六本木に出て、食事をした。
平田は、今、別れた相手のことをそれでも、話した。
仕方ない。
彼女の心の中には、まだまだ、彼の形跡は残っている。
例え、あのおぞましい日記を読んだ後であっても。
私も、失恋の経験は、ある。
何をしても、やるせない。
私は、その相手の気持ちを私なりに解釈して、
平田に話した。
彼女の気持ちを落ち込ませないように、かなり注意しながら。
要するに、平田が一時的にせよ気持ちを預けた人間の悪口は、
言いたくなかったのである。
それは、大きく間違った路線であったが、
(実際は、私は、平田の相手をそんな風に考えていなかった。)
それで、彼女が落ち着くのであれば、
罪があるとは、思えなかった。
食事の後で、私は東京の知り合いAに電話をした。
六本木にいるから、一緒に飲もうと誘った。
彼は、軽く食事をしてから行く、と答えた。
六本木の改札口で1時間後に待ち合わせをした。
私たちは、六本木のABCこと、「青山ブックセンター」で時間をつぶした。