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Walking in the Air

ファンタジーPBCサイト「鉱山都市フランネール」の登録PC、ニコルの活動日記です。



PBCをご存知でない方、当PCに興味のない方は閲覧をご遠慮下さい。

たまに遭った人(主に魔物)が言うけれど、あたしには「人を困らせるのが好き」という趣味が分からない。


そりゃあたしだって子供の頃は木に登って木の実を人の頭に落としたり、落とし穴掘ったりイタズラしたけど。


そういうのと、「人を困らせて楽しむのが好き」という人たちの行動は全然違う気がする。


あたしが人の笑顔を素敵だと思うように、その人達も人の泣き顔や困った顔を素敵だと思うんだろうか?



ランプルールに持っていかれてしまった剣のスペアを探しに、職人街の武器屋まで。

ちょっとお金がピンチなんだけれど、仕方がない。


あたしが話し込んでると、不意に頭の上にコインが落ちてきた。

それから、あたしの足許に他のお客さんが剣を落っことした。

なんだか落ち着かない店だなァ……と思っていると、今度はあたしが何かに足を引っ張られて危うく転びそうに。

あわや床板とキスか、と思ったあたしをすんでのところで助けてくれたのは、以前グレニッツ廃坑で遭ったあの変態ピエロだった。


あいつは相変わらず、胸糞悪いいやらしい笑みを浮かべていた。

何を考えているのかさっぱり分からない。ただ、ひとつ分かった事があった。

あたしが武器屋に入ってからの、コインが降って来たり剣を足元に突き立てられたり、足を引っ張られたり。

それは全部、あいつの仕業に違いないってこと。


人をバカにするにも程がある。

転びそうになったのを助けてくれたお礼と言って、思いっきりビンタしてやった。

それでもあいつはニヤニヤしていた。

何が目的でそんな事をしているんだろう?

