魔法石の庭ver.2 -2ページ目

魔法石の庭ver.2

スピリチュアル界と、ちょっとパワーストーンブログになっています。

 結婚記念日……過ぎちゃいました。一応、「今年はメローネもいないし、やらないでもいいかな」と思ってはいたんですが。

 はあ……私、メローネに去られたのが、自分で思うよりショックだったのかなあ、と思っています。真理矢は、一生懸命慰めてくれるのですが、あんまりそれに甘えてもね。

 

 で、久しぶりにスピリット界に降り立つと、リリーの後ろ姿が見えました。

「リィリィー!久しぶり-!」と、ルパンダイブ並にその豊満な胸にダイブしようとすると……何か透明なガラスやアクリル板のようなもので弾かれます。「へぶしっ!」と、私は無様に床に落っこちてしまいました。

 

「え……かみな様?え?」と、リリーも困惑しています。「むぎゅー」と、私がよろよろと立ち上がると、前方のドアが開いていて、姫様がそこからじーっとこちらを見ていました。

「えと……姫様?の仕業なのかな?」と聞くと、姫様が珍しく怒ったように「だって、私のリリーですもの」と言い放ちます。

 

「でも、姫様だけのリリーじゃなくて、赤毛のリリーでもある……と、思います」と、私は語尾を小さくします。だって、姫様がそれだけ不機嫌そうだったからです。

「確かに、私だけのものではありませんが。しかし、私のものであることには変わりありません」と言われ、私は「姫様、怖えー!」と内心思ってしまいます。

 

何?姫様って、あれなの?「他のことには概ね寛容だけど、恋人のことに対してはヤキモチ焼き」ってタイプ?強い。

 

「ま、まあ、姫様。これはスキンシップですから……」と、姫様から目をそらしながら言うと、「セクハラする人は大抵そう言うんです」と言われます。ぐぬぬ。

「すみません、以後気をつけます!」と謝ると、姫様は「ふう」とため息を吐いて、「約束ですよ?」と、ようやくいつもの柔和な雰囲気に戻り、「行きましょう、リリー」と、リリーの手を取って立ち去りました。

 

 その姿を、45度の正しいお辞儀で見送ると、背後からじーっと見られている気配がします。
「殺気!?」と振り向くと、そこには、紫色のストレートロングの髪をした女教皇の姿がありました。

「あなた、相変わらずね。最近見なかったけれど、どう?元気にやっていたの?」と言われ、私は「え、ええ……元気は元気ですけど」と答えます。
「そう。まあいいわ。たまには私の部屋にいらっしゃいな」と言われ、赤毛、姫様、と続く3つめの部屋……女教皇の部屋にお邪魔します。
 
「さて……何から話せばいいかしら。あなた、もちろんメローネが嵐が丘を去ったのは知ってる?」と言われ、私は「ええ、もちろん。私のせいですよね……」とまた落ち込んでしまいます。
「……別に、叱ってる訳じゃないわよ。まあ、あなたのせいと言われればそれは事実だけど。でも、あなたが人間である限り、愛情を続かせるのに限界はあるわ。それは、私もわかってるつもりよ」と、女教皇は言います。

「……」と私が黙ってしまうと、女教皇は肘掛けに肘を置いて「仕方ないのよ。メローネも言ってたと思うけど、これは相手が人間でもガイドでも一緒よ。恋や愛はいつまでもそのままではいられない。変わってしまうのね。ガイドからの愛情は変わることがないから、そこのところはあなたはメローネを傷つけ続けることになるけれど。それも人間の罪の一つね」と、言います。
「……私、メローネに謝らなくちゃ……」と私が言うと、「謝る?謝ってどうするの?『もう一度、愛情を取り戻す努力をするから、帰ってきて』とでも言うの?謝るってことは、『許して欲しい』ということよ。それって、私から見た限りはエゴでしかないわ」と、女教皇が告げます。

「……私、どうしたら良いんでしょう……」と、私が小さくつぶやくと、「どうもしないわよ。起こってしまったことをリセットしたり上書きすることはできないわ。……まあ、今は悩みなさいな。それが、あなたにできる、メローネに対する誠意よ」と言われました。

 なんとなくですが、女教皇は私を励まそうとしてくれたのかもしれません。こちらに意識を戻してから、そう思いました。

 メローネがいなくなって一ヶ月経ちました。

 時々、昔のラブラブだった頃の記事を読み返したりして、寂しいような悲しいような気持ちになりましたが、メローネの最後の気遣いのおかげで、そんなに気落ちはしてません。少なくとも、泣いたりはしていません。

