
アメリカ次世代主力戦車「エイブラムスX(AbramsX)」登場
10月10日(アメリカ時間)から12日までの間にワシントンDCで開催される「AUSA 2022」において、次世代主力戦車「エイブラムスX(AbramsX)」が公開される。
公開に先立って、GDLS(ジェネラルダイナミクスランドシステム)からエイブラムスX技術実証車(AbramsX Technology Demonstrator)の動画が公開された。
以前から3D画像で一部公開されていたものが実車による動画初公開だ。
ただ、このエイブラムスXはデモンストレーターというショーモデルにすぎず、この戦車が次期エイブラムス(M1A3?)の姿ではない。
一応、公式情報では以下の特徴を上げている。
① 軽量化による機動性、輸送性の向上
② 撃破能力が向上した無人砲塔
③ ハイブリッド機関による低燃費と静粛性
④ AI(人工知能)によるMUM-T(有人-無人チーミング)
AbramsXの3D画像(上記掲載最図をトリミングし画像補正)
AbramsXの実車(Technology Demonstrator)
【① 軽量化による機動性、輸送性の向上】
特に大きな軽量化は砲塔だ。
試験時の砲塔:youtube映像
無人化する事により扁平になったため最も重い砲塔前面装甲容積が4分の1程度になっている。また、側面もモジュール装甲化により標準状態では現行戦車に比べ直接防御性能は劣るが少なく見積もっても10t程度の軽量化はなされているだろう。
【② 撃破能力が向上した無人砲塔】
主砲は120mm滑腔砲のままであり、FCS(将来戦闘システム)用に開発されたXM360を搭載する。
自動装填装置は後方から給弾できるようであるが、大きさから格納弾数は20発前後であろう。
他の武装として砲塔上にRWS(リモートウェポンシステム)が搭載される。
実証車は30mm機関砲のみだが3D画像では7.62mm機関銃との双連となっている。なお、このプロテクターRWSにはオプションとして40mm擲弾銃やジャベリン対戦車ミサイルなどを取付けることが出来る。
ビデオの実証車ではトロフィーAPSやレーザ検知器、発射発煙機などは未装着となっているが、展示の際には搭載するのだろうか?
【③ ハイブリッド機関による低燃費と静粛性】
機関(エンジン)にはディーゼルと電気モータのハイブリッド機関(hybrid diesel-electric propulsion system)が採用され、燃費はM1A2の半分になるという。
ハイブリッド機関はカミンズ社(cummins Ink.)の対向ピストンディーゼルエンジンのACE(Advanced Combat Engine:将来戦闘車両機関)を採用していると見積もられる。
静粛性を謳っているので機関自体は発電用で電気駆動を採用しているのだろう。このため、使用機関は3気筒750馬力エンジンの可能性もある。画像は1000馬力の4気筒(通常機関の8気筒2サイクル)ACE
【④ AI(人工知能)によるMUM-T(有人-無人チーミング)】
ドローン等の無人機との連携をとる事により最前線のノード(集結点、基準部)として戦車を利用しようとする近年の方法である。我が国の10式戦車もこの機能を有するとされ、ロシアのT-14戦車もこの機能を持っており、今回のウクライナ戦争にノードとして投入されたという情報もある。
戦車の役割として、最前線における装甲指揮所としての機能が追加されたといえる。
ちなみに技術実証車の側面ギザ模様カッコ良い
御覧の様に、下部はゴムであり、サイドアーマースカート部分は黒色塗装をしている。わざわざゴム部をギザギザにしているのは軽量化などの戦術的理由ではなくデザインが格好いいからであり、ショーモデルとしての見栄え重視である。
それよりも履帯の形状から10式戦車の様な履帯噛みこみ式の起動輪を採用しているようだ。
ここら辺は展示車両の情報が出て来るだろうから細部の仕様がどうなっているのか楽しみである。
ティーガーフィーベル(TigerFibel)に見るボアサイト(直接照準具の規正)
8月8日は何の日?
