ST-A2 61戦車試作2号車(第1次試作)
霞ヶ浦駐屯地に展示されていた61式戦車の第1次試作車のST-A2だ。
撮影日は2000年12月13日となっている
履帯がダブルピンからシングルピン式へ履き替えた"ST-A2B"と呼ばれるものであろう
下部転輪は記録写真にはないリブが付いた鋼製軽量転輪のようだが、材質は今となっては知る由もない。
履帯はダブルピンダブルブロックのウェットタイプ
砲塔前部の測遠機は取り付けられていない。
ST-A2B
転輪はA2A、A2Bともに形状から判断するとアルミ製と推定する。
履帯は展示車両と同じシングルピンだが、ドライかウェットかは判断できない。
マズルブレーキ(砲口制退器)が量産型の「Z型」とは異なる形状である。
変な形の防楯は薄い鉄板で作られた「なんちゃって防楯」であるが、なぜ正規の防楯が付いて無かったのかは不明だ。
機関室上甲板(エンジンデッキ)回りは「五式中戦車のディーゼルエンジン搭載車はこうなっていたのではないか?」と思わせる様なデザインだ
砲搭内部
砲手用潜望鏡取付け穴からカメラを突っ込んで撮影
手前の板は“防危板”砲手、車長を砲の後座から守る
レバーは"閉鎖機開放レバー"
後方のラックは恐らく12.7mm重機関銃の弾薬箱用
右上方の円筒形のものは砲塔換気ブロア(モータ)
操縦手ハッチは前側方解放型でありM4A3E8シャーマンや90mm砲搭載要領の研究用として供与されたM36駆逐戦車のものと同様の方式である。
車体前面中央部の楕円形のものは車体銘板であるが、塗り潰されており表記の確認は不能だった。
そこで、車体に刻印された車体番号で確認だ
・・・なんかよくわからない・・・・
分かりやすいように画像処理してみた
“ST-A2-001”と確認
並んで展示されている74式戦車は第2次試作車のSTB-5だ。STB-5は現在も展示中だ(2019年時点では現存)
ST-A2であるが、ほぼ一年後の2002年3月に同地を訪れた際には既に量産型61式戦車に換わってしまっていた。
武器学校のあるお隣の土浦駐屯地に展示してあった74式戦車試作車のSTB-3とともに溶鉱炉行きになったのであろう。
非常に残念である。
古(いにしえ)の戦車小隊
昔の写真で戦車の乗員編成をちょっと紹介する
小隊検閲時の記念写真だ。
1981年初夏と記憶している。私は演習後、初級機甲整備教育のため機甲教育隊へと旅立った・・・。
最前列向かって左から
小隊長、小隊陸曹、第2車車長、操縦手(3)
二列目向かって左から
砲手(1)、砲手(3)、砲手(2)、操縦手(1)
最後列向かって左から
操縦手(2)、装填手(1)、装填手(3)、装填手(2)
各乗員の()は(1)が第1車である小隊長車乗員、(2)が第2車乗員、(3)小隊陸曹車である第3車の乗員だ。編制上は4両で1個戦車小隊なのだが、当時は乗員の定数割れが常態だったので1両欠の3両編成となっている。
定位に並んだ小隊長車の戦車乗員
向かって左から
車長(小隊長)、砲手、操縦手、装填手
階級は3尉、3曹、士長、1士であり、個人装備火器は車長が11.4mm拳銃(M1911コルトガバメント)、砲手、操縦手が11.4mm短機関銃(M3A1グリースガン)、装填手が64式小銃だ。
当時、我が戦車中隊は3個小隊編制であり、第1小隊長には防大卒の若い新任幹部が配置され、第2小隊長が部内幹候や3尉候などの古手(年寄り)の幹部、第3小隊長には准尉もしくは上級陸曹(当時は曹長の階級が無かった)が配置されていたが、第3小隊はほぼ編成できない状態だった。
私が中隊配属当時は第3小隊がM41戦車の編成であり、当初は第3小隊の装填手として配置された。最初の任務が徹甲弾(実弾)の装填だった。
61式戦車で教育を受けたのにM41戦車の乗員に配置されたのは「タバコを吸わないから」という理由だったようだ。
ガソリン車だからな。
10数年後、小隊長は第1戦車大隊の大隊幕僚になっていた
写真は1991年10月(日にちは忘れた)中央パレード(中央観閲式)において大隊幕僚車の車長を務める元小隊長
ちなみに、この90式戦車は三菱重工相模原工場から朝霞訓練場へ直納された3両の初回納入車の1両であり、重工の御厚意でパレード用塗装になっている(迷彩の境目がスプレー吹きっぱなしのボカシではなくクッキリと分けた塗装がなされている)
納入部隊は戦車教導隊だが、観閲戦車部隊指揮官は第1戦車大隊長なので大隊長車及び幕僚車の3両の操縦手は戦車教導隊員だ。
エイブラムスの乗員諸君!90式戦車を紹介しよう。
当時、中隊で広報担当だった私は米陸軍のM1戦車乗員が見学に来るので説明せよと命ぜられた。
写真は、堪能な英語力で米戦車兵に説明をする私だ。
噓をつきましたm(__)m
米兵の視線でお分かりのように
排煙器の陰に隠れてしまっているのが通訳の隊員だ。
主砲弾は徹甲弾と対戦車榴弾の2弾種だとの説明に
「ナゼ発煙弾ガ無イノダ?地点指示ガデキナイト航空支援ヲ要請デキマセン。ドウスルノカ?」
1人の米戦車兵が質問してきた。
「M1A1も同じ2弾種で発煙弾ないだろ」
と答えたかったのだが・・苦笑い(英語できないから)
どうやら話を聞くと(通訳が)105mm砲搭載のM1戦車とM60戦車の乗員だったようだ。
それよりも
『そうか・・発煙弾で航空支援要請か・・・』と
軽いカルチャーショックを感じざるを得なかった
“我々には航空支援はない物”
という固定観念があるからな。
ちなみに、発煙弾(黄燐発煙弾:M313 WP)は61式戦車が装備しており、発煙と焼夷効果から、もっぱら対戦車ミサイル陣地制圧用に使用していた。