第66回角川短歌賞応募作50首詠 「新・建礼門院右京大夫集「白波の花」」【第1章】 | わたる風よりにほふマルボロ

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2020年5月提出

第66回角川短歌賞応募作50首詠

「新・建礼門院右京大夫集「白波の花」」

梶間和歌

 

 


あらたまの春風淡きはる霞よし野山より立ち初めぬべし

 

行くすゑも去りしむかしもはるかなり寿永四年の春を思へば

 

あさみどり野べの若草萌え初めて露さへ匂ふ春のあけぼの

 

野原には草のかをりすをち方にさへづり交はす百千鳥哉

 

ひらけ添ふ梅のひと枝にさしかゝる少しおくるゝ春の夜の月

 

ひとを待つことを忘れて明かす夜のいづこも同じ山際のいろ

 

朝霞八重に二十重に立ちわたる峰の雲ゐを花と定めよ

 

をちこちの梢にいましみ吉野ゝ花のはつ花すべき曙

 

春嵐やがて凪ぎゆくけはひすればけふ咲く花のおとぞ聞こゆる

 

あづま路は知られ馴れぬるうつせみの世に逢坂の関の杉むら

 

あふさかの関のみどりのまばゆさにほのかに添へる山桜かな

 

関越えて行き交ふ花のあふさかのうつろふ色とゝこしへの色

 

こゝろだにこゝろのまゝにならぬ世に吹けば吹かれて花沈みゆく

 

言はじたゞものゝふとして死に(むか)ふ人の心は白波の花

 

いま来むと言ひしことなきひとのうへに春の暮れとは祈るばかりぞ

 

さゞなみや比良の水面に敷く花も吉野ゝ花もうたかたの夢

 

さりともと思ふこゝろも絶え果てゝ()の芽春雨つひの日を知る

 

ありて逢はぬ世とあらぬ世の隔てなり寿永四年の春の夕暮れ

 

薄く濃き霞を分けてふる雨の静かなるこゑに濡れ尽くしたり

 

うちなびく春の川風去りぬらしいつか梢に匂ふさ緑

 

こゑやしぬるひさかたの雲飛び分けて死出の山より来よほとゝぎす

 

影追へばつれなく覚むる夢なれや昼のたちばな夜半の橘

 

夏木立その下陰をゆく風に紛るゝ夢の果てぞゆかしき

 

夢を見てあはれと思ひ嘆きわび死なるれどなほ生き夢を見る

 

死は等しなべてさだめと言はゞいへさかしらごとを言ふ人はされ

 

夢やいかに五月雨くだす雲暗み花橘の匂ひまされば

 

ねやの風に起き出でゝみれば雲ゐには野分と紛ふ夕立のこゑ

 

日に添へて増すかなしびと思ひしが生きてむかふやつゆしもの秋

 

初風の空に吹き交ふ草枕そのたび思ふ秋の別れを

 

月を待つならひを思ひ出づる夜はひとしほしげき荻の上風

 

まだ生きてありあけの月を振り仰ぐ秋風雲を吹き払ひたり

 

朝も夜もうつゝも夢も面影も寿永四年の春とこそ思へ

 

ぬばたまの夜風ふけゆく浅茅生に人待ちがほに鳴くきりぎりす

 

虫の音も弱り果てぬる夜の空に雲押し分けて出づる月影

 

草原(くさはら)にしぐれにゝたる風吹けば明日は霜おく神無月かな

 

憂きものと宮こを出でゝ行く関のひとに逢坂あふみあづま路

 

いづくにも置きどころなき露の消ゆる草ばを求む山を越え越え

 

草枕旅ぢの空に見るものか都に涙せし月の影

 

やすらひてねやの窓より仰ぎ見れば高くぞ月のさしのぼりたる

 

いなこれは星の冴ゆる夜ながらふる身には馴れざるものゝあはれを

 

けふ星を初めて見たるこゝちして(こと)問ふひとにつらなるか空

 

山鳥のしだり尾長き夜を越えてかはらぬ影ぞさむしろを訪ふ

 

寄せかへるかたもなぎさの浜千鳥のあしあと洗ふ志賀の浦波

 

かき曇る空に霞を紛へつゝひと夜の春を立つる夕暮れ

 

我がおもふひとにあふみの海を背にあらたまの年を又や迎ふる

 

思ひきやひとに遅れていくとせの春雨に濡れ月ながむとは

 

世の常もさかしら言もさもあらばあれひとゝ我れとのとこしへの夢

 

のちの世は忘れそ()れかみづぐきのあとは(けぶり)と消え果てぬとも

 

見しこともはた見しひとも面影も寿永四年もさはれうつせみ

 

五十とせを遅れけふまで我がおもふひとはこゝろにさてもうつせみ





建礼門院右京大夫

成り代わり連作としては

おそらく最後になる作品。

 

やりきったなあ。


 

語釈は明日以降の記事を

お待ちくださいませ。

 

 

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