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「言葉による見方・考え方」を働かせるっていうけど、どうすればいいかわかんないよ~。
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あらあら、あなた国語の先生でしょ。いつもどんな授業をやっているの?「言葉による見・考え方」を働かせるっていうのはね、単に言葉に注目して読むだけじゃなくて、「言葉に込められた思いやその意味を深く追い」ながら読むということなのよ!
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えぇ?「言葉に込められた思いやその意味を深く追う」って、どうやればいいの???
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「言葉に込められた思いやその意味を深く追う」っていうのはね、生徒が学習の中で、対象と言葉、言葉と言葉との関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉えたり問い直したりして、言葉への自覚を高めることで、言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる言葉・・・
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あ、ちょっと待って。言っている意味が分からなくてちんぷんかんぷんなんだけど。
、
ん~もう。しょうがないんだから-。じゃあ、「言葉に込められた思いやその意味を深く追」っている授業のひとコマを例を取り上げて、教えてあげるわよ。私が昔やった授業なんだけどね、その授業は・・・
★
キーン コーン カーン コーン
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「は~い、みんな。今日は「魚を育てる森(光村1年)平成10年」※の題名読み※からはじめて、意味段落ごとに読み進め※てきたまとめの時間です。」
※「魚を育てる森(光村1年)平成10年」の教材の概略:森林の下には腐植土が広がっている。その森林が海に接している場合、腐植土は海の生物に対して二つの役割を果たす。一つは、腐植土が、海に流れ出す水の量をコントロールして、土砂の大量流出を防ぎ、沿岸の動植物を護る役割であり、もう一つは、腐植土が、植物性プランクトンの成育に必要な栄養分や有機物質を供給し、食物連鎖を通して沿岸の動植物を育てる役割である。自然界は、一見結び付きのないようなもの同士でも、密接に関係し合って、そのバランスを保っている。わたしたち人間はそのバランスを壊さないようにしなければならない。
※題名読み:題名から、これから筆者がどんなことを述べるかを想像すること。
※意味段落ごとに読み進め:教科書を用いず、文章を意味段落のまとまりに分けてプリントに印刷し、それを逐次配付しながら学習を進めていく方法。生徒は「筆者は、次にどんなことを説明するのだろう。」「次はきっとこんなことを述べるのではないか。」という疑問と期待をもちながら意欲的に学習に取り組むことが期待される。
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「みなさんは、『まだ納得いかないことや、筆者の説明が不十分だな』と思うことはないかな?」
生徒 A :「先生、この文章の初めの襟裳岬の部分※ですが、クロマツだけの森林で腐植土ができるのでしょうか?」
※文章の初めの襟裳岬の部分:この文章の導入部には、襟裳岬の森と沿岸の動植物の関係が述べられている。
[襟裳岬の自然の変化]
●現在 : クロマツの針葉樹
●40年前 : 襟裳砂漠
●江戸時代: 広葉樹の森林地帯
[砂漠化から現在のクロマツの針葉樹林に至る経緯]
●コンブを求める人々、開拓農民による森林伐採→紙の材料としての森林伐採→砂漠化
↓
◎コンブの生育の悪化、沿岸部の魚たちの激減
↓
●強風による砂の害→久防止の緑化事業→クロマツの防砂林
↓
◎コンブや魚が戻る
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「それはどういうことかしら?みんなに分かるように説明してくれるかな?」
生徒 A :「クロマツは針葉樹ですよね。あんな針みたいな葉っぱが散り落ちたくらいで腐植土ができるのかなぁって思ったんです。カシワ、ナラ、シラカバなどの広葉樹を植え直したんだったらまだ分かるんですけど。」
生徒 B :「なるほど、そうだ。それに針葉樹は常緑樹で葉があまり落ちなそうだよね。」
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「いいところに気がついたわね。じゃあ、クロマツを辞書で引いてみようか。」
生徒 C :「マツ科の常緑高木って載っています。」
生徒 D :「でも、長い年月をかければ腐植土ができるんじゃないの?40年もかかっているんだよ!」
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「40年って長いのかな?もう一度文章を注意深く読んでみようか。」
生徒 E :「砂漠化した理由が書いてあるところを読むと、江戸時代後半から徐々に砂漠化していったことが分かります。それに比べると40年は短いんじゃないかな?」
生徒 F :「うん。確かに短いよ。どこまで行っても草木のない砂地と砂山が40年くらいで腐植土のある森になるとは思えないなあ。」
生徒 D :「う~ん、そうかぁ。さっきは、40年もかかっているんだから、長い年月をかければ腐植土ができるんじゃないかと思ったけど、言われてみれば、E くんや F くんの言うとおりだと思いました。腐植土のある森はできなそうだと思います。」
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「なるほどね。先生もみんなの意見はもっともだと思うなぁ。これに気づいた A くんはすごいね!でも困ったことになったわ。じゃあなぜクロマツを植えたらコンブや魚が戻ってきたのかしら?」
生徒:「・・・」
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「では、質問を変えるわね。砂漠化したらコンブや魚が消えた。クロマツを植えたらコンブや魚が戻ってきた。しかし、クロマツ林に腐植土層ができたとは思えない。だとすれば、砂漠化してコンブや魚が消えた理由は何かしら?」
生徒 G :「砂漠化したのだから砂や土が大量に流れ込んだんじゃないですか?」
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「なるほどね。クロマツ林はそれを防げるのかな?」
生徒 G :「う~ん、腐植土がないとだめだなぁ。でも、クロマツだって根を張っているんだから少しは防げるんじゃないかな?」