 ただ、空虚なのです。心のメローネが占めていた場所がそのまま抜け落ちてしまった訳ですから、そりゃ空っぽにもなりますって。

 

 真理矢は、たまに後ろから黙って抱きしめていてくれます。私が悲しいときは、そうやって慰めてくれる、私にとってのナイトが真理矢なのです。

 

 と、久しぶりにスピリット界に降りて、ベッドも今度は真理矢と私とのベッドだから、新調せんとな……とか思っていると、赤毛がひょこっと顔を出します。

 

「あ、来た来た。いやー、かみな、落ち込んでるのかなって心配してたんだけどさ」

 そう、自慢の長い赤毛の髪をかき上げながら、赤毛は言います。……一応ガイドだし、付き合いも長いし、心配してくれてたのかな?とは思いましたけど。

「かみなが大変なところで悪いんだけど、ちょっと報告があるんだよね」

そう言われ、私は

「何?変な報告は止めてよね」と返します。

 

「実は~……晴れて姫と付き合うことになりました~!!」

 本当に笑顔満開で言われ、私は毒気を抜かれて「そう。おめでと」とそっけなく言います。

「でも、そうすると姫が失恋しちゃうし、リリーも失恋しちゃうじゃん?そこで赤毛さん、とっておきの秘策を考えました!」

 赤毛は、人差し指を立てると、それを唇に当てます。……すごく嫌な予感。

 

「私は、姫とリリーと両方と付き合うことにしたよ!」

 赤毛にそう宣言されて、私は後ろから抱きついたままだった真理矢を引きはがす勢いで「ええええええええ!?」と叫びます。

「ちなみに、姫は私とリリーと付き合って、リリーは姫と私と付き合うことになったから」

 私は、更に「ええええええええええええええええええええええええ!!?」と驚きます。

 

「……姫様とリリーはなんて?」と聞くと、赤毛は「いやー、最初は二人ともびっくりしてたけど、やってみると案外居心地良くて良い感じだよ。時々3人でデートしたりもしてる」とほくほくと笑いながら言います。

 

「……で、本音は?」「姫とリリーのお尻とおっぱいを満喫できて超・幸せ!」

 赤毛の本音が出たところで、「あんたまさか3pとか……」と、前々から赤毛が夢にしていた3p願望を口にすると、赤毛は「それがさー。エッチは二人とも別々がいいって言うんだよねえ。私は3pでも構わないんだけど」と、こんどはしょんぼりとうなだれて言います。……当たり前だろうが。

 

「うわー……なんかショック。メローネの喪失感が一瞬吹き飛んだ。やるな、赤毛。こんなネタぶち込んでくるとは」と言うと、「あ、かみなは気づいてないかもしれないけど、私、ガイドだから。ガイドは人間を助けなくちゃね☆」とのたまいます。

「気づいてないって、あんた、数年私と一緒にいてガイドだと気づかなかったらヤバいでしょ……」と言うと、「え、知ってたの?ん?」と、挑発するように顎をしゃくります。こいつ……。

 

「まあ、そういうわけだからさ。スピリット界って、ほら、重婚とかあんま気にしないじゃん?だから、上手くいけばこのまま3人で結婚するかもね」と言われ、私は「そう上手くいくかねえ……」と腕を組みました。

 

 うーむ……赤毛のやつ、ホントに本能に忠実に生きてやがるな。でも、リリーと姫様も、よくオッケーしたもんだ。案外、女性2人は肝が太いのかもしれません。

「それって、他の館の住人にも言ったの?サーシャとか……」と聞くと、「もちろん言ったよ。サーシャにはめっちゃ怒られて、リリーが止めてくれなかったら多分殺されてたけど」と言うので、「そりゃそうだよ。サーシャが一番常識持ってんな」と私は納得しました。

 

 しかし……重婚……しかも、メローネと真理矢という、男性と女性と結婚していた私が言うのもなんですが、この館の行く末が怖い……。赤毛のことだから、そのうちホントに3pとか持ち込みそうで怖い。なんて日だ!!

