誰もいない街の

声を聞く


僕がはじめて知ったとき

すでにいなくなってしまった人の

声を聞く


立ち入れないあの地に

近づける言葉を捜す

口はつぐんだまま


混沌から醒め

訪れた静けさと

日常のざわめきを聞く

神々の沈黙に

人は耐えられず


神々の本心を

盗み聞かずにはいられない


自ら出した言葉では

物足りず


神々の仕草から

何か補わずにはいられない

目覚めた朝に

太陽があったから

瞳の中で一日は始まる


疲れた夜に

暗闇があったから

瞼の内で一日は終わる


どんな自覚よりも

どんな鋭さよりも

光と闇が

僕に今を馴染ませる


光よ闇よ

染め上げた空から

余すことなくこの時間を

僕にちょうだい

露わにするためでなく

表現するためでなく


誰よりも自分が

驚かされたい


心を応用して

偶然に寄り添って


1行目から

導き出される2行目に


書くことではじめて

始まる自分に

自分で閉じた窓にさえ

塞がれてしまう心


自分で閉じたカーテンの

その向こうに怯えている


自分で閉じたドアの

意外に大きな音に驚いて


自分で閉じた口から

声に満たない妙な音が出る


そんな不穏の後始末を

自分で閉じたまぶたに託す

見つからない言葉には

見つけにくくさせてる弱みがあり

曇らせながら

ぎこちない会話を交わす


一人でいた時間の長さが

みんなといるときの自分を

ふと独りにさせる


叫びのような夕焼けが

瞳に焼きついたままで

今日の夜は長くなりそう

誰もいないあそこにも

かつて誰かがいたから

一人が通り過ぎれば

そこからパレードの音が響き出す


堀を泳ぐカルガモ

それを追いかける子ガモたちが

描くパレード


塀の上を走る猫

それを追いかける残像が

導かれるパレード


眼で捉えた一つ一つが

心の中でつながって

僕の中で長いパレードを作る


心の結ぶところ

行列が生まれ

憧れの眼差しの先で

パレードは続いてゆく

言葉一つ

届いた手応えもなく

吐き出した声は

ため息かのように消えた


気だるい熱気に満ちた

分厚い夜に

どんな叫びなら

響いてくれる


向ける相手もないままに

何かに焦がれてくこの心は

自分で自分の息を

詰まらせていくばかり

傘差して雨に潜った

行きがけの道


どしゃ降りの舗装路を行くと

靴の中までが水溜りになる


もやのかかったビルや花が

漂うかのように佇んでいる


自分の存在を抜きにすれば

濡れた街も悪くない


溢れそうな泥の川に

見とれる橋の上


だけど今年の雨は

少しばかり長すぎる

雨は降っているけど

黙っているみたいだ


差されたはずの水を

実は欲しがっていた自分だ


濡れそぼった傘は

力なく靴箱に寄りかかる


本は口を開いたまま

続きを読まれる宛てもない


絡まった希望と欲望と現状が

雨よりも前に僕に立ちふさがる