猫が争う声にさえ

何だか気持ちが紛れるのです

 

この夜に余って

佇んでいるかのような僕です

 

ありきたりな慰めを

今日は妙に欲しがっているのです

 

いつもより弱弱しく

光を映し出している月です

 

ほつれ放しの感情を

束の間さらけ出していたいのです

 

吹きすさぶ風に

乱れるばかりの髪です

まだ見えない花が
開いている
まだ見ぬ未来に

 

まだ見えない花が

悶えている

季節のはざまで

 

まだ見えない花が

聞いている

春一番の声を

 

まだ見えない花が
問うている
地上はまだか

冷めざめとした空に

消えてゆけ

 

みぞれの中に

包まれてゆけ

 

こぼれそうな感情を

拾い上げるばかりの心なら

 

あふれ出ようとする余白を

塗りつぶそうとする孤独なら

 

癒えてしまう前に

進んでゆけ

 

みぞれの染みた道路に

もう一滴を落としてゆけ

あなたの

その重みを

軽さを

響きを

受け継ぐこと

 

あなたがいたことの

事実を

瞬間を

ただありのままを

受け継ぐこと

 

あなたがいたからこその

幸せも

後悔も含め

受け継ぐこと

 

あなたがいない

悲しみを

苦しみを

受け継ぐこと

 

あなたを想い

広がった世界を

感じたことの全てを

受け継ぐこと

振り子のように

当然

戻ってくるだろうと待っていた

 

ぷいといなくなっても

それは一時的な現象だと

思い込んでいた

 

それほどまでに

君は当たり前になってしまっていた

僕にとって

 

置いていた荷物を再び背負って

僕は君のいない冬を行く

 

 

今にも 今にも

というところで

消えた

 

瞳でこらえた涙が

心にたった一滴

落ちた

 

心で溶かしてしまったから

忘れられそうにない

何処かをめがけるように落ちた

一滴だったから

なおさら

消え入りそうな弱さで

降り積もる

 

見惚れるような儚さで

降り積もる

 

いつの間にか

夜は雪で埋め尽くされている

 

僕の拙い言葉も

明日には雪で埋め尽くされるだろう

 

カーテンを閉じる

今日思うことはもう何もない

闇が最も深まった頃

僕は拝殿の前に立ち

一人心でつぶやいた

 

闇が少し緩んだ頃

寒さは厳しさを増し

無事越えられそうだった夜の

境目をくっきりさせる

 

高台の上に視線を置いて

振る舞われた甘酒を口にして

人々はときおり空を見る

 

今までの一年と

新しい一年を

つなげる願いを

まだ見えかけの太陽に捧ぐ

シャツやセーターやパンツや靴下が

重なって拒んでも

忍び込む寒さ

 

息を吹きかけて

凍てついた指を束の間溶かしてを

繰り返すこと三十分

 

震える体のせいで

声も言葉の中身も

どこか定まらないまま

 

二人でぶつぶつ呟き合いながら

春を待つかのように

もう一人の到着を待つ

くくらないで

僕を

他の誰かと同じ区分に

たやすく蔑みやすい種類に

 

まとめないで

僕を

あなたの使いやすい形に

メディアで伝えやすい尺に

 

複雑すぎて置き換えきかない

単純すぎて屁にもならない

そんな僕を言葉にしないで