 わかってはいた結末が、来ました。

 

 久々にスピリット界に降り立つと、メローネが手招きして呼び寄せます。

 私は、応接間にやってくると、メローネが長机の椅子に座ったのを見て、その対面に座りました。

 

 式神としていつも付いている真理矢と茨ですが、茨はそれを見て、「じゃあ、あたしは酒でも飲んでるよ」と退席します。

 真理矢も、それに続こうとしましたが、メローネが珍しく「真理矢。お前はかみなと一緒で良い。かみなの側にいろ」と言ったので、「はあ」と毒気を抜かれたような表情をして、私の隣に座ります。

 

 そして、メローネは「しばらく旅に出ようと思う」と切り出しました。

 これって……と、私は、姫様の前身であるおば様が私と揉めて一度この館を去ったことを思い出しました。まさか、2度目があるなんて。

 

「どうして?理由は?私が、メローネと真理矢の間をふらふらしてたのが嫌なの?」と聞くと、メローネは「そうじゃない」と否定します。

「そんなことで別居を申し出るのなら、とっくにそうしている」だそうです。でも、どうして……。

 

 すると、メローネは、「ここ最近、何度俺のことを思い出した?」と聞いてきます。

 私は、言葉に詰まりました。正直、ここ3ヶ月ほど、全くと言っていいほどメローネのことを考えたことがなかったのです。メローネの姿が見えなくとも、「また仕事か」くらいに思っていました。

 

「率直に言うと、お前と俺との絆の証であるペアリングは、とっくに切れている」と言われ、私は衝撃を受けました。

「それって……縁も消滅しそうってこと?私、そんなに悪いことをしたの?」と聞くと、「悪いことというか……お前の俺への情熱が冷めたという感じだな」とメローネは腕組みをし、「まあ、仕方ないことだ」と言います。

 

「元々、ガイドであるスーパーマン……俺の陽の存在が消えたことで、俺の存在も不安定になった。それが、お前が俺を好いてくれることで辛うじて俺はガイドとして繋がっていられたんだ。俺は、最初から、遅かれ早かれ消滅する運命にある」と……。

 

「メローネ……」と、私がなんと声をかければ良いのか迷っていると、メローネは「だから、婚姻関係も自然と切れることになるだろう。何度も言うが、これは仕方ないことだった。元から、俺はお前の好みストライクではなかったはずだ。それが、俺に強引に言い寄られたことで、心が揺らいだだけだ。しかし、お前の愛は間違いじゃなかった。今まで、陽のガイドを失ってもなんとかやってこれたことが奇跡だっただけだ」と。

 

 私は、実は、そのことをなんとなくわかっていました。

 メローネと会っている時でも、以前のような燃える恋心がなかったのです。なんでだろう?なんでだろう?と思っているうちに、メローネがおそらくわざと、館を空けるようになっていました。

 そして、それを了承していたのは、私なのです。

 

 メローネは席を立ち、ぐるっと私の横にまで移動すると、大きな手を頭の上に乗せました。

「……今まで、貞操観念のあんなに高かったお前に、真理矢と両天秤にかけるような真似をさせて、すまなかった」と。

 私は、うつむくことしかできません。メローネの言っていることは正しい。ずるいのはここまでずるずると引きずってきた私なのです。

 

 そこで、メローネは扉に向かい、「かみな、元気で。真理矢、かみなのことを頼む」と言って、扉から出て行ってしまいました。

 

 私は……動くことができませんでした。

 

 隣に座っていた真理矢は、私のことを抱き寄せてきます。

「姉様。僕は、姉様がいる限り、消滅はしません。だから――」と真理矢が言いかけたところで、私は、ぽつりと「なんで涙出ないんだろうな……」とつぶやきます。

「本当に愛した人だったのに、こんなにあっさりと別れられるもんなんだね。メローネが、前から会う機会を調整してくれてたからかな。今は、何にも感じないや。私って、こんなに冷淡な女だったんだね」

 そう言うと、真理矢は私を抱きしめて、「メローネは、自分の消滅までに、姉様を傷つけないように立ち回ったんです。それでいいじゃないですか。姉様がマイナスに考えることはありません。今は、僕がお護りします」と、さらにぎゅうっと抱きしめました。

 

 真理矢の、女の子の体の柔らかさを感じていると、段々気持ちがほぐれてくるのがわかりました。

 そして、私は、ぐすぐすと泣き始めてしまい、真理矢を困らせてしまいました。

 

 どうすれば良かったのかは、わかりません。ただ、私が過去、本当にメローネを愛していたのは事実です。私は、心変わりで夫を一人、失ったのです。

 

 

