20080803 日本経済新聞 朝刊

 いざというとき、やはり助けになるのがおカネ。公的介護保険のサービスは利用者の一割負担が原則で、最も重い「要介護五」で限度額いっぱい使った場合の利用者負担は月四万円弱になる。さらに公的保険の対象にはならないサービスの利用が必要なことも多い。
 そんな介護にかかわる支出に備えるのが、民間の介護保険だ。表Cに代表例をまとめた。これらは自分が要介護状態になったときに保険金が下りるもの。親などの介護に備える保険も以前はあったが「不払い問題による商品見直しで新規に入れるものはなくなった」(ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさん)。
 現在五十―六十歳代の人は間近に親の介護の問題を抱える一方で、自分の老後に備える必要もある。もちろん貯蓄でも対応できるが、介護費用の問題点は「終わりが見えない」こと。要介護状態は数カ月かもしれないし、十年以上寝たきりということもあり得る。その点、終身保険であれば必要なだけ継続的におカネが入る安心感はある。竹下さんは「退職金が入ったら一時払いで百万円程度を保険に振り向けておけばある程度“介護リスク”をヘッジできる」と指摘する。
 選ぶときは「どんな状態になったときに」「どのくらいの期間続いたら」保険金が下りるのかをチェックしよう。当然、利用者は軽い要介護状態から保険金が支払われる方が有り難いが、その分保険料は高くなる。よく比較検討してみるといいだろう。(山本由里)





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20080803 日本経済新聞 朝刊

 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)については、様々な告発、証言、分析が出ている。そんななか、本書がめっぽう面白い。実際にサブプライム関連商品を販売した金融関係者の告白であるからだ。
 借り手は毎月返済する能力があるか。ローンが終わったとき、借り手は今より暮らし向きが良くなっているか。サブプライム層への融資のポイントは、この二点だ。そこから離れなければ、問題がこれほど深刻にはならなかったはずである。著者がサブプライムローンから足を洗うきっかけになったのは、二〇〇五年六月の融資案件だ。ローンを返すに返せない老夫婦に貸した際は、審査基準に合致していた。ところが実際には、焦げ付きが発生してしまった。
 サブプライムが急拡大した原動力は証券化である。住宅ローンを買い集め、証券にして様々な投資家に販売する。サブプライムの焦げ付き増加をきっかけに、この資金循環は凍り付いてしまった。
 ローンの借り手、ブローカー(仲介業者)、貸し手。入り乱れて演じた宴の後を、住宅市場は経験しているといってもよい。
 日本でも住宅ローンの証券化は、大きなテーマになっている。その際に大切なのは、米国の失敗を繰り返さないことだ。失敗の教訓の生々しさは、大いに参考になる。金森重樹監訳、金井真弓訳。(ダイヤモンド社・一、六〇〇円)






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20080802 日本経済新聞 朝刊

 金融庁は一日、エキスパートアライアンス保険準備(東京・港)に生命保険業の免許を与えたと発表した。同社は「アイリオ生命保険」に名称を変更し、九月から医療保険などの販売を始める予定。アイリオ生命の当初の保険料収入は年三百億円程度の見通し。
 同社は無認可共済最大手だったエキスパートアライアンスが母体になって設立した。






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20080802 日本経済新聞 朝刊

 保険金の支払い漏れ問題で業務改善命令を受けた日本生命保険など生保十社は一日、金融庁に業務改善計画を提出、公表した。保険金支払い体制の整備に加え、取り組みが遅れていた複雑な保険商品の簡素化などを盛り込んだ。明治安田生命保険の不払い発覚から約三年半。改善計画の提出で支払い漏れ問題に一つの区切りがついた形だが、今後は再発防止策をどう定着させるかが課題になる。
 十社は日生、第一生命保険、明治安田、住友生命保険、朝日生命保険、富国生命保険、三井生命保険、大同生命保険、アリコジャパン、アメリカンファミリー生命保険。
 業務改善計画を提出した十社のうち、日生、第一、明治安田、住生の大手四社の社長は一日、相次ぎ記者会見を開いた。生命保険協会長を務める明治安田の松尾憲治社長は「契約者の視点に立った運営ができていなかった」と、大量の支払い漏れを改めて陳謝した。
 十社は業務改善計画で支払い漏れの再発防止策として、保険商品の見直しなどを盛り込んだ。日生が六種類あった死亡保障の医療特約を一種類に削減。支払い漏れの多かった「通院特約」については第一がすでに販売を停止、住生も「早急に見直す」(佐藤義雄社長)とした。シンプルでわかりやすい商品が増えれば、保険金を払えるかどうかの判断が容易になり、支払い漏れの防止に一定の効果がありそうだ。
 保険商品の見直しのほか、各社とも支払い体制の整備や営業職員の質の向上、訪問活動の強化、施策の実効性を監視する組織の設置などを計画に盛った。「保険にかかわる入り口から出口まで、考え得ることはすべて盛り込んだ」(日生の岡本圀衛社長)という。
 十社は業務改善計画と合わせて、経営責任を明確化するための社内処分も公表した。日生が岡本社長をはじめ現職の取締役十人について、役員報酬を二カ月間一〇―三〇%削減。第一が元役員を含む役職員計三十四人、明治安田が計四十二人、住生も計二十三人に対し、役員報酬の自主返上や減給などの処分をした。
 ただ計画の真価を問われるのはこれから。今回発覚した支払い漏れは生保三十八社で約百三十五万件、約九百七十三億円にのぼる。業界の信頼回復には今後、再発防止の取り組みを定着させて「永続的に改善努力を続けていく」(第一の斎藤勝利社長)しかない。
【図・写真】記者会見する日生の岡本社長(右)(1日、日銀本店)







