残業命令に必要なものとは? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

残業命令に必要なものとは?

今回は「残業命令に必要なものとは?」を解説します。

 

 

先日、ある社長からこんなご質問がありました。

 

「ある社員に残業してくれと頼んだら、「用事がある」と断られましたが、これは業務命令違反ですよね?残業手当も適正に支払っていますが、この場合は懲戒処分が可能ですか?」

 

もし、会社が社員に残業や休日出勤を命令するのであれば、「従業員の過半数で組織する労働組合」「従業員の過半数を代表する者」のいずれかと労使協定を結び、労働基準監督署に提出しなければなりません。

 

 

この労使協定は時間外労働、休日出勤に関する労働協定で、労働基準法第36条に定めがあることから、「36(サブロク)協定」とも呼ばれています。

 

 

36協定の内容は

 

〇1日の残業時間の上限を定める

 

〇1ヵ月の残業時間の上限を定める

 

〇1年の残業時間の上限を定める

 

〇1ヵ月の休日出勤の上限を定める

 

などの項目を定めることとしているのです。

 

 

逆に言えば、36協定を提出していなければ、残業や休日出勤をさせてはいけないし、残業命令なども「違法の命令」となってしまうのです。

 

だから「割増の残業代を支払っている」だけでは法的な要件をクリアしたとは言えないのです。

 

しかし、36協定が形骸化している場合が多いのも事実で、次のような不備がよく見受けられます。

 

例えば、36協定を作成していない(=労働基準監督署に提出していない)、36協定の従業員代表の選出方法が不備である、残業時間が36協定で締結した範囲を超えている等です。

 

このような場合は明らかに法律違反となるのです。

 

これに関する裁判があります。

 

<トーコロ事件 最高裁 平成13年6月22日>

 

〇社員は会社の残業要請に対して残業していたが、体調不良を理由に残業を拒否し続けた

 

〇社員に対して会社は話し合いを申し込んだが、社員は拒否した

 

〇社員は他の者と連名で賃金差別、不法な残業、有給休暇の権利無視等の内容の手紙を他の大多数の社員宛に送付した

 

〇会社は、社員は協調性がないこと、残業命令に従わないことを理由に解雇を通知した

 

〇社員は解雇の無効を訴えた

 

そして、裁判は最高裁まで行き、以下の判断となったのです。

 

〇争点は「残業命令が有効か?」ということ

 

〇残業命令が有効となるためには、36協定の締結に不備が無いことが条件である

 

〇会社の36協定の従業員代表者は親睦団体である「友の会」の代表であって、従業員の過半数を代表とする者ではない

 

〇36協定は無効であり、36協定に基づく「残業命令」も無効のため、残業拒否を理由とする解雇も無効である

 

以上により、会社が負けたのです。

 

 

このように、いざトラブルとなったら36協定も厳しくみられるのです。

 

特に「従業員の代表」については、きちんと選出のプロセスを経て、選ばないと上記裁判のような結果となってしまうのです。