20090108 日本経済新聞 朝刊

 地方銀行の連携が加速している。全国地方銀行協会に加盟する九州、四国などの地銀の利用者は、それぞれの地域内のどの地銀ATMで現金を引き出しても平日昼間の手数料が無料になる。地銀業界は今後、全国十程度の地域ごとにATM提携を進める方針で、最終的に全国六十四地銀が相互に無料開放する構想もある。営業地盤の重ならない地銀が連携し、ゆうちょ銀行に対抗する狙いだ。
 福岡銀行、西日本シティ銀行など九州の十地銀は二月をめどにATMを相互開放する。いずれかの銀行のキャッシュカードであれば、他行のATMでも平日昼間の引き出し手数料が無料になる。夜間や休日の引き出し手数料は自行と他行の顧客を区別せず、同一料金にする。利用者は約六千三百台のATMが、取引している銀行のATMと同じ条件で使える。
 伊予銀行など四国の地銀四行は、すでに平日昼間の手数料を相互に無料にした。関東では横浜銀行、千葉銀行、東京都民銀行など地銀六行が昨年から相互に無料開放している。
 今後は全国十程度の地域ごとに相互開放を進め、早ければ二〇一〇年にも全国六十四地銀が相互開放に踏み切る構想もある。地銀のキャッシュカード一枚で全国どこの地銀ATMでも同じ条件で預金の引き出しなどが可能になる。地銀間の連携で利便性を向上し「ゆうちょ銀行に対抗するのが狙い」(西日本の地銀首脳)という。
 重複する業務の合理化や商品の共同開発の動きも急速に広がっている。
 横浜銀行など二十一行はシンクタンク業務で提携した。地域経済分析などのノウハウを共有したり、マクロ経済分析など重複する業務を共同化する狙いだ。新たに参加を検討している地銀もあるという。住宅ローン商品、マーケティング、リース業務などの共同研究でも、それぞれ二十以上の地銀が提携した。
 地銀は不良債権処理損失が急増しているほか、投資信託など金融商品の販売も低迷。保有する有価証券の損失も拡大している。厳しい経済環境のなかで、地銀間の提携は将来の収益増加やコスト削減を後押しする。
 一方、全国の第二地銀(第二地方銀行協会に加盟)は連携の動きがまだ目立たない。「地銀業界における横浜銀行のように、中心となって動く銀行がないことも一因ではないか」(関東の第二地銀幹部)という。同じ地域内の地銀の利便性が向上すれば、第二地銀が競争上、不利になるため、一部には危機感も広がっている。



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20090108 日本経済新聞 朝刊

 第一生命保険がインドに現地銀行との合弁で設立した生保会社が月内にも営業を始める見通しとなった。昨年末にインド当局から営業の認可を取得。養老保険など貯蓄性商品を中心に販売する方針だ。インドで国内生保が営業するのは初めて。
 第一生命は二〇〇七年に現地大手銀のバンク・オブ・インディア(BOI)、ユニオン・バンク・オブ・インディア(UBI)と合弁設立のための契約を締結。合弁会社「スター・ユニオン・第一ライフ」の資本金二十五億ルピー(約四十八億円)のうち、二六%を第一生命が出資した。



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20090108 日本経済新聞 朝刊

 製造業派遣の見直し論が急浮上している。規制強化は雇用機会拡大に逆行しないか、見極めが必要だ。性急な規制は逆効果になりかねない。
 工場など製造現場への労働者派遣は二〇〇四年三月施行の改正労働者派遣法で解禁された。雇用が負債、設備と並ぶ「三つの過剰」と見なされ、日本のバブル経済崩壊後の企業経営でなお重しとなっていた時期だ。
 規制緩和は多様な働き方を認め、雇用のミスマッチを解消することに主眼があった。欧米では人材派遣会社の売り上げに占める製造業派遣の割合が五―七割に達するという。経営側にとって派遣は直接雇用する期間従業員に比べ、安い労務費で要員確保が迅速にできる。請負と比べても現場の工程管理がしやすい。
雇用機会を拡大
 解禁を受け、自動車や電機など製造業が緊急増産要員として派遣社員を受け入れた。厚生労働省によると、製造業で働く派遣労働者数は〇七年六月時点で前年比九二・六%増の四十六万人強に達し、雇用機会拡大に一定の役割を果たした。
 派遣労働の柔軟さは減産時の反動の大きさを伴う。同省によると今年三月までに職を失うとみられる非正規労働者は約八万五千人。業種別では製造業が九六%を占め、雇用形態別では派遣が三分の二強を占める。
 だが、製造業への派遣を禁止すれば雇用が改善するとは言い切れない。「昔も今も製造業は景気変動の影響を和らげるために非正規雇用を必要としている。規制緩和前に戻れば今度は請負や期間従業員が職を失いかねない」(八代尚宏国際基督教大教授)。企業の中には「将来の増産時に機動的に人材を集められなくなる」との懸念も出ている。コスト増を嫌って国外への生産シフトが進めば、正規労働者にも影響が及ぶ。
二極分化を懸念
 急激な雇用悪化は非正規労働者への安全網の不備を浮き彫りにした。政府は今国会に雇用保険法改正案を出し、保険適用に必要な雇用見込み期間を「一年以上」から「六カ月以上」に縮める方針だが、なお網の目からこぼれる労働者は多い。社会保険の適用拡大はもちろん、非正規労働者が低賃金から抜け出すための教育訓練など包括策が課題となる。
 経済協力開発機構(OECD)は〇八年版対日経済審査報告で「日本の正規労働者と非正規労働者の賃金格差は生産性の差をはるかに上回っている」と指摘し、「デュアリズム(二極分化)」の拡大を懸念している。
 日本経団連の御手洗冨士夫会長が雇用を守る選択肢として挙げたワークシェアリング(仕事の分かち合い)は正規労働者にとり労働時間と収入を減らす痛みを伴う。「非正規」の雇用悪化は正規労働者にとって対岸の火事ではない。
(編集委員 奥村茂三郎)



