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⊂O–O⊃あしべ
ブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、これらの企画をお送りする予定です。
 
《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》
《アメノウズメとаруақ(先祖霊) 〜太鼓と琴と大地〜》
《鳴弦はどこから来たのか》
《弓道とэ т н о с о л ь ф е д ж и о (エスノソルフェージュ)》

これらの企画が日本とカザフスタンのコミュニケーション・ギャップを越える一助になってほしいです。

そしてブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」では、日本とカザフスタンの文化財を取り上げる予定です。
その意見はあくまで『太平洋の斜め上な島国に住む考察厨のブログ』の意見であり、文責はワタシ、ブログ主のうみひぢ_あしべが負います。
文化財の所蔵者、並びに文化財の研究者、これらの方々と当ブログは全くの無関係ですから!
これらの方々のお考えと、当ブログの意見は全く無関係ですから!
そしてワタシの拙い考察をお許し下さい。

で…
現在の企画は《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》で、その第一弾である【Baurzhan  Bekmukhanbet氏と日本の弾琴男子埴輪のクロスオーバー】のシリーズ投稿中です。
…それで、現在はその仕込みのために相川考古館所蔵の弾琴男子像さんと古代カザフスタンの弦楽器Dzhetyasar(Жетіасар)のqossaz(қоссаз)の平行関係を考証してます。
…さらにその前に弾琴男子像さんにはウクライナまでお出掛けしていただくスケジュールになっていたんですが…

予定はそのとおりにいかないのは世の常です。

ブログの投稿がウクライナにたどり着くまで、ドンブラとBaurzhan  Bekmukhanbetさんの出番はありません…の予定でしたが、今回は投稿の最初にMaksat Medeubek"博士"のInstagram投稿、投稿の最後でTURAN ethno-folk ensembleのYouTube動画の出番となりました。
そして今回は相川考古館の弾琴男子埴輪氏さんはおやすみです、すみません。


⊂O–O⊃あしべ
え〜っと、今回の投稿はワタシひとりでしゃべります。
理由なんですが、その前説明として、Maksat Medeubek"博士"、いまここで"博士"の敬称を使ったのは彼のInstagramのプロフィールに「PDD doctor」と明記されているからでして、そして今回とりあげるのが2023年11月21日のInstagramの投稿によるレクチャーの中の前半部分であるからです。
こういうシチュエーションでは博士呼びがいいですよね、やっぱり。
では引用します。

 >Садақ әлем халықтарының бәрінде кездесетін қару. Садақтың ең дамыған түрін жасаған Орталық Азияны мекен еткен біздің ата-бабаларымыз еді. Оны аңшылықта, жаугершілікте және қарапайым тұрмыс-тіршілкте де пайдаланған. Ол қару ғана емес, жауынгердің рухани жан серігі. Көптеген ғалымдар ішекті аспаптардың арғы тегі садақ деген тұжырымды алға тартады. 
(※google翻訳:
弓は世界のどの国でも見られる武器です。 最も発達したタイプの弓を作成したのは、中央アジアに住んでいた私たちの祖先です。 狩猟、戦争、日常生活にも使用されました。 それは単なる武器ではなく、戦士の精神的なソウルメイトです。 多くの科学者は、弓が弦楽器の祖先であると主張しています。)

引用以上。


Maksat Medeubek博士は、当ブログ第一回であるこちらの投稿の、その最初の一番最初に引用させていただきましたSagatbek Medeubekyly Medeubek博士のご子息でいらっしゃいます。

このように狩猟・戦闘用の弓を弦楽器の起源とみなす考え方は中央アジアはもちろん日本でも支持されてまして、だからこそ当ブログでもブログカテゴリーで「弓と弦楽器、日本とカザフ」というテーマを設けて一連の投稿を続けております。
その一方で、ワタシが参考書にしているCurt Sachs博士は狩猟用の弓と楽器を結びつける方向に異論反論を主張していたんですよねぇ(苦笑)
この辺りの論については別の機会にあらためて投稿します。

あれ?今回はBaurzhan  Bekmukhanbetさんの企画だったはずなんだけどなぁ(苦笑)
いやまぁ、投稿の最後のYouTube動画のサムネイルの真ん中にBaurzhan  Bekmukhanbetさんがいるからいいよね?
閑話休題。

で、こういう画像をWikipediaで見つけたんです。
File:Bowl with Bahram Gur and Azada MET DP235036.jpg

https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Bowl_with_Bahram_Gur_and_Azada_MET_DP235036.jpg#mw-jump-to-license
CC0

この画像はchang(çeng)と呼ばれるharpについてのWikipedia記事にありましたので、演奏されている楽器はchang(çeng)と思われます。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Chang_(instrument)

この画像が一体何を描いているのかについてですが、この画像にはこのようなキャプションが付いていました。

«Azada plays the chang, riding behind Bahram Gur.»

