一疋の青猫 -71ページ目

沈黙と、残照と。


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風も無く 波も無く


穏やかな 五月の夕べは 一枚の静止画


背景の空ばかりは 鮮やかに 色を 増して


沈黙のうちに 暮れてゆく


刻々と移ろう 空を眺めていると


不思議と 懐かしい言葉や 歌や 失われた感情が 蘇るような・・・




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愛ってのはころがってるのね

キッチンなんかにね

玉ねぎ刻んでて涙が出ると

思い出すわ

悲しみの理由は

いつもいつも愛だったって


生まれ変わったら鯨になりたい

海の中で歌って暮らすの

言葉は知らないの

でも歌はあるの

鯨の心は人間よりずっと大きいから

歌もいつまでも続くの


そうなんだよ

絵になる一瞬が大事なのさ

私そのために生きてる

だから私の写真一枚だけとっておいて

そいで思い出さずに空想して

私の一生を


わざわざ迷子になりに行くの

巨大迷路に

ここがどこか今がいつか

分かりすぎるんだもん

それなのに不意に分からなくなる

地球儀なんか見てると


嘘つくのって好きよ

まだ知らないほんとのことを

知ってるような気になれるから

でもほんとのほんとは

一瞬で過ぎ去る

いい匂いみたいに


( 谷川俊太郎 「真っ白でいるよりも」抜粋 )




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暮れなずむ空の色にも 過ぎ去る一瞬があって

ほんとのほんとが あるのでしょう

また 出会いたくて 私は 空を眺めるのでしょう











「 Video Games 」   Lana Del Rey




記憶の色彩


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こんな 景色の中を

カメラを手に 歩いていると

かならず・・・

『 シャッター押してください 』

最近では 声を掛けてくるのは 大抵 女の子の方

オトコの手を取り 背景を決めて ポーズ

渡された カメラを構えて

『 は~い もう一枚撮りますね 』

なんて 調子よく 言いながら

内心

( オレは こんなところで 何をやっているのだろう )



オノレの 立ち位置に 一抹の 不安を抱いたり (笑)


*


さまざまな 景色の中で

シャッターを 切るように

重ねられてゆく 記憶


重ねられた 記憶には

ふたつ あって

積み重ねる記憶 そして 塗り重ねる記憶


初めて会った 春の日から

はしゃいだ夏 心震わせる夜 穏やかな夕暮れ

積み重ねた記憶は 振り返る軌跡であり 歴史であり 豊穣さ


けれど どんな小説にも 結末はあって

開かれた頁が 閉じられるように

時として 人は

記憶を 塗り重ねることでしか

次の頁を 開くことができない

積み重ねたものが 大きいほど


そして また

塗り重ねることも できない 記憶も

確かに あって

塗り漏らした 隙間から

溢れるように 滲みだしては 甦る記憶・・・


喜びも 悲しみも 怒りも

そのように 混じり合った記憶は

いつの日か

今頃の 空の色ような 穏やかな均衡を保った

やさしい 色彩となるのだろうか

*

あまり 取り出して 眺めることも無いけど

そんな アルバムの 何冊かが

誰にだって

本棚の隅に あるのかも知れませんね





「 Roads 」   Portishead








わたしを不機嫌にさせるもの


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もう

そんなにして

無理することも ないだろう



笑うことも

着飾ることも



そうしたければ

そうすればいいけど



楽しくもないのに

自分でも 気付かぬ程に

癖に なってしまった

その

多分に 言い訳染みた

作り笑いで

誰を しあわせにしようと言うのか



青空よりも

どんよりとした 鈍い 空の色に

こころ 救われる 日もあるだろう



不機嫌

なのでは無い



私を 不機嫌に させるものは

たとえば

出来過ぎた 子役の 演技や 立ち居振舞いのような

その 背後に潜む 思惑と 無自覚さだ



もう やってきたよ

十分にね

大人なんだし

おまえは おまえ自身を 追い詰めることなく

許し 理解し 自由にしてやればいい



おまえの 笑顔は 疲れてはいないか?


*


「いまの自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」
( 太宰治 )


*


みなさま よい週末を・・・




「 A DAY IN THE PARK 」   坂本龍一