これから、行こうというバーは、私が1年くらい前に行ったことがあるバーである。
Zと出会った時に一緒に上京した友人の修子と二人で、行ったのだ。
その時に、私たちよりも、いくつか年上の雇われマスターと
店を閉まった後で、残って一緒に遅くまで話をしたことがある。
1年くらい前のことである。
そのバーは、六本木の交差点から歩いて5分くらいの場所にある。
大きな道路に面していたので、安心だろう、と私たちは入ることを決めた。
私の友人の修子は、お酒が強い。
そのバーは、結構、いっぱいで、テーブル席は、すでに満席だった。
私たちは、カウンター席に座った。
そこで、私たちは、エンエンと話をした。
基本的には、20代の女性が話すような内容ではない。
私たちは、ファッションの話は、ほとんど、しない。
修子は、決して美しい女性ではない。
彼女自身もそれを知っている。
修子は、肌が浅黒く、強い意志を感じさせる顔立ちをしている。
私は、そんな彼女の顔立ちが、好きである。
そして、その顔立ちに合った洋服を選んだ。
かなり慎重に吟味して選んでいることを、私は、知っている。
選んだ洋服や靴を長く着用するタイプで、
決して、流行に左右されない。
修子と私は、同じ感覚を持ち、何時間でも話は尽きなかった。
映画、小説、絵画、政治、そう言う話は、いつまでも続いた。
架空の話も大好きである。
『なぁ、もし、男も妊娠するとしたらどうなると思う。』
修子は、私に質問した。私は逆に修子に不明な点を尋ねた。
『男の人が子供を生むときって、
下唇がおでこにつくまで引っ張るような痛みらしいで。
そんなことって、無理やん。
それほど、痛いってこと。
女の人のほうが、痛みに鈍感なんやて。
そやし、かなり、いろいろ考えるやろな。
それって、女の人の代わりに、男の人が妊娠するって言うこと?』
『ううん。どっちが、妊娠するか、わからん、っていう場合。
私は、確実にレイプが減ると思うな。』
修子は、答えた。
『それは、言えるな。
けど、五分五分やったら、する人間もあるやろな。
生殖機能が完全にない、と言う男の人は、別やろけど』
私たちは、そんな馬鹿な話を長く続けた。