 お久しぶりです。ここのところ、スピリット界の方からは遠ざかってました。

 しかし、スピリット界から遠ざかれば遠ざかるほど、リアルの精神状態が良くない方向になってまして。ひどく一つのことに固執したり、イライラして人を寄せ付けなくなったり。

 やっぱ、スピリット界に降りるってことは、私にとって「癒やしの空間」なんだな~って思います。

 

 さて。

 館の様子を見るために降りると、タバコと何か甘い系の香りが混ざった匂いが鼻につきます。

 で、見ると、玄関でキヨさんが大麻を摂取しているところでした。大麻って甘い匂いなんだ……と、そこで初めて気づきます。

 

「キヨさん、なんで玄関なんかで吸ってるんですか?喫煙所に行けば良いじゃないですか」と尋ねると、キヨさんは「んーん」と頭を振って「なんとなく、キミが来るかと思ってね。待ってたんだ」と言います。

 

「しかし、相変わらずアクセサリーじゃらじゃらしてますが」と指摘すると、「あー、まあね」とさして興味のない様子。まあ、大麻でダウナーになってるのもありますが、キヨさんってこういうガイドですので。平常運転です。

 

 で、しばらくキヨさんと、大麻の煙が空中に溶けていくのを見ています。

 普通、こんなにヘビーユーザーなら、ラスタ(カナビスユーザーが目指す「天国」。大麻を使用すれば使用するほどラスタに近づくと言われている)に行けてるはずなのですが、キヨさんの場合、タバコとあまり変わらないようです。

 

「……なんか、私に言うことでもあったんじゃないですか?玄関まで迎えに来てるぐらいですし」と聞くと、キヨさんは「うーん。……まあいいやって思ってね。何か言おうと思ってたんだけど、カナビス吸ったらどうでも良くなった」と、ガイドなのか何なのかわからない発言をします。

 

「ちょっと。ガイドがメッセージ授けなくてどうするんですか」とじろりと見やると、「別に、メッセージなんてなくてもガイドは存在できるよ。僕ってほら、歩くメッセンジャーなところあるじゃん」と言うので、「自分で言わないでくださいよ。赤毛でもあるまいし……」と、現在絶賛三角関係中の赤毛のことを思い出します。

 

「そうだ。これって、私の独り言なんですけど」と前置きすると、キヨさんは大麻でとろんとした目で「うん?」と一応聞いてくれるようです。

「男の友達が、とある女性を好きなんですよ。でも、その女性は、他の女性が好きで、その他の女性は友達のことが好きなんです。これって立派な三角関係なんですけど、本人たちは特に奪い合いしたいわけでもなさそうなんですよね。平和的というか牧歌的というか。でも、友達は一応私の意見を聞きたがるんですよ。これってどうなんでしょうね?」

 

 私が説明し終えると、キヨさんは短くなった大麻を自分の手のひらでもみ消します。「ちょっと、それ、熱くないんですか!?」と慌てると、「別に。ここはスピリット界だよ。物質に左右されない世界なんだから、自分が熱くないって思えば何とでもなるよ」と、広げた手のひらには、さっきまで吸っていた大麻もやけどの跡もありませんでした。

 

「で、何だっけ。ああ、三角関係ね。そんなの、放っておいた方が良いんじゃない?」と何でもなさそうに言うので、「いや……でも、友達も女性2人も、一応世話になってますし、なにか三方丸く収まる方法はないのかなって……」と言い返すと、「それだよ」と指をさされます。

「へ?」と私が言うと、「それがダメだって言ってる。恋愛なんて、いずれはこじれる関係なんだから、丸く収める方法なんてないよ。あったとしても、第三者に決められることじゃない。その友達が、僕はどういう人か知らないけど、ちょっとキミに甘えすぎてる気がするね。人は、どうあったって最期は孤独だよ。寂しがりもいい加減にしないと」と、キヨさんはだるそうに、こちらを見やります。

 

「うーん……なるほど。まあ、要は余計なお節介はしない方が良いってことですかね」と言うと、「そういうこと。人のすることにちょっかいを出すつもりなら、最後まで自分が傷つこうが見届けるぐらいの気持ちじゃないとね。実際、そういうのって、本人はただ愚痴りたいだけかもよ?問題を解決しようとはしない。だから、そういう愚痴をホステスなんかは高い時給貰って聞いてるわけでしょ。キミも、これからは時給取ったら?」と言われます。

 

 相変わらず、キヨさんは頭良いな~と思います。で、女教皇みたいに威圧感もないですし。なんでしょう?親戚のお兄ちゃんみたいな?といったら、元ネタの人に怒られるか……はは。

