先日も、年配の女性の家に電話をかけました。

最初、電話口に出た女性は不審気でした。

また、何か怪しげな電話ではないかと、いぶかしげであるのです。

いつも、話をしていると

『だまされたお金があれば、クリーニングに出せるのに。』と必ず、出てきます。

聞くと、病人二人は入院中であり、

普通の人よりは、こまめに着替えをさせるそうなのです。

その着替えを取りに行って、彼女は、自分で洗濯していたらしいのですが、

なかなか量が多く、彼女には、負担になるらしいのです。

特に、大きな荷物を持って、坂を登るのがつらいと話します。

病院でクリーニングに出すと月5000円と言われたそうです。

5000円くらいで、楽になるのであれば、と思った彼女は、

クリーニングを頼んだそうなのです。

しかし、実際は、一月1万5000円ということです。


彼女がだまされたお金は、50万円です。

年金で細々と暮らす彼女にとっては、とても大きなお金です。

家は、震災以来、ガタがきたそうです。

そのため、家中、風がふきさらしているのです。

だからこそ、リフォーム詐欺にあったのですが。


彼女は、夜11時以降でないと大き目のストーブはつけないそうです。

11時から電気代が安くなるので、それまでは我慢しています。

家に風が吹き込むので、ダンボールで、あちこち蓋をしているそうです。

それを聞いて、私は笑ってしまいました。

彼女も、大きな声で笑っているのです。

二人で、あっちのスーパーの方が安いとか、

節約する生活について、エンエン話していました。

そうして、暗い雰囲気はなくなり、

明るく、いい事を考えて生きていこうね、と二人で話し合っていたのです。


私は、何とか、加害者からお金を返してもらっています。

加害者もいろいろな借金に追われています。

苦しい生活が余儀なくされている人も、多いです。

いつも、私は自分で『スマイリーング』とできるだけ声をかけるようにしています。

それで、へこむ時はあります。

自分の存在を否定されるときが、誰にでも、あるのです。

失恋や離婚、就職がダメだったとき、人に裏切られたとき、

自分の能力不足を感じたとき、大病になったとき、

いいことよりも、つらいことの方が多いです。


だからこそ、それを打開するために、

笑って過ごせる気持ちを持つことが、必要です。


裁判に勝っても、相手に支払う能力があるかどうかを

被害者側が調べて、「これこれだけの財産があるので、差し押さえの実行をお願いします。」

という手続きを取る必要があるのです。

けれど、私の場合は、加害者の土地・家は根抵当まで入っていますし、

銀行口座の残高を調べることは、できません。

何人もの被害者が加害者に取立てを行いましたが、

誰一人として、返金してもらっていないのです。

私も加害者と距離が離れていますし、

取立てに行くために、また1万円以上の交通費がかかってしまいます。

それで、いろいろと方法を考えました。


取り立てる際に、暴力的な言葉を使用すると、

逆にこちらが罪にとわれます。

取り立てる時間にも制限があります。

そこで、法律に触れることなく、

最低限のお金と時間で、お金を返してもらう方法はないかと考えました。

現在、私は、加害者から毎月分割で返金してもらっています。

300人以上の被害者の中で、

唯一、返金を受けているのは、私だけです。

その方法は申し上げることはできませんが、

ある条件が整えば、とても有効的な方法です。


自分のことが、ひと段落着いたので、

私は、裁判所で出会った年配の女性のことが気がかりで、

たまに電話をかけています。

彼女のように、体が自由にならず、

病人を抱えて、つらい生活を仕方なくしているお年寄りをだますなんて、

本当にひどいと思います。

また、だますような人は、そんな情を持ち合わせていないからこそ、

そんなことを平気でできるのです。


この間の夜も、久しぶりに彼女に電話をかけました。

昨年、ネット詐欺にあい、

刑事的には被害届を、民事的には裁判を起こしました。

被害届はともかくとして、

裁判を起こすには、訴状を書く必要があります。

本当は、司法書士か弁護士に依頼するのがいいのですが、

また、費用がかかってしまいます。

被害者の会のようなサイトがあり、まず、法務局に行って必要な書類をもらってくることなどを

教えてもらいました。

そうして、いろいろと証拠をそろえて、

簡易裁判所に出向きました。

裁判所の人が丁寧に書き方を教えてくれました。

最初は、いろいろとわからないことだらけで、

持ち帰って被害者の会の人たちに相談してみることにしました。

結局のところ、