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20090108 日本経済新聞 朝刊

 非正規労働者を中心とした急激な雇用情勢の悪化を受け、派遣労働に関する制度見直しの議論が与野党で活発になってきた。民主党は従来方針を転換し、製造業への労働者派遣を禁止する案の検討に着手する。与党も新たな対策取りまとめに動き出したが、業種規制の強化には慎重だ。双方の溝は深いうえ、次期衆院選をにらんだ世論対策の色彩もある。論議がどこまで進展するかは不透明だ。(1面参照)
 「難しい状況だと理解しているが、民主党の考えをいま一度しっかりまとめ上げていただきたい」。民主党の鳩山由紀夫幹事長は七日の「次の内閣」会合で頭を下げた。同日午前、菅直人代表代行と社民党の福島瑞穂党首が、製造業への派遣禁止や雇用保険の対象拡大を検討する方針で一致したのを受けた「党内調整」だ。
 民主党は昨年四月に日雇い派遣禁止などを柱とする労働者派遣法改正案を了承済み。製造業への派遣禁止は見送った経緯がある。支持団体である連合が「逆に失業者を増やす」などと懸念しているため。ところが、雇用問題を今国会の争点に据える小沢一郎代表が、規制強化を求めるほかの野党との共闘を重視するよう指示。方針転換した。
 もっとも具体策については「製造業への派遣は五十万人。この人たちへの影響も考慮しながら詰めなければ」(直嶋正行政調会長)と手探り状態。三年程度かけて段階的に禁止する案が浮上している。
 今国会に提出を目指す労働者派遣法改正案の扱いも不透明。通常なら同改正案の審議入りは二〇〇九年度予算関連法案の成立後で、四月以降になる公算が大きい。民主党内には「そのころには衆院解散・総選挙」として、法案作成作業の進展を疑問視する声もある。雇用保険の受給資格緩和などセーフティーネット拡充を優先すべきだとの意見も根強い。
 一方の政府・与党。舛添要一厚生労働相が製造業派遣の禁止に言及して波紋を広げたが、麻生太郎首相は慎重姿勢。与党も「景気が良くなった時に雇用を増やせなくなる」(自民党の細田博之幹事長)、「認めないと逆に雇用が縮小してしまう」(公明党の北側一雄幹事長)と足並みをそろえている。
 継続審議中の日雇い派遣原則禁止を盛った労働者派遣法改正案の早期成立や雇用保険の拡充実現が政府・与党の基本方針。ただ、衆院選を控えて野党の攻勢への警戒感も強い。河村建夫官房長官は七日、首相官邸で公明党の坂口力元厚労相と会談し、派遣労働者問題の追加対策の検討を要請。与党は月内にも新雇用対策プロジェクトチーム(川崎二郎座長)で対応策をまとめる。
 与党の一部には仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」を一定期間後に「常用型派遣」に切り替えさせる案が出ている。派遣期間が終わっても雇用契約が継続し、賃金も支払われる常用型派遣の比重を高めれば、不安解消に一定の効果があるとの判断だ。
 しかし、与党内には「労働者派遣法改正案を修正するかは審議が始まる四月以降までにじっくり考えればいい」(厚労関係議員)とする意見もある。新しくまとめる対策が具体化するまでには曲折もありそうだ。
 ▼派遣と請負 ともに非正規労働者の勤務形態の一種。派遣労働者は専門の派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業の指示で働く。一方、請負社員は請負会社と雇用契約を結ぶが、受け入れ先の企業は請負社員に直接指示を出すことができない。契約上は業務請負なのに、実際には派遣先の企業の指示で働く「偽装請負」や、雇用が不安定な「日雇い派遣」が社会問題となっている。