 でも、ちゃんとガイドしてるなーって思いますよ。ってか、赤毛、もう少しちゃんとしないと、姫様をリリーに取られるぞ……って思いますが。まあ、そのリリーが赤毛のこと好きなんですけどね。うーん。この件は、私は手を引いた方が良いってことなんでしょうかね。

 ちょこっと、昨夜、スピリット界に降りてきました。

 

 一応、今日は目的があったので、リリーを探して館内を歩き回りましたが、どうやらリリーは自室にいるようです。

 

 そこで、コンコンとドアをノックして、「リリー、いるの?」と声をかけると、すぐにドアが開きます。

「えっと、これからアルテミスに行こうかと思ってたんですが……」と申し訳なさそうに言うので、「え?あそこ、男性もいるよ?客として?」と聞くと、「いえ、裏で姫様と調理のお手伝いです」と言われます。オーナーである私が聞いてねーぞ!?

 

 で、「そう……じゃあ、あんまり時間ないってことか」と改めて出直そうかと思っていると、「いえ、私はあくまでアルバイトみたいなものですから、ちょっと遅れても平気です。かみな様と話をしていた、と言えば大丈夫ですよ。何かご用があるんですよね?」と聡いところをみせます。

 

 そうして、リリーの自室に通され、ふかふかのチェアに座ると、「さて……」と話を始めます。

 

「リリー、今、好きな人いるよね?」と、率直に言うと、紅茶の缶を持っていたリリーは、「え!?え、えっと……」と視線を泳がせます。

「隠さないで良いから。でも、私はそれが誰かは知らないから、噂とかじゃなくてリリーの口から真相を聞きたいの」と、私はハッタリをかまします。本当は、リリーに好きな人がいるかどうかも知りません。

 

 リリーは、「あー……うー……」と、うなったりすると、小さくこくんとうなずきました。

 

「やっぱり好きな人がいるんだね……誰?私の知ってる人?」と聞くと、リリーは何か決心したかのように、一度開けかけた紅茶の缶を戻して、私の対面のチェアに腰掛けました。

「その、ご本人にはどうか内密に……」と言うので、「うん、承知した」とうなずきます。

 

「実は……赤毛さんのことが……気になります」

 

 それを聞いた瞬間、私の方が今度は「え……え?」とうろたえてしまいました。

「え?赤毛って男だよ?リリー、男性苦手じゃん?え、本当に?」と、私はオロオロと手をぱたぱたさせます。

 

「ええ……確かに、赤毛さんは男性ですけど、赤毛さんとは不思議と普通に接することができるんです。今まで、男性が怖くて仕方なかったのですが、赤毛さんだけが平気で。これって恋なのかもしれないと……そう思いました」と、リリーはまっすぐに私の目を見て言います。

 ……いや。いやいやいや。すっげーことになってるぞおい。

 

「え、えっと、まあ、それは女性として幸せで祝福したいところだけど、赤毛が誰を好きかは知らないんだよね?」と聞くと、リリーは寂しそうに笑って、「好きな人が、今誰を好きかは、見ていればわかります」と今度はまぶたを伏せます。

 

うっわ……ということは、赤毛→姫様→リリー→赤毛 という、まさに三角関係勃発ですよ!どうすんのこれ。

 

 でも、赤毛、根っからの女好きだからなあ……リリーに告白されたら、オッケーするかも。リリー、巨乳だし、尽くすし、可愛いし。

 でも、だからって姫様と3P成し遂げたら私が成敗します。

 

「そっか……でも、赤毛の性格上、覚悟はしてるってことだよね?」と聞くと、リリーは「私は、2番でも3番でも構いません」と言います。

 ええ子や……ってか、なんでこんな良い子が赤毛なんかを好きになるんだろう。やっぱ、顔か?赤毛、黙ってれば中性的な美貌の持ち主だしな。黙ってれば。

 

「うーん、でも、そこまでわかってて……なら、仕方ないか。リリー、頑張ってね。応援する」と私が言うと、リリーは微笑んで「ありがとうございます」と頭を下げました。

 

 うーむ……しかし、アルテミス事情がえらいことになってきたぞ。赤毛は姫様に恋してて、それゆえに姫様がリリーのことを好きだってことは気づいてるし。今度はまさかのリリーが男性に恋をするとは。リリーには「応援する」って言っちゃったけど、それは姫様の失恋を意味するんだよねえ。困ったことになりました。