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20080802 日本経済新聞 朝刊

 医のコストを考えた場合、最も深刻な問題のひとつは、人材流出が叫ばれる勤務医の待遇問題だ。
勤務医に歩合制
 今年六月、大阪府の阪南市立病院は勤務医に営業マンのような歩合制導入を決めた。基本給とは別に診察回数に応じた能率給などを取り入れる異例の制度で、大卒五年目で固定給が約千二百三十万円だった医師の場合、破格の二千万円にアップする。
 原因は内科勤務医の一斉退職。常勤五人のうち昨年六月に一人が開業医になるために辞め、「過剰労働になる」と残る四人も退職。公立病院ながら内科の入院・外来診療を全面休止する異常事態となっていた。
 「何とか来てください」。市長の岩室敏和(60)を筆頭に病院の部長クラスがチームを結成。東海から九州まで大学を回ったが、色よい返事はもらえない。同病院の報酬は全国の自治体病院平均より二百万円低い年約千三百万円。岩室は「交渉を持つには、民間病院と競争できる報酬の提示が必要だった」と振り返る。
 現在、常勤・非常勤五人が新給与体系で働く。さらに常勤医一人を確保できることになり、内科も九月から再開。しかし、人件費は月七百万円増える見込み。
 全国の自治体病院などが同様の賃上げを行えばどうなるか。医療費約三十三兆円(二〇〇五年度)のうち、医師らの人件費は約十六兆二千億円でほぼ五割。一律一〇%上がるだけで、医療費は五%押し上げられる。
 医師の正当な労働対価を巡る現実は一筋縄ではいかない。奈良県立奈良病院の産婦人科医二人が〇六年、県に時間外賃金の支払いを求めて訴えた。
 争点となっているのは、宿直勤務の扱い。訴状などによると、二人は〇四―〇五年の計三百十三回の宿直の間、帝王切開など異常分娩(ぶんべん)を含む三百回のお産をこなした。救急患者への対応も計千三十四件に達した。だが、県が支払う手当は、宿直一回につき二万円のみ。労働基準法は宿直を「ほとんど労働する必要がない状態」と定義しているためだ。
 宿直を時間外勤務として単純計算すると九千万円を超える。だが、原告側弁護士、藤本卓司(50)は「お金の問題だけではなく、医師の労働環境を問うのが狙い」という。医師を守ることは患者の命を守ることに直結するとの主張だ。
 県は、県立三病院の人件費を前年度より一割(約十億円)積み増した。それでも担当者は「仕事の軽減には直結しない。自治体でできることには限界がある」と頭を抱える。奈良は例外ではない。厚生労働省の〇四年の調査では、全国の約七割の医療機関で何らかの労基法違反が見つかった。
若手「家庭大事に」
 対価を増やすだけでは解けない問題も横たわる。
 「おれたちの時代はそうじゃなかった」。沖縄県浦添市の浦添総合病院が日勤夜勤の二交代制を導入しようとしたところ、ベテラン医師から意外な反発を招いた。院長の井上徹英(56)は「『忙しいことがステータス』という古い美意識が残っている」と指摘。医師自身も「医療は聖職」という意識の下、労働環境と対価について厳密に考えなかったツケが回ってきた。
 日勤―夜勤―日勤という三十六時間連続労働も珍しくない大病院。それでは勤務医は集まらない。同病院を運営する医療法人理事長の宮城敏夫(66)は「若い医師たちには『家庭も大事にしたい』という層が増えている。時代は変わった」と話す。残ってもらうためにも「率先して意識改革に努めなければならない」。
 医療は国民の共有財産。その床下を支える医師や看護師ら医療現場の人材にかかるコストは医療費の約五割と巨額だ。そのコスト論争の先には現在の医療崩壊を食い止める命運が握られている。(敬称略)
=第2部おわり
 「蘇れ医療」取材班=和佐徹哉、矢野寿彦、清水美宏、高坂哲郎、木村彰、山口聡、渡辺園子、吉田ありさ、中前博之、古田彩、上田哲也、松本勇慈、長谷川章、吉田直子、前村聡、桜井陽、稲沢計典、林さや香、関亜紀子、松田省吾、倉辺洋介、後藤伸太郎、羽田野主
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【図・写真】宿直中も昼夜を問わずお産に追われる(県立奈良病院の診療記録)





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