ちょうど夕食時。
ガイドたち含む嵐が丘の住人が集まって食事を取っていると、私はお茶だけ飲みながらそわそわしていました。
夕食はもうリアルで済ませましたからね。それに、聞いておきたいことがあったので。
一段落してから、「あのさー」と私は切り出します。
「メインガイド、って普通はいるみたいだけど、メローネが去った今、私のメインガイドってどうなってるの?」
そんなことを口にしたのですが、ガイドたちはきょとんとしています。
「ふーん。この中で一番古い付き合いなのは姫様よね」とセルフィが言うと、姫様は困ったように「ええと……私はメインというわけではありませんが……」と眉をひそめます。
「じゃあ、赤毛?」と私が言うと、赤毛はこれ以上なくぶんぶんと首を振って「やだ!かみなのメインってなんかやだ!」と抵抗しています。「おう、かみなさんの特別がそんなに嫌か?」とケンカをふっかけると、「だって、メインっていうと責任問題になるじゃん。私、本当に好きな人以外のメイン張りたくないし」と相変わらず失礼なことをのたまいます。
「かみな様のメインだったらやってみたいわ~」と清嵐が言うので、「……それは私がなんか嫌だ。絶対人の道に外れたことばっかさせられそうだし」と断っておきます。ガイドなのに倫理観がないって厄介。
女教皇は、我関せずといった風に食事を口に運んでいますし、法師も「おい、そこのメイド、おかわり」と飯のことばかり考えているようです。
「キヨさんなら私はいいかな~?」とちらっとキヨさんを見ると、キヨさんは「ん~」とうなって「悪いけど、僕はメインにはならないかな。個人的に人を束ねるとか苦手なんだよね」とこれも断られます。
「ちっ、じゃあセルフィでいいよ」とセルフィに視線を向けると、「あら、私?私は何かの主になるのはもうごめんなのよね」と。
「でも、最近来たばかりの瑠璃子さんに任せるわけにもいかないし……あれ?もしかして私、人望ない……?」と悶々とすると、ガイドたちは顔を見合わせ、仕方なさそうに赤毛が「別に良いんじゃない?無理にメインを決めなきゃいけないって話でもないし。メインがいなくても、お互い得意な分野でかみなを支えていくからさ」と言います。
「メインって、いなくてもいいものなの?」と私が疑問を口にすると、セルフィが「そうね。いてもいなくても一緒……とまでは言わないけど、いなくても問題ないわ。ほら、うちにはガイド以外もいるし。式神もいることだし、別に平気よ」と言ってのけます。
「そっか……ならいいけど」と私が紅茶のカップを置くと、サーシャがおかわりを注ぎながら「そうよ。私たちだっているじゃない」と言います。隣では、先ほど法師に「メイド」扱いされたリリーもこっちを見て微笑みました。
しょうがないので、心の中で、リリーのおっぱいサイズを「おっぱい占いの歌」を歌いつつ見当を付けます。
リリー……赤毛と付き合ってから、またおっぱいが育った気がするのです。もうね、このおっぱいを好きにしてるかと思うと赤毛が憎くて憎くて。姫様のお尻もまた形も大きさも良いんだ……。
そうして、地味に赤毛へのヘイトを溜めていると、後ろから頭をバンと叩かれます。
「いたっ!」と振り返ると、真理矢が苦い顔をして「あ、良くない虫が飛んでいたもので」と言います。絶対、私の邪心を見抜いたんだ……!と思っていると、真理矢が後ろを向いて、「……どうせ僕には胸もお尻もないですよ……」と、拗ねています。
一応、真理矢とは夫婦としてやっていっているのですが、一旦拗ねると困った子ですからね。決してバカではないのですが、深読みしすぎたりする癖があるので。
「まあまあ真理矢。とりあえず飲もうよ。ほら、お茶注いであげるから」と、サーシャに「ちょっといい?」と断ってから、新しいカップに紅茶を注いであげます。
「……姉様、僕のことちょっとバカにしてるでしょう?」と真理矢が不機嫌そうに言うので、「してないしてない。誓ってしてない」と否定しておきます。
メインガイド選びは、まあ、そんなに焦らなくて良いみたいですね。
なんか、「絶対メインガイドはいなきゃダメ!」って言われるよりは肩の荷が下りましたよ。機会があったら、またメインガイドに自然となっているものかもしれません。