゃぁないでしょうか?」
パパは尋ねました。
「千年桔梗は群れを作って一ヶ所に固まった場所に生えるのです。
それと、同じ群れの花の咲く時期はだいたい同じなのです。
一輪の花を見つけたという事は、その花より、少し早く咲いた花が実を結んでいる可能性が高いのです。」
メープルとパパは興奮しました。
そして、一目散に花の咲いている場所へと向かいました。
(つづく)