あたしが困ったり驚いたりする顔がそんなに楽しいんだろうか。


……とりあえず、今度遭ったら問答無用で殴る。



遭遇者:イャン・ドゥ

魔物は悪徳を愛し、人を襲い、その血肉を喰らう。


「人の敵である」ゆえにこその魔物と今までそう教えられ、そう信じて疑わず生きてきた。


けれど、魔物の中には人のように穏やかな生活を好み、ひとを愛する者もいるという。


―――それなら、あたしは人と魔物の境界を、どうやって線引きすればいいのだろう。



ガルーダとラグーナ遊歩道のゴンドラ乗り場で待ち合わせ。

彼の提案で、一緒にゴンドラに乗って水上散歩をすることにした。


彼は変わらずあたしを心配してくれる。少し過剰なくらいに―――けれどそれはきっと、傷つく人々を今まで沢山見てきたからなのだろう。

親身な様子に、まるでお兄ちゃんを持ったような気がする。頼りがいのあるお兄ちゃんだなと思って、可笑しくなった。


彼から、彼の友人の魔物の話を聞く。

魔物だけれどお針子をしていて、堅実に暮らしていたのだとか。

あたしは魔物といえば人を見下し、欲望の赴くままに肉を喰らい、人々のささやかな平和を破壊していく存在ばかりだと信じて疑わなかった。

けれど、彼は例外もあると言う。魔物という存在全てを憎んでは眼が曇ってしまうと。魔物相手でも、温かい交流は持てると。

それなら、あたしは憎むだけだった魔物とこれからどうやって付き合っていけばいいのだろう。


最初はゴンドラで彼の向かいに座っていたけれど、彼に招かれて隣に行く。

頭を撫でてくれる、彼の手が暖かい。


結局、人でも魔物でもひとりずつ会って判断していくしかない。種族で、性別で、年齢で、一纏めに括って判断することなど出来ない。

そんな彼のアドバイスは、きっと彼の今までの経験が導き出した結論なのだろう。それならあたしはそれに従おうと思う。

憎いヴァンパイアの中にも、例外がいるかもしれない。ひとを愛し、ささやかな生活を望む吸血鬼がいるかもしれない。


彼の強い意思を宿した瞳と、大きな手の温もりを想って眠る。

実りの多い時間だった。明日からは、新しい視点で物事が見られるかもしれない。



遭遇者:ガルーダ

人は誰でも、自分だけのルールを持っている。


自分が自分でいる為のルール。それを破壊されると、自己が保てなくなる。


アイデンティティの崩壊。


自分だけの大切なルールを根底から揺るがされ、覆される。それはとてつもなく恐ろしい事だ。



吸血鬼ランプルール。

彼の事は、随分前にモーティから聞いていた。

曰く、「神聖な武器で傷付けられるのを望んでいるような節のある、烏のような男。道化然とした紳士」。

廃屋で遭った彼は、まさしく彼女の評する通りの性格だった。


慇懃で優雅な彼の振る舞いは、黴臭い廃屋には似つかわしくなかった。

舞踏会場や王宮にでもいるのが似合っている、そんな雰囲気。

あたしを「御嬢様」という彼の言葉が気に入らなくて。莫迦にされている気がして。

彼をなんとしても仕留めてやろうと、あたしは息巻いた。


聖なる白木の杭は、ヴァンパイアを確実に滅ぼす事のできるもっとも有効な武器のひとつ。

鞭で彼の身体を拘束し、それを彼の胴に突き立てる。

―――けれど、彼は死ななかった。



「雑種の弱点は、ここにはない」



そんな莫迦な。

信じない。信じられない。信じたくない。

心臓を突いても死なない?そんなヴァンパイア、聞いた事がない。

それに、彼は聖句まで紡いだ。おまけに教会に立ち入る事も出来ると!


あたしの常識が崩れ落ちる。

彼には沢山のダメージを与えた。傷を穿った。だけど、けれど。

―――完敗だ。あたしは……彼が最後に言った言葉。その意味さえ分かっていない。



遭遇者:ランプルール

人は願いを叶える為に、教会の聖像や、空の星々や、水の流れや、笹竹にそれを託す。


それらには神様や妖精、精霊が宿っていると信じているから。


託した願いの全てが叶う訳ではないけれど、それでも託さずにいられないのは、


きっと自分を護ってくれている眼に見えない誰かの息吹を感じたいからなのだろう。



水の大祭(フィエスタ・グランデ)が始まった。

街のどこを見ても、綺麗な花束やリボン、水晶の飾りでいっぱい。

田舎でのささやかなお祭りしか見た事がなかったあたしにとって、初めての大きなお祭り。

とてもエキサイティングで、ワクワクする。


お祭りの間、水辺に蒼い花を流して願い事をするとそれが叶うという伝説があるらしくて、早速やってみた。

リトゥラ湖の下流で、舞い躍る蛍に遭遇。とても幻想的で、溜息が零れた。


願い事をして花を流し、さて帰ろうと思ったら、元気のいいお客さんが。

彼女の名前はリシュア。耳の長い、彼女はエルフ。エルフは何度か見かけた事こそあるけど、直に接触するのは初めて。

文献では、エルフは思慮深くて落ち着いているという印象だったけど……彼女はとにかく元気で、そのイメージとはかけ離れていた。


勢いよく来すぎたお蔭でずぶ濡れになってしまった彼女に、ジャケットとハンカチを貸す。妖精種のエルフがどれだけ頑健なのかは知らないけれど、用心しておくに越した事はない。風邪なんて引かないように。


ジャケットとハンカチは、今度逢った時に返してもらうって約束。

金色亭で、ご飯でも食べながらお話しできればいいかな。



遭遇者:リシュア

人は生きる為に牛や豚を殺して食べる。吸血鬼は生きる為に人の血を吸う。


そのふたつにどれだけの違いがあるのか?何故吸血鬼だけが断罪されなければいけないのか?


吸血鬼たちはみんなそう言う。自分たちもお前たちも何も変わらないと。なのになぜ、と。


―――あたしはまだ、その問いに明確な答えが出せない。



竜岩に剣呑な魔物が出るらしいという情報を聞いて、調査に赴く。

行けばなるほど、食い散らかした肉や足跡がそこかしこに残っていて、背筋が寒くなった。

まだ、近くにいたらどうしよう……?

そんな事を考えながら、先に進む。


結局あたしが調査していた魔物には遭わなかったけれど、その代わりにヴァンパイアに遭遇したのは、あたしにとって幸運だったのだろうか、不幸だったのだろうか。

本を片手ににこやかに挨拶をしてきた彼は、剣呑な吸血鬼というイメージからは程遠かったけれど。

でも、ヴァンパイアだという時点でどうしても信用は出来なかった。


あたしは闘いを挑み、彼を聖水で焼け爛れさせてやった。

あたしの方も、彼のナイフと刀で傷を負ったけれど……。


彼はずっと、自分には敵意はないと言っていた。

それが嘘だったのか、本当だったのか、あたしには分からない。

けれど仮にそれが本当だったとしても―――あたしには、彼らと闘う以外に道はないのだ。

ヴァンパイアとあたしの一族の遺恨は根深い。


この遺恨が晴れる時は、どちらかが滅びる時以外にはないのだろう。

……気分が悪い。



遭遇者:ヴァレンタイン