福沢諭吉『福翁自伝』を読んでー2 | ビジネスに生かす東洋哲学
2013-07-21 16:00:17

福沢諭吉『福翁自伝』を読んでー2

テーマ:福沢諭吉『福翁自伝』について

私が、『福翁自伝』の中で、一番、感心したのは、幕末の封建制の時代に、小士族の家に生まれ、「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」というほど、門閥制度を憎んでいたにもかかわらず、「門閥の人を憎まずして その風習を憎む」という部分です。



「人間のから威張(いば)りは見苦しいものだ、威張る奴は恥知らずの馬鹿だとばかり思っていたから、それゆえ藩中にいて人に軽蔑されても侮辱されても、その立腹を他に移して他人を辱めるということはドウしても出来ない。(中略)


順をいえばまた私より以下の者が幾らもあるから、その以下の者に向かって自分が軽蔑されただけそれだけ軽蔑してやれば、いわゆる江戸の敵を長崎で討って、勘定の立つようなものだが、ソレができない。

出来ないどころではない、その反対に私は下の方に向って大変丁寧

にしていました。」(『福翁自伝』学術文庫版P188



十代の生意気盛りの頃から、福沢諭吉は、上から軽蔑されても、下の方に向って丁寧に対応したということですが、これは、なかなか、できそうで出来ないものだと思います。


「父母から譲られた性質」(P.189)と福沢自身が語っていますが、大変良い性質を受け継がれたものだと思います。



企業においても、どの組織においても、空威張りする嫌な上司は数知れずいるでしょう。尊敬できる上司と仕事ができること自体が少ないのが普通かもしれません。嫌な上司に軽蔑されれば、腹を立てるのが人情です。


しかし、傍から見ていて、最も嫌なことは、上司におべっかを使ったり、ゴマすりをする管理職が、むやみに部下に威張る姿です。

本人は、気持ちがよいのかもしれませんが、周りから見れば、不愉快ですし、場合によっては、笑止千万ということもあります。


身分制度の厳しい時代に、下級とはいえ、武士階級にいた福沢は、その気になれば、身分を逆手にとって、下の人に向かってえばったり、下の人をいじめたりすることもできました。


しかし、そのような「江戸の敵を長崎で討つ」ような卑しい真似をしなかったというところに、福沢諭吉の人物の大きさ、立派さを感じます。