ピエロはおどけている

指の先端まで

あまりに完璧すぎて

もらった笑顔を受け取り損ねる


照れるそぶりもない

言い訳もない

ピエロには表面しかない

だからこそ底が知れない


もじもじしている子どもに

ピエロが風船を差し出す

吐息の乱れもない

記号のような笑顔で

客の来ない玄関でも

落ちている砂を掃こう

吹き跡も残らないくらいに

窓を拭こう


ぴかぴかに磨こう

シンクの三角コーナーまでも

陽の下で膨らまそう

しょんぼりとしたお布団を


今日をさっぱり掃除して

明日が帰ってくるのを待とう

見違えたような部屋で目を覚ます

明日を喜ばせてやろう

ケンカした時の

お互いの顔がおかしくて笑う

会話の途中で

ふっとできた間に笑う


待ち合わせしてから離れるまで

ずっとふざけあっていた二人

将来の話なんて

今が続いていればよかった


笑顔で泣いてる僕を

面白がって君が笑う

それが別れの日のハイライト


曖昧でよかった

そうじゃなきゃもたなかった

君ともう少し

ふざけていたかった

濡れた窓が

乾くまでは

この感情も消えそうにない


朝も昼もない

あるのは雲

しおれそうな花


蝉の声も

風鈴の音も

降りしきる雨にかき消されて


唸り声を上げる

マンホールの中で

夏が終わる

新種じゃないよ

あの虫は

まだ地球が凍えていた頃から

ずっとここに住んでいたんだ


進化じゃないよ

僕たちは

生まれて育ったこの姿が

たまたま居心地良かったんだ


新作じゃないよ

この詩は

拾って組み替えた言葉の並びが

なんだか自分にしっくりきたんだ

欠落した状態で

夜に照らし出されてしまった半分

闇をいいことに

見せたくない姿を消してしまったもう半分


満月の時よりも

自分に似ている

半月がそこにある

満ちているようにさえ見える


満月の時

姿を見せるもう半分は

きっと何かを隠しているような気がする

その眩しさで

測ってもないのに

どうして分かるの?

この部屋に満ちている

空気の重さとか


単位もないのに

どうして分かるの?

それが可笑しいことだって

にやにやしながら


僕は何を測り間違えて

一人はぐれているの?

測りなおそうとしてみるけど

基準も分からないよ


みんなに合わせて

それっぽい表情作って

出し損ねてきた感情は

何とイコールできるの?

気づかれたくて

傷つけるのを止めて

束の間の同情のために


病んでしまうまで

戦い続けるのを止めて

知らない他人の評価のために


死なないで

それがどんな言葉より

一番伝わりやすい方法でも


見えないものを

見せるために

あなたの体を証拠にしないで


自分を痛めないで

痛みに逃げないで

あなたの本気を見せて

遅れまいと並んだ

行列の先には

何があるかも分からずに


野次馬になって取り囲む

騒ぎの中心に

何があるかも分からずに


噂話をいくら重ねても

空想をいくら補強し合っても

何も見えてきやしない


そんな勘繰りを詰まらせた耳じゃ

聞きたい言葉しか

聞こえはしない

向こう岸に不時着して

二度と戻らない

紙飛行機をいくつ飛ばしただろう


プロペラを持たない希望だから

そこにある風を

余すことなくつかみたい


僕が描けるくらいの

軌道じゃ困るんだ

もっと もっと 遠くのほうへ


僕に見えるくらいの

夢じゃ物足りない

星よりも 小さい 高さで飛べ


言葉の逆風を抜けて

想像の凪を越えて

予測付かない未来へ届け