ゴジラ-1.0 帝国海軍の残存艦艇と掃海船「新生丸」 | 艦艇・船舶つれづれ

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旧帝国海軍および海上自衛隊の艦艇、海上保安庁の船艇、主に戦前の民間船舶を中心としたブログです。
「海軍艦艇つれづれ」からタイトルを変更しました。

今日は朝からショッピングセンター「アリオ鳳」へ行ってきました。

ここは、ショッピングモールに付き物の映画館があります。

 

そうです、映画を見に行ってきました。

 

「ゴジラ -1.0」の小説とパンフレット

 

今回の「ゴジラ」は、設定が終戦直後の東京から相模湾、ゴジラに対峙するのは旧帝国海軍の生き残りの艦艇です。

 

この映画には、連合国から返還された設定で、一等巡洋艦「高雄」が出てくることは、ネットで話題となっていますね(終戦の日・海上に浮いていた一等巡洋艦「高雄」)。

 

一等巡洋艦「高雄」に襲い掛かるゴジラ

(引用:「ゴジラ -1.0」パンフレット、P.6)

 

その他、多数の帝国海軍艦艇が出てきます。

映画では、ゴジラを倒す「海神作戦」重要な役割を担う一等駆逐艦「雪風」「響」「夕風」「欅」(三菱長崎造船所資料館の「幸運の斧」と駆逐艦「夕風」

 

画面奥から一等駆逐艦「雪風」「響」「夕風」「欅」

(引用:YouTube「Godzilla Minus One Official Trailer 2 2023」、キャプチャ)

 

「ゴジラ」が東京に襲来することを検知するために配置された小艦艇たち

 

敷設艇から敷設特務艇に変更された旧「測天」型と思われる艇

(引用:YouTube「【予告】映画『ゴジラ-1.0』《2023年11月3日劇場公開、キャプチャ)


旧「測天」型の敷設特務艇は、終戦時に「黒島」「加徳」「黒髪」「片島」「鷲埼」が日本に残っていました。

 

艦載艇の配置および煙突形状から「第一号」型海防艦と思われる艦も登場します。

 

「第一号」型海防艦思われる艦

(引用:「ゴジラ -1.0」パンフレット、P.6)

 

空を飛んできたちぎれた船体は、直前に「第十三号」型駆潜艇と思われる平甲板型の船のカットがあったことから、この駆潜艇だと思われます。

 

空を飛ぶ「第十三号」型駆潜艇と思われる船体

(引用:YouTube「Godzilla Minus One Official Trailer 2 2023」、キャプチャ)

 

そして、序盤の主役的な船であるのが掃海船の「新生丸」です。

その大きさは、操舵輪の後ろに立っている佐々木艇長の身長と比較すると、10m程度、幅3m程度に見えます。

 

掃海船「新生丸」

(引用:YouTube「Godzilla Minus One Official Trailer 2 2023」、キャプチャ)

 

ベースが漁船かと思い、書籍等で漁船と比較してみましたが、どうも漁船とは根本的に作りが違うようです。

 

船体形状が似ている漁船を探すと、ドーリットル空襲で米国機動部隊を発見した底引き網漁船の特設監視艇「第二十三日東丸」が、同じ平甲板型(船体の上部が一直線になっているもの)ですが、総トン数90トン、長さ26.5m、幅5.1m、船体も鋼製で、磁気機雷に反応してしまいます。

 

特設監視艇「第二十三日東丸」

 

また、以前のブログ(戦争最前線での「漁業」任務・近海鰹漁船「盛徳丸」)で取り上げた沿岸漁業用小型漁船も見てみます。

 

戦前の沿岸漁業用小型漁船

(引用:「戦う日本漁船」大内建二、2011年10月、光人社、P.35)

 

これら、漁船に共通するのは、船首から船橋までの距離があり、前甲板には魚を入れる船倉があることでした。

対して「新生丸」は、前甲板が狭く船橋が船の中央より前方にあり、漁船の船型とは言い難いと思います。

 

帝国海軍にはこれに似掃海作業た船型の木造船がありました。

「第一号」型駆潜特務艇と呼ばれる艇で、戦時中に大量建造されており、戦後は掃海作業も担当しています。

 

「第一号」型駆潜艇

(引用:「世界の艦船・日本海軍護衛艦艇史」増刊第45集、No.507、海人社、P.128)

 

この船の操舵室の外枠を外し、船室部分を前後に伸ばし、船尾側に機銃と掃海具用のダビットを設置すれば、それなりに似た感じになるのではないかと思います。

しかし、海上保安庁の巡視船となった後の要目を見ると、総トン数約90トン、長さ29.2m、幅5.7m、最大搭載人員17名となっており、「新生丸」よりかなり大きい船になります。

 

「新生丸」にかなう船はなかなか見つかりません。

ですが、歴史的な経緯から見ると、「第一号」型駆潜艇がモデルとなっているといってもよいのではないかと思います。

戦時に急造された木造特務艇の戦後の活躍と朝鮮戦争における悲劇

 

「ゴジラ -1.0」は、終戦により軍人ではなくなった男たち、特に特攻崩れの主人公、技術士官の男、掃海船の艇長となった男、部下をゴジラに殺された航空隊整備部のリーダー、旧「雪風」艦長など、それぞれの「戦争の終わらせ方」が描かれており、壮絶な戦争体験に裏打ちされた『人間の物語』でした。

 

そして、民間人になった旧軍人の方々が、一体となってゴジラを仕留めようとするクライマックスには、思わず涙が流れてしまいました。

 

興行成績は順調なようですが、それを裏切らないストーリーと迫力のある画像の映画です。

時間を取ってもう一度見に行きたいと思っております。

 

クライマックスシーンでキーとなる戦闘機である

帝国海軍・局地戦闘機「震電」(引用:Wikipedia)

(http://www.warbirdphotographs.com/NavyJB&W4/J7W-20s.jpg, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10016870による)

 

【参考文献】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「常民の戦争と海」中村隆一郎、1993年8月、東方出版