誰もいない街の
声を聞く
僕がはじめて知ったとき
すでにいなくなってしまった人の
声を聞く
立ち入れないあの地に
近づける言葉を捜す
口はつぐんだまま
混沌から醒め
訪れた静けさと
日常のざわめきを聞く
誰もいない街の
声を聞く
僕がはじめて知ったとき
すでにいなくなってしまった人の
声を聞く
立ち入れないあの地に
近づける言葉を捜す
口はつぐんだまま
混沌から醒め
訪れた静けさと
日常のざわめきを聞く
目覚めた朝に
太陽があったから
瞳の中で一日は始まる
疲れた夜に
暗闇があったから
瞼の内で一日は終わる
どんな自覚よりも
どんな鋭さよりも
光と闇が
僕に今を馴染ませる
光よ闇よ
染め上げた空から
余すことなくこの時間を
僕にちょうだい
自分で閉じた窓にさえ
塞がれてしまう心
自分で閉じたカーテンの
その向こうに怯えている
自分で閉じたドアの
意外に大きな音に驚いて
自分で閉じた口から
声に満たない妙な音が出る
そんな不穏の後始末を
自分で閉じたまぶたに託す
見つからない言葉には
見つけにくくさせてる弱みがあり
曇らせながら
ぎこちない会話を交わす
一人でいた時間の長さが
みんなといるときの自分を
ふと独りにさせる
叫びのような夕焼けが
瞳に焼きついたままで
今日の夜は長くなりそう
誰もいないあそこにも
かつて誰かがいたから
一人が通り過ぎれば
そこからパレードの音が響き出す
堀を泳ぐカルガモ
それを追いかける子ガモたちが
描くパレード
塀の上を走る猫
それを追いかける残像が
導かれるパレード
眼で捉えた一つ一つが
心の中でつながって
僕の中で長いパレードを作る
心の結ぶところ
行列が生まれ
憧れの眼差しの先で
パレードは続いてゆく
言葉一つ
届いた手応えもなく
吐き出した声は
ため息かのように消えた
気だるい熱気に満ちた
分厚い夜に
どんな叫びなら
響いてくれる
向ける相手もないままに
何かに焦がれてくこの心は
自分で自分の息を
詰まらせていくばかり
傘差して雨に潜った
行きがけの道
どしゃ降りの舗装路を行くと
靴の中までが水溜りになる
もやのかかったビルや花が
漂うかのように佇んでいる
自分の存在を抜きにすれば
濡れた街も悪くない
溢れそうな泥の川に
見とれる橋の上
だけど今年の雨は
少しばかり長すぎる
雨は降っているけど
黙っているみたいだ
差されたはずの水を
実は欲しがっていた自分だ
濡れそぼった傘は
力なく靴箱に寄りかかる
本は口を開いたまま
続きを読まれる宛てもない
絡まった希望と欲望と現状が
雨よりも前に僕に立ちふさがる