そこから調べると、メトロポリタン美術館のサイトが検索されました。
そのサイトの日本語ページから引用します。

>ササン王朝のバーラム 5 世(治世420~438年)が、お気に入りの楽師アザーダに弓術の離れ業を挑まれるというものです。ここではバーラム王が雄のガゼルの角を射落として(以下省略)


ブログカテゴリー「弓と弦楽器、日本とカザフ」らしい絵柄なんですけれども…

今回の投稿は「blocking奏法」やカザフスタンの民族楽器のharpやlyreについての内容なのですが、やはり狩猟が話の中に出てきまして…

え〜っと、このブログではブログ主であるワタシの他に、ブログメンバーのおふたりが鹿のお姿で登場していただいておりまして…

ぶっちゃけ、気まずい方向に話が進みますので、今回の投稿はワタシひとりでしゃべります。

それではlyreの「blocking」奏法から話を始めます。
まずは参考資料からの引用で、北ヨーロッパのlyreのひとつであるAnglo-Saxon lyreについての論文から引用します。

THE ANGLO SAXON LYRE
Playing Techniques Guide

PRODUCED BY
Dr Andrew Glover-Whitley Copyright©ARG-W2016

Page 5
Blocking is where you actually stop certain of the strings from sounding by placing a finger/s of the left hand on the string/s and allowing the open strings to resonate.
(※google翻訳:blockingとは、左手の指を弦に置き、開放弦を共鳴させることで、実際に特定の弦の音を止めることです。)

引用以上。

こちらの投稿で「blocking」と呼ばれるlyreの奏法が日本の伝統楽器である和琴にも用いられていると述べました。
和琴の奏法で「blocking」に相当するのが「三」と「四」と呼ばれるもので、これは右手に持った琴軋(ことさぎ)というピックで和琴の6本全ての弦を掻き鳴らした後に左手で5本の弦を左手で押さえて音を消し、特定の音だけを残す演奏をします。

ではYouTubeからそれぞれの演奏の動画をご覧ください。

YouTubeから「blocking」奏法を用いて演奏している…いますよね?
すみませんワタシ素人なもので自信がありません…
Anglo-Saxon lyreの動画です。

Peter Pringle
CAEDMON'S HYMN on the Anglo-Saxon Lyre
演奏されているAnglo-Saxon lyreの弦は楽器の下部から上部の「playing window」の部分に向かって扇のような末広がりに張られています。
左手の指先は「playing window」で弦に当てられて、右手は楽器の下部の弦が狭い間隔で並んでいる辺りで一気に掻き鳴らしています。

次に日本の和琴の演奏のYouTube動画を見てみましょう。
楽器の形はともかく、右手でかき鳴らし左手で弦を押さえるという和琴の手の動きはAnglo-Saxon lyreのそれとよく似ています。

平成30年 和琴「菅搔」二齣二返 一松神社 高画質版

前回の投稿「韓国土偶裝飾長頸壺とSiberian lyreと相川考古館・弾琴男子像さん」で紹介したSiberian lyreですが、Wikipediaの記事の中に「blocking」奏法を用いているとの記述がありました。

Wikipedia
Nares-jux
Construction and playing

The nares-jux is played with a blocking technique: the player strums the strings with the right hand and uses the fingers of the left hand to damp those strings which are not intended to sound.
(※google翻訳:nares-juxはblocking奏法で演奏されます。奏者は右手で弦をかき鳴らし、左手の指を使って鳴らさない弦を弱めます。)


そこでYouTubeを漁ってみたら、この動画を見つけました。
残念ですがタイトルからは動画の中で演奏されているのがハンティ(Ха́нты)人の民族楽器のнарс-юх(英語表記ではnares-jux)なのか、マンシ(манси)人の民族楽器のсанквылтапなのかは判別できません。

RifeyTV
Настроение нового дня. Санквылтап и нарс-юх
02:00過ぎあたりから手のクローズアップが映ります。
右手は弦の一部をかき鳴らしていて、左手は指先で弦を押さえているのがわかります。

このSiberian lyreの両手の動かし方は、Anglo-Saxon lyreや和琴とそっくりではありませんが左手の動かし方は似ているとおもわれます。
Siberian lyreの弦は全て平行に張られていて、Anglo-Saxon lyreや和琴のような末広がりではありませんので、右手で全ての弦を一気に掻き鳴らすのは難しいのでしょう。

シベリアにlyreがあるように、カザフの民族楽器の中にもadyrna(адырна)と呼ばれるlyreがありました。
ただしこの呼び方はharpとlyreを合わせた総称であります。
adyrna(адырна)の代表的なものはこちらの画像の楽器です。共鳴体内部から弦が伸びているので、こちらはharpの形態です。



https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Adyrna.jpg#mw-jump-to-license
BY-SA 4.0

