何だよ

邪魔するな

これから変身しようとしていたとこじゃないか

俺という人間を

君の一言でまとめないでくれ

その一言から抜け出せなくなる

嫌だ まだ

俺は完成したくない

わけが分からない俺でいたい

俺はキャラクターになんてなりたくない

君の一言で

俺を製品化しないでくれ

お金のためと

割り切って始めた仕事で

お金が貯まらず

通帳の残高が減っていくと

自分のやってきたことまでが

失われていく感じがして

家賃って何だ

保険って何だ

そんな馬鹿げた哲学を抱え

明細書を眺める

疲れた体を癒すのは

最新のリラックスグッズ

締めて一万円

意味のない言葉でも

叫んだらきっと

振り向く人がいるだろう

くすくす笑う人もいるだろう


泣きじゃくる赤ん坊は

心の捉え方を知っている

食べたい触れたい甘えたい

願望を叫びに変えて


言葉は隠せない

言葉が奏でる響きと旋律を

あぶらかたぶら

人は繰り返しつぶやく

呪文になるまで

人を想う気持ちは

どうやって続いていられるのだろう

仕事や友達付き合いのたび

すぐに切り替えの利く

器用で気まぐれな心で

二人の間にあるものに

しおりを挟めておけたなら

明日あのページから始めようって

できるのに

明くる日二人は違う本を開く

今日は今日の物語が始まる

エンディングまではまたもたどり着けない

恋は毎日やり直しの繰り返し

新しさを重ね共に年老いていく

人はこぼしている

抱えきれない時間を

こぼしたくないと

願う間もさらさらと

記憶と名付けた過去

夢と名付けた未来

名付ける暇もなくやってくる現在

その行く末を

見届けることなく

砂時計の器の

上をのぞいても何もない

流れ落ちていく時間の中に

命はあったから

眠れない夜

相手が出るまで

鳴り続けるベルの音

心臓の高鳴り

もしもし

もしもし

大したことない用事

声が聴きたい

とりあえずの話題

今日あったテレビ番組から

友達のこと

友達の友達のこと

友達の友達の友達の…

お互いの近況から

話はディープな方向へ

相槌の打ち合い

何故か泣き笑い

切るタイミング逃す

夜が更けていく

心臓の高鳴りも

どこへやら

だれからともなく

話は終わり

じゃあまた

じゃあ

今度は興奮で

目がさえる

心と予定がごっちゃになって

混ざり合っている小さなスペース

願望のような淀みない未来と

それを振り返る過去が同居する

くだらない思い付きや

壁にぶつかった衝撃でこぼれる

愚痴をも飲み込んで

手帳は共に時を歩んだ

せわしなく揺れる電車の中で

ふと湧き上がった想いが

手帳を開かせる

昨日のページが語りかけにきて

今日の僕のひらめきと出逢う

気まぐれな現実を

夢で束ねようとしたのが

そもそもの間違いの始まりで

障害になるものを

省くことばっかり考えていた

競争相手なんてない人生で

一番手になってやるって

散らかしっぱなしの日常が

今はほほえましい

相変わらずな悩みを抱える

自分さえも

喫茶店には結論はない

ただゆるやかな午後がある

飲むためでなく

味わうための

紅茶で一服

季節は次の出口を探しあぐね

まだ上着を欠かせそうにない

冷たい空気に触れられて

嫌でも目が覚めてくる

冬に植え込まれた花は

芽吹くタイミングを計りかねて

土の中で溜まっていく

期待で溢れそうなエネルギー

密かに用意していた想いが

実は僕にもあるから

もうすぐさらけ出せるだろう

春の嵐の目の前で

分かりあえていたのか

分かりあえたと

誤解しあっていたのか

互いに伸ばした手と手は

いつしか違う物で埋まっていた

こんなはずじゃなかった

どんな顔で別れても

慰めになんてならない

それぞれに楽しんだ恋だから

それぞれの形で持ち帰ればいい