ハチハチもしくはアハトアハト
というこでお察しの通り
乃木坂46の最新シングル
『好きというのはロックだぜ!』
で、2度目のセンターを務める
8を愛し、8に愛された女
賀喜遥香(かきはるか)の誕生日だ。
21歳おめでとう!
同期の北川悠理(きたがわゆり)も21歳おめでとう!
表題と違う内容だな。
ハチハチ、アハトアハトと言えば
ティーガー戦車だ。
ティーガー戦車といえば、本日はティーガーエースとして有名なミハエル・ヴィットマン(Michael Wittmann)の命日でもある。(1944年8月8日戦死)
南無。
さて本題に入ろう。
超有名なティーガー戦車の指南書
ティーガーフィーベル(TigerFibel)である。
日本語翻訳版としては
学研より出版されている『[図説]ティーガー重戦車パーフェクトバイブル』に付録として付いている。
ところが、読む(読み込む)と「何を言いたいのか分からない」というのが正直な感想だ。
そこで、その昔、戦車砲教官をしていた知見からボアサイト(直接照準具の規正)が記された79ぺージの翻訳を試みた。
規 正
提 言
針の穴を通す様な精密・正確な照準をしても、命中しない事がある。
行軍中は常に大砲は固定されているはずだ。
ところが、走っている振動でズレる場合がある。
しかし、自分で調整し規正できれば問題ない!
まずは大砲:糸とそれを固定するテープやグリスが必要だ。
1. 砲口に印された位置に合わせ糸を十文字に張る。
2. 閉鎖機から撃発体を取り外す。
3. 撃針の穴から砲身を覗いて遠くの目標を狙う。
次に右照準望遠鏡:光学系用の調整レンチが必要だ。
1.視力調整をする。
2.砲の照準距離を0mに設定する。
3. 調整キーの保護カバーを外す。
4. 横方向に照準点(大三角形頂部)を目標に合わせる。
5. 縦方向に照準点(大三角形頂部)を目標に合わせる。
次に左照準望遠鏡:
1. 右照準望遠鏡に砲の射距離、1000mを設定する。
2. 右照準望遠鏡で目標を照準する。
3. 左照準望遠鏡に切り替える。
4. 視力調整をする。
5. 眼鏡間隔を調整し右照準望遠鏡に視界を一致させる。
6. 横方向に補助レチクル基点を目標に合わせる。
7. 縦方向に補助レチクル基点を目標に合わせる。
戦闘照準は1000メートルの射距離に設定されている。この場合、0から1000mの間の任意の2mの高さの目標に命中させる事が出来る。 1000 mを超える場合、三角形頂部を目標に合わせるか、三角形で目標を囲め。
最後は同軸機関銃: これには、穴あき薬莢が必要だ。
装填手のハルセンザックは常に持ち歩いている。
1. 尾底を外し、遊底を取り出したら薬莢を薬室に入れる。
2. 照準具の機関銃射距離を200~300mに合わせる。
3. 右照準望遠鏡の照準点で目標を狙う。
4. 穴あき薬莢から銃腔を通して、機関銃を目標に向ける。
5. 実弾射撃により確認する(零点規正)。
車体機関銃:実弾射撃により確認する(零点規正)。
教 訓
頻繁な砲の規正で射撃任務が達成できる。
以上である。
砲口に張る十字糸の状態
規正目標を見つけたら砲の規正(砲腔軸の検出)を行う
これが本来のBore(砲腔)Sighting(照準)
ボアサイトの意味である
当初、原本によるドイツ語翻訳を試みたが、照準望遠鏡の調整準備で「Hierzu brauchst Du einen Vierkant für Optik.」という文言があり、グーグルさんに尋ねたところ「このためには、光学用の正方形が必要です。」との回答を得た。
すると、英訳版を発見した。熱帯雨林で300円だった(キンドル版だけど)
そこには「you will need a square head wrench for the optics.」グーグルさんによると「光学系用のスクエアヘッドレンチ(四角レンチ)が必要です。」という回答だ。
そこで照準具の画像等での確認を試みたが、確認できずに手詰っているとロシアのサイトにパンター戦車のロシア語マニュアル(戦時中に作成されたもの)を発見、そこにはこう書かれていた(グーグルさんの回答)
“中央の三角形の頂点が照準点と一致するまでキーを回転させます。位置合わせは、サイトの対物部分の上部にあるソケットに挿入された四角いキーで行われ、横にスライドするカバーで覆われています。”
ビンゴ!!