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20090108 日本経済新聞 朝刊

 景気失速の影響で、今年は雇用情勢の一段の悪化が避けられない情勢だ。昨年十一月の完全失業率は三・九%と極めて深刻という状況には至っていない。だが鉱工業生産の急激な落ち込みなどから判断すると年央にかけ失業者が増える恐れは強い。
 まさに雇用激震の年になる。それに備えて国や地方自治体、また経営者と労組団体は総力を挙げて対策を考え、実行しなければならない。
派遣規制では解決せぬ
 昨秋以降に目立ってきた派遣など非正規社員の失業問題に対する短期の対応策と、新しい雇用慣行・制度を整える中長期の対応策を組み合わせて実効性を高めることが必要だ。
 景気の落ち込みの影響が強く出たのが電機、自動車など輸出型の製造業で働く派遣社員や期間工だ。雇用調整のしわ寄せが非正規社員に集中しているという見方が強まり派遣事業への規制強化が検討され始めた。
 年明け後、舛添要一厚生労働相が将来は製造業への派遣を制限する考えを表明した。民主党など野党四党も製造業派遣の規制を盛り込んだ法改正案を今国会に出すという。
 製造業への労働者の派遣事業が解禁された二〇〇四年以降、各地の製造現場では直接雇用の期間工などを派遣に置き換える動きが広がった。舛添氏の考え方、野党の案ともに細部は不明だが、〇四年以前の状態に戻すことを狙っているようだ。
 この規制強化は労働市場を不安定にする副作用がある。工場側にとって派遣社員は直接雇用の期間工を雇うのに比べ社会保険手続きなどを派遣会社に任せられる利点がある。働く側からみると派遣制度がないのと比べ雇われやすい。また、すぐに仕事に就けるなどの理由で自ら派遣での就労を希望する人も増えている。そうしたことを考えると多様な雇用形態を残しておくのが望ましい。
 日雇い派遣を原則禁止するために政府が国会に出し継続審議になった法改正案も問題が多い。派遣失業者にとって、今のようなときこそ一日単位で仕事を見付けられる日雇い派遣はありがたいものではないか。
 規制強化に走るのは賢いやり方ではない。国が真っ先に取り組むべきなのは、財政資金や雇用保険に積み立てたお金をうまく使い、緊急避難的に仕事を提供したり失業者が次の職場を遅滞なく見付けられるよう職業訓練をしたりすることだ。
 政府・与党は昨年末、三年間で総額二兆円規模の雇用対策を決めた。その裏付けとなる今年度の第二次補正予算案などを早く成立させなければならない。情勢を冷静に見極め必要なら追加対策も検討すべきだ。
 即効性が高いのは公共事業の前倒し執行だ。一九九〇年代に失業対策事業として公共投資を大盤振る舞いしたのと違い、今は使えるお金が限られる。各地域の経済活性化につながる道路の整備などを厳選して事業化を急いでほしい。首都圏では羽田、成田空港への時間距離の短縮に役立つ交通網などが対象になる。
 厚労省は雇用保険の加入条件を、雇用見込み一年以上から半年以上に広げる法改正案を準備している。これも早く成立、施行させる必要があるが、非正規社員の安全網をより強固にするために、その条件をさらに緩和することも検討課題になろう。
 慢性的な人手不足に悩む高齢者介護や保育、また農業や森林管理などの分野に製造業から人を円滑に移すために、職業訓練を充実させる必要もある。雇用保険の積立金はそのためにあるが、「私のしごと館」で悪名が高まった雇用・能力開発機構に委ねるのは効率性や効果の観点から望ましくない。訓練の場は民間が主体であるべきだ。訓練を受ける人に直接、補助を出すバウチャー(利用券)制度も導入してほしい。
ワークシェアも選択肢
 一人あたりの労働時間を縮めて仕事を分け合うワークシェアリングができる環境を政労使が整えることも課題だ。企業・業種によっては有効な選択肢になる。正規社員の待遇が悪くなっても、非正規社員を含めた雇用維持のためにはやむを得ない。
 中長期対策の柱は、流動性が高い真の労働市場を育てることだ。職業訓練の充実や学校教育の改革によって誰もが手に職を持つようになれば、一時的に仕事からあぶれても苦労せずに次の仕事に就く機会が広がる。そうした基盤を整えることで、望まないのに生涯を非正規社員として過ごす人を減らせるはずだ。
 雇用の流動性を高めるには正規、非正規社員の間の均等待遇の確立が求められる。企業が社員をどれだけ解雇しにくいかを経済協力開発機構が指数化したところ、日本は正規社員が手厚く守られている半面、非正規社員の保護の度合いは著しく低いという結果が出た。同一労働・同一賃金の原則とともに、この格差緩和も考えなければならない。どちらかといえば正規社員の既得権維持に熱心な連合に意識改革を望みたい。



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