たちこめる暗雲

過ぎていく夏休み

にわか雨


若気の至り

たまる用事

上手く使えない時間


暑いと思って

用意したそうめんを

涼風の中ですする


唸るばかりで

落ちない雷

暮れてゆく空と夏

蝉の抜け殻が

壁にへばりついている

その本体は

地面に落ちてる


蝉は死を隠さない

生きることに

夢中だったから


太陽は激しく

世界を焦がす

蝉の命が

僕の瞳に焼きつく


並木道の下

昨日あった死骸は

一体どこに行ったのだろう

そのままで

温かい命


そのままで

寂しい命


そのままじゃ

いられない

それも僕のそのまま


そのままを

抱いて生きる

それだけで

かけがえない

言いたいことを

言い切れないまま

付けてしまった「。」


出かかった言葉が

急ブレーキがかかって

その時の「、」


言葉もなく

現れる

喉元に付いた句読点

ラッシュの混雑から

ゆるやかな街並みへ

高校生の自転車が並ぶ

小さな駅を出る


馴染みだったうどん屋を

通り過ぎて行く

出くわした近所のおばさんと

少し話をする


田舎というイメージほど

緑豊かではなく

純朴さもないのに

懐かしい団地


久しぶりに言う「ただいま」

荷物を降ろすと

一気に軽くなる気持ち

白髪以外はあのままの両親


昔の好物を平らげて

昔の友達に電話して

近況と思い出話で夜は更ける


物置にされていたのか

古い電化製品が置かれている

かつての自分の部屋で寝る

手紙は語りかける

読む人がいれば

何度でも


手紙は語りかける

書いた本人が

けろりと忘れた頃でも


あの手紙は今日も

告白している

机の引き出しの中で


あの手紙は今日も

告白している

読んだ人の心の中で

犬は目で訴える

連れてって


犬は目で訴える

メシおくれ


犬はしっぽで笑う

ごきげんさ


犬はしっぽで怒る

近寄るな


犬は鼻で嗅ぐ

なんだろう


犬はあごをつけて寝る

タイクツだ


犬は吠える

伝えきれない強い気持ちを


犬の喜びも悲しみも

人はただ愛らしくて笑う


人にとっての言葉は

犬にとっての体


生きることのきらめきを

犬は全身で振りまく

ご飯を炊くのも

面倒な時は面倒で

一人でだって

外食に行く


自分にごほうび

あげすぎかな

ちょっと片付いた仕事に

アルコールの大盤振る舞い


油断してると

舞い込んでくる

ご祝儀

光熱費


財布を覗いて

結構減ったお金に驚いて

無理やり辻褄合わせてく

月末までの

長き道のり

親友と一緒にいる自分を

あまり親しくない人に見られて

何故だか恥ずかしくなったこと


知られたくない人

知らせたい人

いつの間にか使い分けてる心


気持ちを見せたい気持ち

気持ちを隠したい気持ち

どれが本当の僕かなんて問いは

もうやめだ


冗談が好きな僕

物静かな僕

間抜けな僕

どの僕も欠かせない

あなたがくれた僕

4年前の自分を

思い浮かべてみる

4年間自分が経験したことを

思い浮かべてみる

いろんなことがあった

誰もがそれだけの時間を生きて来た

それぞれに違ういろんなことがあった


4年に笑った人がいる

4年に泣いた人もいる

それが全てじゃなく

けれど軽くもなく

その4年が幕を閉じても

また人は生きていく

新しい1年へ

それとも続きの5年目へ


彼らにとっての4年は

僕にとっての何だろう

僕らにとっては

待ち焦がれていた4年じゃないのに

いつも手放すのが惜しくなるんだ