「四角いキー」
→その四角いキーを回すための工具→四角レンチ
「横にスライドするカバー」
→上記の四角いキーの保護カバー
謎は解けた。
そういや「《翻訳版》パンターフィーベル」もあったな。
と見てみたら
こちらには「調整用の四角ボルト」と記載されていた。
微妙。
なお、今回の翻訳は「フィーベル」ということで専門用語というか、硬い言葉を極力使用しないように配慮した(つもり)だ
ただ、同軸機関銃の規正には疑問が残る。
200~300mで規正をした場合、横方向は運用距離でのパララックス(視誤差)は最小になる利点があるが
高角を付けて規正しているから弾着は必ず下に出てしまう。
まあ、最後は実射による規正、つまり、零点規正(ぜろてんきせい)をするから良いという考え方なのだろうか?
なんかまとまらない。
昨夜、最終稿をうっかり消してしまったのが原因だがな。
映画「フューリー”FURY”」の脚本を翻訳する
映画「フューリー”FURY”」の脚本を翻訳する
などと大見えを切ってみたが、実は翻訳された方がいる。
「ボツ脚本・準備稿」と記されているように実際の映画の脚本とは異なる。
ちなみにIMSDbでは見られないようなので探してみた。
たぶんこれが同じ脚本だと思われる。
https://www.dailyscript.com/scripts/Fury.pdf
さて、訳者も 『戦争映画もいろいろですがこの脚本はかなりマニアックというか、ミリタリー系の専門用語が頻発して読むのに非常に苦労しました。』 と述べているように、各所に?と思える訳がある事は事実だが、非常によく訳されていると思う。 昨今、海外の情報が手軽に入る様になった上に翻訳も無料で手軽に行える好環境だが、専門的用語はやはり、専門知識がないと矛盾が生じてしまう。
とはいえ、翻訳が大変なのは事実である。
一例を示してみる。
映画冒頭、故障で戦場に取り残されたフューリー号が故障排除後発進するシーンである。 ネット上の無料翻訳による翻訳3種 翻訳結果をコピペ
① グーグル翻訳
ウォーダディー 出て行け!
② エキサイト翻訳
ワーダディ
③ AI自動翻訳「みらい翻訳」 /お試し翻訳
ワルダディー 出て行け!
■ 全翻訳された方の翻訳
ゴルドはギアを一度ニュートラルに入れ、それからファーストに入れてクラッチをつなぐ。戦車が急に動き出す。バイブルは照準器に目を押し当てる…
ウォーダディはペリスコープから外を見ながら、手元のサム・スイッチで砲塔を回転させる。
ゴルドーの後ろで円筒形の砲塔バスケットが回転する。その内側にはウォーダディの足と、立っているバイブルとクーンアスが見える。印象的な眺めだ…
■ 私の翻訳はこうだ! ウォーダディ 前へ! ゴルドはクラッチを踏んでギヤを2速に入れる。ガ、ガクンと戦車が揺れる。バイブルは砲照準具に目を当て覗き込む・・・ ウォーダディは潜望鏡を通して外を監視しながら油圧旋回レバーで砲塔を旋回させる。 ゴルドの後ろで砲塔バスケットが回り、その内側には、ウォーダディ、バイブルそして立っているクーン・アスの脚が見える。印象的な眺めだ・・・
【翻訳の解説】 ● Wardaddy ウォーダディ:ブラッドピッド演じるドン・コリア軍曹の愛称 車長(戦車長/戦車指揮官)である、 ● Gordo ゴルド:操縦手の愛称 ● Bible バイブル:砲手の愛称 ● Coon-Ass クーン・アス:装填手の愛称
● Move out! 一般的には「発進」「進め」とか「移動」と訳される。 軍事または自衛隊用語的には「前へ(まええ)」である。