私は相手が会社、組織ということで、

その会社の代表者を訴えることにしました。

しかし、あくまでも、会社の代表者にすぎません。


相手が法人だと倒産してしまえば、

債権は、消滅してしまいます。

個人相手であれば、相手が仮に亡くなったとしても、

その遺族に請求ができることも知りました。

わかっている人は、その社長に保証人の書類を書かせていたらしいです。


訴状を書いて、再度、簡易裁判所に足を運びました。

その時に、年配の女性に出会いました。

以前のブログから読んでくれている人は、

わかってくださると思いますが、

私は、年配の女性にとても、受けがいいのです。

彼女は、杖をついて、すでに、腰は大きく曲がっていました。

昔の日本女性らしく、背も小さく、

さらに小さく見えます。

病人を二人も抱えて、リフォーム詐欺に合ったということです。

そこで、彼女といろいろと話をしました。

1時間ばかり裁判所の廊下のいすに座って、

話をして、最後にお互いの電話番号を教え合い、別れました、


私は裁判に勝ちました。

それでも、最初の裁判は、相手の住所が不明と言うことで

呼び出し状が裁判所に返ってきたために、

相手の住所を調べて、裁判所に連絡するように言われ、

裁判のしなおしということでした。

まぁ、何とか二回目は裁判が行われ、

相手が裁判所に現れなかったために、

内容を認めたということで、私が勝ったのです。

多くの被害者が、訴状を書き、裁判に勝っています。

しかし、勝ったからと言って、お金が返ってきません。



病院での診断は、最初のとおりであった。
私の方は、何日もしないうちに腫れもひくだろうし、
たいした怪我では、なかった。
平田は、関西に帰ってからも、
しばらくは、治療を続けなければならない。

診察が終わったのは、12時を過ぎていた。
私は、とりあえず治療後、電話をすると言うZとの約束を
果たさなければならなかった。
Zは、すぐに電話に出た。
私たちは、品川プリンスホテルのラウンジで待ち合わせることになった。


私たちの方が先に着いた。
二十分くらいした後に、Zがやって来た。
今日は、濃い目のグレーのスーツである。
赤茶色のネクタイが、映えている。
いつものように、身に着けるものにはお金をかけている。
平田も私同様に170センチ近い身長がある。
一人は、左こめかみに湿布を貼り、
もう一人は、ムチウチ症のコルセットを首に巻いている大女の私たちを
Zは、すぐに見つけた。
まっすぐ近づいてくると、席に座るなり、尋ねた。
『大丈夫なの?』
『まぁ。』私は、それしか言えなかった。
彼の視線は、私の左こめかみに注がれた。
平田が、医者の診断を話した。
ランチを適当に注文した。
『今後のことだけど、僕が力になれることは、ないんだろうか。』
彼は、私に訊いた。
私は、昨夜、Aが誘ってくれたことを話した。
彼は、半分怒ったように強い調子で私に訴えた。
『あなたを、そんな訳のわからない会社で働かせることは、できない。』

明日(と言ってもすでに今日である)、もう一度、
病院の診察時間内に来て、きちんと検査を受けるように言われた。
さらに、警察にも調書をとるから、
二人そろってくるように、指示を受けた。
加害者は、保険の手続きもしたい、と申し出た。
結果、東京にもう一泊しなければならなくなった。
平田は、『すぐにでも、関西に帰りたい』、
と情けない声を出して、私に何度も訴えた。
平田の気持ちは、とても理解できた。
しかし、私は何とか平田を説得して、
もう1日だけ東京に留まることを納得させた。
私も、「何で、こんなことになってしもうたんやろ。」、
と言いたかった。
私たちは、ホテルに加害者を連れて行き、延泊代金を支払ってもらうことにした。
ところが、私たちが泊っている品川プリンスホテルは、
満杯であると断られた。
私たちは、疲れきっていたので、あまり、動きたくなかった。
品川付近では、高輪プリンスホテルだけが空いていた。
加害者は、まだ、お酒は抜けきってなかったが、
『わかりました。』と高輪プリンスホテルをとってくれた。
高輪プリンスの受付は、加害者の身なりを見て
宿泊料金をその場で払うように要求した。
加害者は、クレジットカードで支払った。
私は、左こめかみがずきずきと痛む。
とにかく、眠りたい。

短い睡眠の後で、私と平田は病院に向った。
私は、勤めている会社に電話して、
事情を話して、もう一日欠勤させてもらうことにした。
母にも電話をかけた。
平田は、働いていなかったので、
家にだけ電話をかけた。
そして、病院の待ち時間の間にZに電話した。
ランチをキャンセルするためである。
Zは、事情を聞くと、心配そうな声で、
とにかく会って話をしたい、と二回言った。