以下でカザフスタンの博物館の説明文や演奏している姿の画像をお見せしますが、そこから考えると、両手の動きに差がないadyrna(адырна)に「blocking」奏法が有るようには見えません。

まずはアルマトゥイにあるカザフスタンなどの民族楽器を集めた博物館である「Ықылас атындағы халық музыкалық аспаптар музейі」のサイトにあったadyrna(адырна)の解説の一部を引用します。

Ықылас атындағы халық музыкалық аспаптар музейі
АДЫРНА АСПАБЫ

Аспап ойнаушының қай қолмен тартатындығына көңіл бөлмейді, оны оңқай да, солақай да іліп тартып немесе шертіп те ойнай алады. Ең бастысы – аспаптың үнін бұзбай, шебер орындай білсе болғаны.
(google翻訳:この楽器はプレイヤーがどちらの手で演奏しても問題はなく、右利きでも左利きでも演奏できます。 大切なのは、楽器の音を損なわずに上手に演奏できることです。)

adyrna(адырна)を弾いている様子が、2005年発行のカザフスタン500テンゲ硬貨に圧印されていました。



https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Coin_of_Kazakhstan_500Adyrna_averse.jpg#mw-jump-to-license
KAZAKHSTAN
Law on Copyright and Neighboring Rights 
Article 8. Works Not Protected by Copyright


Anglo-Saxon lyreや和琴、Siberian lyreなどの「blocking」奏法は、YouTube動画でご覧いただいたように、右手で鳴らした弦を左手で音消しするわけで、だから両手は全く違う動き方をするのです。
両手の動きに差がない楽器には「blocking」奏法がないと思われます。
ワタシは素人ですので断言はできませんけれど。

Anglo-Saxon lyreや和琴は弦が末広がりに張られていますが、カザフスタンの民族楽器の中に同じような弦の張られ方をしたlyre型の形態のものがありまして、こちらもadyrna(адырна)と呼ばれています。
こちらのadyrna(адырна)は相当に古そうなので実際に演奏できる状態ではなさそうですが、上記のharp形態のadyrna(адырна)とは違い、末広がりに弦が張られていますので、こちらの奏法はAnglo-Saxon lyreや和琴と同じような「blocking」奏法を使って演奏していたのではないかとワタシは想像しています。

ブログに貼れる画像は手に入らなかったので、画像を確認できるサイトをご案内して、中の記事の一部を引用します。

…この記事が問題なんですよ…

ともあれ、こちらのadyrna(адырна)は弦が共鳴体の側面に、そして末広がりに張られているのをご確認ください。

KZNEWS
Адырна — аң-құсты шақыратын да аспап  
(※google翻訳:
adyrna(адырна)は動物や鳥を呼ぶための道具でもあります)

Аспапты бұрын әскери жорықта, аң аулағанда, әсіресе, жануарлар мен құстарды шақыру мақсатында қолданған. Мысалы, адырнамен маралдың дауысын салып, бұғыны шақыруға болады. Сондықтан адырнаны маралдың басына ұқсатып жасап, мүйізіне ішек тартқан.
(google翻訳を一部修正:
過去には、この楽器は軍事作戦や狩猟、特に動物や鳥を呼ぶ目的で使用されていました。 たとえば、adyrna(адырна)で鹿の鳴き声を出し、鹿を呼ぶことができます。 そこで、鹿の頭の形をしたadyrna(адырна)を作り、角には弦を付けました。)


え〜っと、いつもならばブログメンバーの三人でお話しするところを今回の投稿ではワタシことブログ主のあしべがひとりでしゃべりました。
なんで他のお二人が出てこなかったかと言いますと、今ご紹介したadyrna(адырна)が鹿を狩の獲物にすると読み取れる内容の文章だったためでして。

/)ЧЧ/)
(6_6)シカタケル
…人間が鹿を狩の獲物にするのは世界中にあるとことだしな?

/")/") 
(Ŏ_Ŏ)シカハタビ
…いまさらそれを気にして咎めだてたりはいたしませんよ?
…わたくしたち鹿は神聖な存在であることも世界中で知られていますから?

⊂⊙-⊙;⊃ あしべ
うわっやっぱり怒っていらっしゃる。
おふたりにお鎮まりいただきますために、YouTubeからTURAN ethno-folk ensembleの曲の動画のリンクを貼ります。

TURAN ethno-folk ensemble
TURAN / AQSAQ QULAN (Ketbuǵa)
(\ЧЧ/)
(ÒдÓ)シカタケル
《TURAN ethno-folk ensembleと日本の文化財のクロスオーバー》の企画を一回飛ばして、次の投稿はこの曲についてだ。
愚かな狩人に天誅を喰らわせてやる!

⊂O–O⊃あしべ
はい、この動画では狩人があの世にいきました…


/")/")    次回の投稿は
(Ŏ_Ŏ)  「音楽劇【AQSAQ QULAN(Ақсақ Құлан)】」でございます。