● double-clutches and shifts into first. ダブルクラッチはクラッチの操作法であり、変速をスムーズに行えるようにクラッチを2度踏む動作である。ただし、ダブルクラッチは走行間の変速要領であり、発進時のダブルクラッチは無意味だ。 また、1速に変速ギアを入れる(shifts into first)と記述してあるが、シャーマン戦車は2速(セカンド)発進であり、1速は泥濘地等での緊急脱出時等に使用する(エマージェンシーロー)である。このため間違えて変速できない様にバック(リバース)と同様にロックがかかっている。 よって、クラッチ踏むのは1回、変速ギアは2速に入れるのが正しい操作となる。
● The tank lurches. lurcheは「(船・車などが)急に傾くこと」という意味があり、lurchesという複数形なので「ガ、ガクン」と意訳した。 「ガクガク」だとずっと揺れているようだから「ガ、ガクン」としてみた。これはギアを入れる時に戦車が揺れる現象(シフトショック)であり、一般的には「ガガガ(ギヤ鳴り)・・ゴン!」という感じである。シフトショックは自家用車でも体感できる場合がある。 ちなみに、変速機内のギヤが完全停止した状態でギヤを入れる事に成功した場合はショックはない。しかし、ギヤが入らない事もあり、その際はクラッチを踏みなおす必要がある。マニュアル車を運転したことがある方は発進時にギアが入らないという経験をした方も多いだろう。
● presses his eye to the gunsight ガンサイトに目を押し付けるという描写である。 砲手であるバイブルが照準具を覗くという行為は戦闘が開始されることを暗示している(実際には戦闘はなかったが) ガンは砲(戦車砲)、サイトは照準具だ。 なお、照準具という表記は一般的ではないが防衛省規格「火器用語(射撃統制)」による専門用語になる。
● THUMBSWITCH 直訳すると「親指スイッチ」である。 シャーマン戦車には親指スイッチ操作で砲塔旋回ができる装置は付いていない。後期のシャーマン戦車には油圧動力旋回を車長が制御出来るハンドル(レバー)が設置されている。このレバーには不用意に砲塔が動くことを防ぐためのロックボタンが付いており砲塔旋回時にはこのボタンを親指で押してロックを解除しレバーを動かす。たぶん、これのことを指しているのだろう。
訳者は「サムスイッチ」と訳されている。エキサイト翻訳でも同訳だが、そもそも「サムスイッチ」が何なのかが不明だ。
たったこれだけの翻訳でも戦車マニュアルから英語の意味まで調べなくては疑問だらけになってしまう。
ついつい「そんな翻訳じゃないだろう!」と思ってしまう事が多々あるのだが、実に難しい。 脚本家のデビッド・エア(David Ayer)自身が誤った記述をしているので翻訳が間違っても仕方がないだろう。というか、翻訳は間違っていないな。また、事実を知らないと意訳も出来ないので専門知識が必須となってしまう。
このボツ脚本と映画の違いは脚本に描かれたものが事実と相違しているという事を元戦車兵などから助言を受けたのだろう。例えば脚本ではティーガー2両と戦うが、さすがに無理であり1両である。もっとも実働ティーガーが1両しかないから1両になった可能性もある。また、脚本では超信地旋回で遅い砲塔旋回を補う描写もあるが、映画では実車保護のために行わなかったと考えられる。 他には暗闇の中でSS大隊を確認できるとか、当時装備されていないキャニスター弾を撃つという事は映画では是正されている。 ただし、映画では謎だったウォーダディの背中の傷については経緯が描かれており、この映画はウォーダディを含むフューリー号乗員の贖罪(キリストが十字架上の死によって、全人類を神に対する罪の状態からあがなった行為)であり、最後の十字路でのシーンはそれを物語っていると言えよう。 |