小料理屋「月」の誕生 | 魔法石の庭ver.2

魔法石の庭ver.2

スピリチュアル界と、ちょっとパワーストーンブログになっています。

 超・久しぶりにアルテミスに行ってみました。

 館内からてくてく歩いてアルテミスのある広場に出ると……そこには、木材が格子のように縦横に並んだ不思議な建物が。

 え、リニューアルでもしたの?と思っていると……どこか和を感じさせる、黒いドアの玄関に、小さな看板が置いてあり、「小料理屋 月」と。

 

 ……ええええええ!?私が作ったのはバーだよね!?なんで小料理屋に!?と戸惑っていると、「入りましょう」と真理矢が促してきます。

「真理矢……知ってたの?」と聞くと、「いえ、まあ……」と煮え切らない返事。

 

 ともかく、玄関の引き戸をガラガラと開けて中に入ると、適度な広さの店内。狭くもなく、広すぎもしない感じです。

 そして、木製のカウンターの向こうには、赤毛がその長い髪を結って「いらっしゃい……ってかみなか」と出迎えます。

 

「赤毛、一応ここのオーナーの私に一言も相談ないってどういうことよ!?」とくってかかると、赤毛は気まずそうに「あー……だって、ねえ」とこちらも煮え切らない返答が。

 そこに、「私が頼んだんです」と、厨房の奥から女性の声がしました。見ると、おしぼりを持ってきた、和服にたすきをかけた姫様がニコニコと出てきます。

「バーも良かったのですが、私にはこっちの方が合いますから」と、慣れた手つきでおしぼりを私と真理矢の前に並べます。

 

「姫様……一言くらいあっても……」と私も、姫様相手には強く出れないのでしたが、姫様は「相談したかったのですが、できませんでした」と少し眉をひそめます。まあ……一ヶ月ぶりくらいにスピリット界に降りましたしね。

 

「赤毛はそれで良いの?」と聞くと、「いや。私、姫の好きにさせてあげたいからさ」と言います。

 

「……まあ、なっちゃったものは仕方ないですけど。私、小料理屋ってよく知らないんですよ」と言うと、姫様が「まあ、お酒と、簡単な料理を提供する所ですね。そこのところはバーと一緒ですけど、小料理屋は比較的小規模でやってるところです。今後は、細々と、ゆっくりのんびりやっていきたいと思いますので」と説明してくれました。

 

「はあ……じゃあ、とりあえず、日本酒を冷やで。あと、料理は今日のお勧めをお願いします」と、私は一応注文しました。真理矢は、「僕も同じもので」と言います。

「はい、冷やと、そうですね……アジのなめろうなんかどうですか?」と姫様が聞くので、「なめろうですか。私、食べたことないので、それでお願いします」と答えます。

 

 赤毛は、酒の準備をしており、そこそこ忙しそうです。

 途中、姫様が「お通しです」ときゅうりの浅漬けを出してくれました。なので、真理矢と一緒にそれをつっつきながら料理を待ちます。

 

「しかし、あれだね。妖精たちもいないんだ?リリーは?」と聞くと、赤毛が「リリーは奥で姫の手伝いをしてるよ。だいぶ男性にも慣れたけど、まだ男性恐怖は残ってるからね」と説明されました。

 

「はい、お待たせしました、なめろうです」と、姫様が出してくれたのは……どう見ても魚がぐちゃぐちゃになった代物。まあ、なめろうってそういうものですけどね。

 しかし、一口食べると……「う、美味い!」と、私は叫んでしまいます。

「美味しい!アジがとろっとしてて、味噌の香りもして……うん。ここで日本酒は……贅沢~!」と、私は、いつもロクなものを肴にしていないので、「美味しい美味しい」と言いながらなめろうをたいらげます。

 

 なめろうが運ばれる前に、赤毛が出した冷やをきゅっと飲むと、これも新感覚。辛めですっきりした味わい、でも、ちゃんと甘みのある日本酒に、舌鼓を打ちます。

 

「は~、美味しかったあ」と、言うと、姫様が「それは良かったです。もっと色々と作りたいんですけど……かみなは量はそれほど食べられないでしょう?お腹がすいたらまたいらしてくださいね」とにっこりと微笑みます。

 

 ……ていうか、赤毛、姫様の尻に敷かれてない?と思うのですが、まあ、「惚れた方が負け」ですからねえ。

 でも、料理も酒も良いお味でしたし、何より小料理屋になって、お客さんとの距離が近くなるのもまた良し。な気がします。

 

  酒だけ飲みに来るのも良いかもなあ。ともあれ、ごちそうさまでした!