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「G くんのように砂や土に目をつけたのはなかなかおもしろいね。砂や土が海に運ばれる可能性は他にないかな?もう一度文章に戻って考えようか。」
生徒 H :「もしかしてだけど、砂や土が飛んで運ばれることはないかな?文章中に「強風によって家の中まで侵入する砂」という表現があったよ。」
生徒 I :「あっ確かに。第2段落には「風速10メートルをこえる風にその砂が飛ばされて、目も開けられないほどであった」とあるからきっとすごい風なんだよ。その可能性は大いにあるよね。」
生徒 H :「そうか!クロマツは砂が飛ぶのを防いでいたんだ!考えてみればもともと防砂林なんだものね。」
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「結論が出たみたいね。さあて、ここまで考えてくるとこの襟裳岬の森と海の関係は本論の具体例としてぴったり合っているかしら?」
生徒 A :「あっ、ぴったり合っているとは言えないぞ。だって、襟裳岬の例は腐植土と海の関わりを表しているとは言えないじゃないか!」
生徒 J :「うん、確かにそうだね。今までは襟裳岬の話は森の腐植土と海の生物の関わりを表しているものだと思っていたよ。」
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「先生もそう思うわ。この襟裳岬の例は、襟裳岬特有の自然条件における森と海の関わりの例に過ぎないと考えることができそうね。」
生徒 B :「えぇ~?それじゃあ、文章の最初にもってきた襟裳岬の例は、ふさわしくないってこと?」
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「んー、ふさわしくないって結論づけるのはちょっと早すぎるかなぁ。おそらく、筆者は、襟裳岬の森と海との関係は本論の具体例としてぴったり合っていないということは、当然分かっていたはずよ。」
生徒 C :「えー、じゃあどうして、襟裳岬の森と海との関係をあえて文章の最初にもってきたんだろう?」
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「筆者は文章の最後に、どんなことを述べてまとめていたかしら?もう一度文章に戻って考えようか。」
生徒 D :「え~と、筆者は自然のバランスを保つことの大切さを最後に述べています。」
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「そうね。その自然のバランスの取り方はどこでも同じ?」
生徒 E :「自然のバランスの取り方は、同じなわけないじゃないですか!」
生徒 F :「そうだよ。森と海の関係だって場所によって微妙に違うはずだよ。」
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「場所によって違うよね。筆者は、冒頭に襟裳岬の例を出すことによってそのことを示したかったんじゃないのかな?」
生徒 G :「それだけ自然のバランスを保つことは難しいってこと?」
生徒 H :「なるほど!腐植土の話じゃなかったんだ!」
生徒 I :「え? G くん、そう思ってたの?それじゃ、理科の学習じゃん!」
生徒 : 「あはははは。」
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ふぅ~ん。これが「言葉に込められた思いやその意味を深く追う」授業か。こんなふうに、言葉にこだわって、その意味を徹底的に追究すれば、授業は変わりそうだな。
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そうね。これまで、説明的文章の学習では、筆者が何を述べているかを正しく理解することに主眼がおかれてきたわよね。
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うん、確か「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力」って示されていたような。
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あらぁ!よく勉強しているわね。その通りよ。もちろん、これはとても大切なことよ。しかし、これからの時代を生きていく生徒たちにとって、ただ「書いてあることが分かる」だけでいいのかしら?
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う~ん、「書いてあることが分かる」だけじゃ、足りないような気がする。確か「様々な媒体の中から必要な情報を取り出したり,情報同士の関係を分かりやすく整理したり・・・」って示されていたような。
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まぁ、ほんとによく勉強しているわね。そうよ。社会が複雑になり、情報が氾濫する中で、そのたくさんの情報を論理的に見極め、真実を追究する態度を育てる必要があるの。そのためには、「言葉に込められた思いやその意味を深く追う」国語の学習はとっても大事だと思うわ。
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そうかぁ。僕も、国語の授業で、内容を読み取る力だけでなく、筆者の思いや願いに共感したり、自分の身近にある事柄と重ね合わせて理解を深めたりするようなことを、生徒と一緒にやりたいなぁ。
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そうね。加えて、筆者の言うことには飛躍があるとか、説明が不十分であるとか、そんな批判的に読んだりする読み方ができるようにもさせたいわね。
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よっしゃ!明日の国語の授業では、僕も言ってみるぞ!「まだ納得いかないこと、『筆者の説明が不十分だな』と思うことはないかな?」って。
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まあまあ、言えばいいってものでもないのよ。普段から「言葉に込められた思いやその意味を深く追う」ような姿勢で、ちょっとした小さな積み重ねをしていくことが大切なのよ。
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うん、分かったよ。背伸びしないで、言葉にこだわり、その意味を徹底的に追究するような国語の授業に心がけるようにする。今日は、いい勉強になった。ありがとう。
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応援しているわ。